工藤さん家の娘さんは目が見えない
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いつもは着ないドレスの裾がヒラヒラと脹脛に当たり落ち着かない。白杖を片手に持ち替え擽ったくなった脹脛をストッキングに傷が付かないよう掻いた。
鈴木財閥の60周年船上パーティーに呼ばれた私は毛利さん達に付き添う形でここ、横浜港に停まるQ・エリザベス号に来ていた。本来ならあまりこう言った場には参加しないのだが、この前の月影島での旅行を聞いたらしい園子ちゃんが私も!と海外旅行に誘ってくれたため取り敢えず近場から、と今回のパーティーに参加させてもらう事にしたのだ。
「かなえさん、どうぞ飲み物です。」
「ありがとう蘭ちゃん。」
蘭ちゃんの手の導きに沿いコップを触る。形は…、シャンパンフルートだ。ステムに手を添えると中身は炭酸飲料だと教えてもらった。
「そう言えば外に警察の人がいたけど何かあったの?」
「怪盗キッドが予告状を出したんだよ!」
「怪盗キッド?」
新ちゃん曰く、最近巷を賑わす泥棒がいるらしい。その名前が怪盗キッドで、今夜鈴木家家宝の『漆黒の星』を奪いに来ると予告状を出したのだと言う。それを捕まえるために警察が集まっているのだそうだ。
「大変そうだね―…。」
「だからかなえねーちゃんも何か気づいたら教えてね。」
新ちゃんの言葉に頷く。まぁ私にはあまり関係ないだろう。そう思いながらも強気にキッドを挑発する園子ちゃんのお母さん、鈴木朋子さんの指示に従い乗船する前に貰った小さな箱から『漆黒の星』の模造品を取り出す。私のは…、うん。重さからして偽物だ。光り方も違う。本物じゃなくて良かったと安堵しながら胸元に模造品を着けた。
「えー!?まだ家にいるの?パパも?」
ふと聞こえた園子ちゃんの言葉にあれ、と首を傾げる。パーティー開催の挨拶してたよね、と先程のことを思い出していると蘭ちゃんがコナン君を呼ぶ焦った声がした。
「どうしたの?」
「コナン君いきなり走り出しちゃって…。何かあったのかな。」
「トイレかもよ?しばらくしても戻って来なかったら迎え行こうか。」
まぁ多分違うだろうが、ときっと何かを探しに行ったであろう新ちゃんに内心ため息をつきながら飲み物を口に含んだ。
◇
「戻って来ないわねー蘭。」
結局新ちゃんを心配した蘭ちゃんは探しに行ってしまったのだが、キッドが園子ちゃんのお父さんに変装したと言う証拠を掴んで戻って来た新ちゃんとはタイミング悪く入れ違いになってしまった。
「蘭ちゃん方向音痴だもんね。まぁ大丈夫だとは思うけど。」
「どーせ方向音痴ですよ!」
園子ちゃんに相槌を打っていると噂をすればなんとやら。蘭ちゃんが怒ったような、照れたような声を上げて帰って来た。部屋の外は警察で一杯だそうで、それも相まって戻るのが遅くなったそうだ。なるほどと蘭ちゃんの説明を聞いていると、ふと違和感を覚えた。
何だろ…。変な感じがする。突然感じた違和感に首を傾げていると、マイクのスイッチが入る音が響き次いで警察の人が喋り出す声が反響した。
「えー警視庁の茶木です。もう耳にされた方もおられると思いますが、あの忌々しい悪党がどうやら本船に侵入した様です!」
凄むように言うその人、茶木さんは如何にキッドが厄介かを力説する。声、顔、姿どころか性格すら模倣する変装の達人、もしかしたらもう誰かに成り代わっているかもしれない。そう言われ思わず腕を触る。見えない分人の変化には敏感な自信はあるが、警察が捕まえられないような相手を見抜ける程ではない。もし毛利さんや蘭ちゃん、園子ちゃんに変装していたらどうしよう。
「本来なら1人1人入念に調べあげるところですが、今回はそんな無粋なマネは避けましょう。合言葉です!傍にいる方とペアを組んで、2人だけの合言葉を決めてください!」
合言葉か。誰か近くにいたかな、と耳をそば立たせていると丁度右前に園子ちゃんがいるのが分かった。
「園子ちゃん園子ちゃん、私と合言葉決めない?」
「いいですよ!何にします?」
「そうだなー…」
無難に山と川と言おうとした瞬間、視界の影の割合が急激に増えた。どよめきが起こる室内で男の人の笑い声が響く。何か空気の抜ける音と警察の人の大声が聞こえたかと思うと、誰かの叫ぶ声が聞こえた。
「怪盗キッド?!」
どうやら例の泥棒が現れたらしい。騒然となる周りや黄色い声をあげる園子ちゃんに私はただ固まるしかなく、目を白黒させていると今度は発砲音が鳴り響いた。途端に色の変わる園子ちゃんの声や誰かの悲鳴でキッドが撃たれたのだと分かった。
あまりの急展開に意味が分からず成り行きを見守っていると、ネタばらしは直ぐに始まり、朋子さんと朋子さんの雇ったマジシャンとのサプライズパフォーマンスだと説明が入った。確かに硝煙の匂いも血の匂いもしなかったけど…。…これはちょっとしんどい。情報が多く、次から次へと起こることにもう私は疲労困憊だ。こんなので残り時間持つかな…。
「かなえさん大丈夫ですか?」
「うん、ありが…と、う?」
心配してくれたらしい蘭ちゃんが声をかけてくれ何とか笑顔を作るも、やはりおかしい。声は蘭ちゃんだ。名前を呼ぶ時に少し音が上がるのも、肩に添えた手の位置も、右足の方が足音が少し深いのも覚えがちゃんとある。
でも違う。全てが少しズレている。
「貴女…、誰?」
ピン、と私と蘭ちゃん、もとい蘭ちゃんに扮した誰かとの間に緊張が走った。
「誰って…蘭ですよ?どうしたんですか?」
「いいえ、違う。確かに声は蘭ちゃんだけど貴女は絶対蘭ちゃんじゃない。…もしかして、」
1つ頭に浮かんだ可能性を話そうとした瞬間、
「蘭ー!真田さんがマジックしてくれるって!見に行こ!」
「うん!かなえさん、ちょっと休んだ方がいいですよ?皆には伝えておきますから。」
「…そうだね。」
最後まで心配そうにしながら蘭ちゃんじゃない誰かは園子ちゃんと共に私の傍から離れて行った。間違いない。あの人がキッドなのだろう。蘭ちゃんと長い付き合いだから分かったが、確かにこれは変装の達人と呼ばれる訳だと息を吐く。
「…誰に言えばいいだ、これ…。」
いつの間にか知った人の気配が何処にもいなくなっており、人知れず呟いた言葉は楽しげな歓声に掻き消されていった。
◇
あの後大きく事を動かしたキッドにまんまとしてやられ、宝石は奪われ彼は逃走した。私の思った通りキッドは蘭ちゃんに変装していたらしく、予定より早くバレたので行動をはやめたのだそうだ。新ちゃんから聞かされた時は私のせい?と思ったが、まぁ宝石も蘭ちゃんも無傷で帰って来たので結果オーライと言うやつだ。
「次はぜってー捕まえてやる。」
警察の騒がしい声の中、不貞腐れたように言う新ちゃんは取り逃したことが気に食わないらしい。しかしその中に含まれた楽しげな音に思わず笑みが零れる。
「ライバル、ってやつだ。」
「バーロー。そんなんじゃねーよ…。つーか!」
いきなり語尾が跳ね上がった新ちゃんにビクッと肩を跳ねさせる。なんだなんだ。
「気づいてたんなら俺に言えよ!無闇に首突っ込むじゃねーぞ!」
「え、何?いきなり…。」
何だか怒り心頭な新ちゃんに首を傾げる。首突っ込んだことないけどなぁ…。よく分からないと言った私に新ちゃんはいよいよ呆れたように大きなため息をつくのだった。
鈴木財閥の60周年船上パーティーに呼ばれた私は毛利さん達に付き添う形でここ、横浜港に停まるQ・エリザベス号に来ていた。本来ならあまりこう言った場には参加しないのだが、この前の月影島での旅行を聞いたらしい園子ちゃんが私も!と海外旅行に誘ってくれたため取り敢えず近場から、と今回のパーティーに参加させてもらう事にしたのだ。
「かなえさん、どうぞ飲み物です。」
「ありがとう蘭ちゃん。」
蘭ちゃんの手の導きに沿いコップを触る。形は…、シャンパンフルートだ。ステムに手を添えると中身は炭酸飲料だと教えてもらった。
「そう言えば外に警察の人がいたけど何かあったの?」
「怪盗キッドが予告状を出したんだよ!」
「怪盗キッド?」
新ちゃん曰く、最近巷を賑わす泥棒がいるらしい。その名前が怪盗キッドで、今夜鈴木家家宝の『漆黒の星』を奪いに来ると予告状を出したのだと言う。それを捕まえるために警察が集まっているのだそうだ。
「大変そうだね―…。」
「だからかなえねーちゃんも何か気づいたら教えてね。」
新ちゃんの言葉に頷く。まぁ私にはあまり関係ないだろう。そう思いながらも強気にキッドを挑発する園子ちゃんのお母さん、鈴木朋子さんの指示に従い乗船する前に貰った小さな箱から『漆黒の星』の模造品を取り出す。私のは…、うん。重さからして偽物だ。光り方も違う。本物じゃなくて良かったと安堵しながら胸元に模造品を着けた。
「えー!?まだ家にいるの?パパも?」
ふと聞こえた園子ちゃんの言葉にあれ、と首を傾げる。パーティー開催の挨拶してたよね、と先程のことを思い出していると蘭ちゃんがコナン君を呼ぶ焦った声がした。
「どうしたの?」
「コナン君いきなり走り出しちゃって…。何かあったのかな。」
「トイレかもよ?しばらくしても戻って来なかったら迎え行こうか。」
まぁ多分違うだろうが、ときっと何かを探しに行ったであろう新ちゃんに内心ため息をつきながら飲み物を口に含んだ。
◇
「戻って来ないわねー蘭。」
結局新ちゃんを心配した蘭ちゃんは探しに行ってしまったのだが、キッドが園子ちゃんのお父さんに変装したと言う証拠を掴んで戻って来た新ちゃんとはタイミング悪く入れ違いになってしまった。
「蘭ちゃん方向音痴だもんね。まぁ大丈夫だとは思うけど。」
「どーせ方向音痴ですよ!」
園子ちゃんに相槌を打っていると噂をすればなんとやら。蘭ちゃんが怒ったような、照れたような声を上げて帰って来た。部屋の外は警察で一杯だそうで、それも相まって戻るのが遅くなったそうだ。なるほどと蘭ちゃんの説明を聞いていると、ふと違和感を覚えた。
何だろ…。変な感じがする。突然感じた違和感に首を傾げていると、マイクのスイッチが入る音が響き次いで警察の人が喋り出す声が反響した。
「えー警視庁の茶木です。もう耳にされた方もおられると思いますが、あの忌々しい悪党がどうやら本船に侵入した様です!」
凄むように言うその人、茶木さんは如何にキッドが厄介かを力説する。声、顔、姿どころか性格すら模倣する変装の達人、もしかしたらもう誰かに成り代わっているかもしれない。そう言われ思わず腕を触る。見えない分人の変化には敏感な自信はあるが、警察が捕まえられないような相手を見抜ける程ではない。もし毛利さんや蘭ちゃん、園子ちゃんに変装していたらどうしよう。
「本来なら1人1人入念に調べあげるところですが、今回はそんな無粋なマネは避けましょう。合言葉です!傍にいる方とペアを組んで、2人だけの合言葉を決めてください!」
合言葉か。誰か近くにいたかな、と耳をそば立たせていると丁度右前に園子ちゃんがいるのが分かった。
「園子ちゃん園子ちゃん、私と合言葉決めない?」
「いいですよ!何にします?」
「そうだなー…」
無難に山と川と言おうとした瞬間、視界の影の割合が急激に増えた。どよめきが起こる室内で男の人の笑い声が響く。何か空気の抜ける音と警察の人の大声が聞こえたかと思うと、誰かの叫ぶ声が聞こえた。
「怪盗キッド?!」
どうやら例の泥棒が現れたらしい。騒然となる周りや黄色い声をあげる園子ちゃんに私はただ固まるしかなく、目を白黒させていると今度は発砲音が鳴り響いた。途端に色の変わる園子ちゃんの声や誰かの悲鳴でキッドが撃たれたのだと分かった。
あまりの急展開に意味が分からず成り行きを見守っていると、ネタばらしは直ぐに始まり、朋子さんと朋子さんの雇ったマジシャンとのサプライズパフォーマンスだと説明が入った。確かに硝煙の匂いも血の匂いもしなかったけど…。…これはちょっとしんどい。情報が多く、次から次へと起こることにもう私は疲労困憊だ。こんなので残り時間持つかな…。
「かなえさん大丈夫ですか?」
「うん、ありが…と、う?」
心配してくれたらしい蘭ちゃんが声をかけてくれ何とか笑顔を作るも、やはりおかしい。声は蘭ちゃんだ。名前を呼ぶ時に少し音が上がるのも、肩に添えた手の位置も、右足の方が足音が少し深いのも覚えがちゃんとある。
でも違う。全てが少しズレている。
「貴女…、誰?」
ピン、と私と蘭ちゃん、もとい蘭ちゃんに扮した誰かとの間に緊張が走った。
「誰って…蘭ですよ?どうしたんですか?」
「いいえ、違う。確かに声は蘭ちゃんだけど貴女は絶対蘭ちゃんじゃない。…もしかして、」
1つ頭に浮かんだ可能性を話そうとした瞬間、
「蘭ー!真田さんがマジックしてくれるって!見に行こ!」
「うん!かなえさん、ちょっと休んだ方がいいですよ?皆には伝えておきますから。」
「…そうだね。」
最後まで心配そうにしながら蘭ちゃんじゃない誰かは園子ちゃんと共に私の傍から離れて行った。間違いない。あの人がキッドなのだろう。蘭ちゃんと長い付き合いだから分かったが、確かにこれは変装の達人と呼ばれる訳だと息を吐く。
「…誰に言えばいいだ、これ…。」
いつの間にか知った人の気配が何処にもいなくなっており、人知れず呟いた言葉は楽しげな歓声に掻き消されていった。
◇
あの後大きく事を動かしたキッドにまんまとしてやられ、宝石は奪われ彼は逃走した。私の思った通りキッドは蘭ちゃんに変装していたらしく、予定より早くバレたので行動をはやめたのだそうだ。新ちゃんから聞かされた時は私のせい?と思ったが、まぁ宝石も蘭ちゃんも無傷で帰って来たので結果オーライと言うやつだ。
「次はぜってー捕まえてやる。」
警察の騒がしい声の中、不貞腐れたように言う新ちゃんは取り逃したことが気に食わないらしい。しかしその中に含まれた楽しげな音に思わず笑みが零れる。
「ライバル、ってやつだ。」
「バーロー。そんなんじゃねーよ…。つーか!」
いきなり語尾が跳ね上がった新ちゃんにビクッと肩を跳ねさせる。なんだなんだ。
「気づいてたんなら俺に言えよ!無闇に首突っ込むじゃねーぞ!」
「え、何?いきなり…。」
何だか怒り心頭な新ちゃんに首を傾げる。首突っ込んだことないけどなぁ…。よく分からないと言った私に新ちゃんはいよいよ呆れたように大きなため息をつくのだった。
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