工藤さん家の娘さんは目が見えない
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お兄さん会えなくなってからはや数週間。
連絡が取れなくなるのは何となく予想が着いていたが、まさか送り先が無くなるとは思わなかった。アドレスを変えたのかそもそもが壊れたのかは分からないが受信不可の文章は溜まっていく一方だ。
待っているとは言ったも安否すら分からないで待つのは辛い。病は気からというように、そんな風に毎日気落ちして引きこもっていたせいか体調を崩してしまった。 熱はないが喉の違和感が酷く病院に行くことにした私は、最初1人で行く予定だったが新ちゃんが付き添いをしてくれると申し出てくれたため有難く好意を受け取った。
保険証や財布など必要な物を鞄にまとめ新ちゃんの腕に捕まりながらバス停へと向かう。震えるほどではないが少し寒い。段々と冬に向かっているようだ。
「ステップ上がるぜ。」
「うん。」
足を上げ段差を進む。1人の時やムクを連れてる時は優先席に座るのだが、今日は新ちゃんが一緒なので手を引かれるまま後ろの方に座った。
「ごめんね新ちゃん。休日なのに。」
「部活もなかったし暇だったから構わねぇよ。」
幼稚園から続けていたサッカーを中学でもやっている新ちゃんは今や部内のエースだ。背も段々と伸びていて今ではもう私を追い越した。はやいなぁ。あんなに小さかったのに。しっかりと成長していっている事への喜びと少しの寂しさで胸が温かくなった。いつか姉ちゃんと外で手を繋ぎたくないなんて言われたらどうしようか。何だかちょっと嬉しい。反抗期の新ちゃんを勝手に想像していたら顔がニヤけていたのか、新ちゃんから変な顔と言われてしまった。
◇
「ありがとうございました。」
軽く頭を下げ診察室を出る。検査の結果特に問題はなく薬を飲んで2、3日安静にしていれば治るだろうとのことだった。良かったと胸を撫で下ろし廊下で待ってくれている新ちゃんへと声をかけた。
「お待たせ。精神面もあるけど免疫も低くなってたみたい。とりあえずお薬出してくれるって。」
「おー…。」
「どうかした?」
心ここに在らずといった感じの返事に首を傾げる。何でもない、と返ってきたのでそれ以上聞くことはなく補助をしてもらいながら私たちは歩き出した。途中迷惑にならない程度の会話を重ねながら薬品の匂いやカチャカチャと金属のぶつかる音を聞きながら廊下を進んでいると、ふと、騒音に混じり不可思議な音を耳が拾った。
「なんかあった?」
「ちょっとね…」
時計に似ているが、少し違う。さっきの診察室の針の音からしてこの音の間隔はズレている。しかも合間にピッピツと鳴っているのは時計というよりタイマーを彷彿とさせた。
「新ちゃん、今から言う場所まで案内お願いできる?」
「わかった。」
音がする方向へと足を出す私がぶつからないよう、逸れないよう必要最低限の声かけのみをしてもらい動きだ出す。
「何か見つけたのかよ?」
「タイマーかな?なんか、変な音がするの。音の間隔的にデジタル時計じゃなさそうで…。忘れ物か落し物かなって。」
「タイマー…?」
訝しげな声を出した新ちゃんとの歩調が少し乱れた。気になることでもあったのだろうか。しかし声をかけるのもはばかれたのでそのまま歩き続け、あっという間に目的の物がある場所へと辿り着いた。距離とすれ違っていったものから、多分ナースステーションから近い待合室。病院が意図して置いた物なら別に気にする必要もないが、まぁ一応の確かめで。何もなければそれでいい。
「ここから聞こえたけど…。何かある?」
「ちょっと待って。俺の予想が正しければ…、」
予想?なんの事だろう…。疑問に思うも新ちゃんはもう私の手を離して行ってしまったので聞けない。まぁあの子が何か気づくのはいつもの事なので、きっと落し物の正体が分かっているのだろう。そう楽観視していると待合室の入口から丁度2時の方向、確か自販機が並んでいたかな、そこからジッパーを下ろす乾いた音が聞こえた。
「やっぱり…。」
「やっぱりって何?何があったの?」
「爆弾だ。」
「え”っ。」
思わず潰れたような声が出た。え、爆弾って。こんな、え、昼の日中に、そんなドラマみたいなことある?突然の事で困惑する私は、はたと弟がその危険物の間近にいることを思い出しすぐさま駆け寄る。
「新ちゃんおいで!危ないから!」
「姉さんこそ危ぶないからいきなり走るなよ!」
「ご、ごめん…。って、それより速くここから離れて警察に連絡しよう。タイマーの時間はまだ大丈夫だった?」
「まだ余裕はあるけど急いだ方がいい。」
良かった。まだ猶予はあるみたいだ。安堵で息を吐くと新ちゃんが私を呼ぶ。その声音にはあまり良い経験がない。まさか…。
「姉さんの知り合いに爆弾処理の人いたよな。」
「いるけど1回しか連絡取ったことないよ。」
「大丈夫。その人に繋いで。」
「…なんで?」
「はやく!」
嫌な予感とは当たるものだ。鬼気迫る声に仕方なくスマホのホームボタンを押す。こうなったら新ちゃんテコでも動かない程頑固だからなぁ。思わず漏れそうになったため息を飲み込み嫌々連絡先が入っているアプリをタップし、ハ行の所定の位置にある名前に連絡を入れた。1、2、3。コールが続く。
コール音が長く響く。次第に募る焦りが苛立ちのようにチクチクと肌を刺す。軽く握った掌は汗ばんでいて少し気持ち悪かった。
『ごめんかなえちゃん、今は「あの爆弾見つけました!」は?!なんで??!!』
忙しそうに駆ける足音と大人たちの大声が電話越しの彼、萩原さんの後ろから聞こえる。それに少しの申し訳なさを感じつつもこちらも急を要するため早口にまくし立てる。
「あの、詳しいことは私には分からないので、見える弟に代わります!」
『え?あ、ちょ!』
「初めまして。早速ですけど爆弾は俺が解体します。」
『は?!』
「え、ちょっと新ちゃん?!」
何を言い出すんだこの子は。慌ててスマホを取り戻そうとするが大丈夫だとでも言うように手を握られた。
「爆弾、ここだけじゃないですよね。」
『っ!』
「ネットニュースになってましたよ、観覧車の。犯人はきっとここに警察が来たと分かれば暴挙に出るかも。」
何がなんやら。見えない目を白黒させている間にどんどん話は進んでいき、何処からか持って来たと言うナイフを片手に本当に新ちゃんが爆弾を解体する運びとなってしまった。やる気満々なのが質が悪い。
「姉さん、ビデオ通話にするからカメラをこの位置で固定して。」
「もう好きにして…。」
私の手にスマホを握らせ新ちゃんはある一定の高さまで持ち上げると、私にそのまま固定するように言った。きっと爆弾がカメラからよく見える位置なのだろう。萩原さんの緊迫した指示を聞きながら、かくして新ちゃんの腕に病院の命運が握られたのだった。
連絡が取れなくなるのは何となく予想が着いていたが、まさか送り先が無くなるとは思わなかった。アドレスを変えたのかそもそもが壊れたのかは分からないが受信不可の文章は溜まっていく一方だ。
待っているとは言ったも安否すら分からないで待つのは辛い。病は気からというように、そんな風に毎日気落ちして引きこもっていたせいか体調を崩してしまった。 熱はないが喉の違和感が酷く病院に行くことにした私は、最初1人で行く予定だったが新ちゃんが付き添いをしてくれると申し出てくれたため有難く好意を受け取った。
保険証や財布など必要な物を鞄にまとめ新ちゃんの腕に捕まりながらバス停へと向かう。震えるほどではないが少し寒い。段々と冬に向かっているようだ。
「ステップ上がるぜ。」
「うん。」
足を上げ段差を進む。1人の時やムクを連れてる時は優先席に座るのだが、今日は新ちゃんが一緒なので手を引かれるまま後ろの方に座った。
「ごめんね新ちゃん。休日なのに。」
「部活もなかったし暇だったから構わねぇよ。」
幼稚園から続けていたサッカーを中学でもやっている新ちゃんは今や部内のエースだ。背も段々と伸びていて今ではもう私を追い越した。はやいなぁ。あんなに小さかったのに。しっかりと成長していっている事への喜びと少しの寂しさで胸が温かくなった。いつか姉ちゃんと外で手を繋ぎたくないなんて言われたらどうしようか。何だかちょっと嬉しい。反抗期の新ちゃんを勝手に想像していたら顔がニヤけていたのか、新ちゃんから変な顔と言われてしまった。
◇
「ありがとうございました。」
軽く頭を下げ診察室を出る。検査の結果特に問題はなく薬を飲んで2、3日安静にしていれば治るだろうとのことだった。良かったと胸を撫で下ろし廊下で待ってくれている新ちゃんへと声をかけた。
「お待たせ。精神面もあるけど免疫も低くなってたみたい。とりあえずお薬出してくれるって。」
「おー…。」
「どうかした?」
心ここに在らずといった感じの返事に首を傾げる。何でもない、と返ってきたのでそれ以上聞くことはなく補助をしてもらいながら私たちは歩き出した。途中迷惑にならない程度の会話を重ねながら薬品の匂いやカチャカチャと金属のぶつかる音を聞きながら廊下を進んでいると、ふと、騒音に混じり不可思議な音を耳が拾った。
「なんかあった?」
「ちょっとね…」
時計に似ているが、少し違う。さっきの診察室の針の音からしてこの音の間隔はズレている。しかも合間にピッピツと鳴っているのは時計というよりタイマーを彷彿とさせた。
「新ちゃん、今から言う場所まで案内お願いできる?」
「わかった。」
音がする方向へと足を出す私がぶつからないよう、逸れないよう必要最低限の声かけのみをしてもらい動きだ出す。
「何か見つけたのかよ?」
「タイマーかな?なんか、変な音がするの。音の間隔的にデジタル時計じゃなさそうで…。忘れ物か落し物かなって。」
「タイマー…?」
訝しげな声を出した新ちゃんとの歩調が少し乱れた。気になることでもあったのだろうか。しかし声をかけるのもはばかれたのでそのまま歩き続け、あっという間に目的の物がある場所へと辿り着いた。距離とすれ違っていったものから、多分ナースステーションから近い待合室。病院が意図して置いた物なら別に気にする必要もないが、まぁ一応の確かめで。何もなければそれでいい。
「ここから聞こえたけど…。何かある?」
「ちょっと待って。俺の予想が正しければ…、」
予想?なんの事だろう…。疑問に思うも新ちゃんはもう私の手を離して行ってしまったので聞けない。まぁあの子が何か気づくのはいつもの事なので、きっと落し物の正体が分かっているのだろう。そう楽観視していると待合室の入口から丁度2時の方向、確か自販機が並んでいたかな、そこからジッパーを下ろす乾いた音が聞こえた。
「やっぱり…。」
「やっぱりって何?何があったの?」
「爆弾だ。」
「え”っ。」
思わず潰れたような声が出た。え、爆弾って。こんな、え、昼の日中に、そんなドラマみたいなことある?突然の事で困惑する私は、はたと弟がその危険物の間近にいることを思い出しすぐさま駆け寄る。
「新ちゃんおいで!危ないから!」
「姉さんこそ危ぶないからいきなり走るなよ!」
「ご、ごめん…。って、それより速くここから離れて警察に連絡しよう。タイマーの時間はまだ大丈夫だった?」
「まだ余裕はあるけど急いだ方がいい。」
良かった。まだ猶予はあるみたいだ。安堵で息を吐くと新ちゃんが私を呼ぶ。その声音にはあまり良い経験がない。まさか…。
「姉さんの知り合いに爆弾処理の人いたよな。」
「いるけど1回しか連絡取ったことないよ。」
「大丈夫。その人に繋いで。」
「…なんで?」
「はやく!」
嫌な予感とは当たるものだ。鬼気迫る声に仕方なくスマホのホームボタンを押す。こうなったら新ちゃんテコでも動かない程頑固だからなぁ。思わず漏れそうになったため息を飲み込み嫌々連絡先が入っているアプリをタップし、ハ行の所定の位置にある名前に連絡を入れた。1、2、3。コールが続く。
コール音が長く響く。次第に募る焦りが苛立ちのようにチクチクと肌を刺す。軽く握った掌は汗ばんでいて少し気持ち悪かった。
『ごめんかなえちゃん、今は「あの爆弾見つけました!」は?!なんで??!!』
忙しそうに駆ける足音と大人たちの大声が電話越しの彼、萩原さんの後ろから聞こえる。それに少しの申し訳なさを感じつつもこちらも急を要するため早口にまくし立てる。
「あの、詳しいことは私には分からないので、見える弟に代わります!」
『え?あ、ちょ!』
「初めまして。早速ですけど爆弾は俺が解体します。」
『は?!』
「え、ちょっと新ちゃん?!」
何を言い出すんだこの子は。慌ててスマホを取り戻そうとするが大丈夫だとでも言うように手を握られた。
「爆弾、ここだけじゃないですよね。」
『っ!』
「ネットニュースになってましたよ、観覧車の。犯人はきっとここに警察が来たと分かれば暴挙に出るかも。」
何がなんやら。見えない目を白黒させている間にどんどん話は進んでいき、何処からか持って来たと言うナイフを片手に本当に新ちゃんが爆弾を解体する運びとなってしまった。やる気満々なのが質が悪い。
「姉さん、ビデオ通話にするからカメラをこの位置で固定して。」
「もう好きにして…。」
私の手にスマホを握らせ新ちゃんはある一定の高さまで持ち上げると、私にそのまま固定するように言った。きっと爆弾がカメラからよく見える位置なのだろう。萩原さんの緊迫した指示を聞きながら、かくして新ちゃんの腕に病院の命運が握られたのだった。
