工藤さん家の娘さんは目が見えない
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
浅井さんと別れた後公民館に辿り着き、そこで行われている村民達の抗議活動に気圧されながら、私達は玄関先で待つこととなった。大変そうだな、と呟く毛利さんに同調しながら設置されていた椅子に座り深く息を吐く。
慣れない土地はやはり疲れる。久しぶりの旅行は体力の消耗が激しい。これなら私だけでも先に旅館に行った方が良かったかな。いやでも一人では行けないし、誰かに着いてきてもらうとなるとその人が二度手間になってしまう。
「かなえさん?体調悪いですか?」
「へ?あぁ、大丈夫。ありがとう。」
私の右手が蘭ちゃんの心配そうな声と共に握られた。心配かけてしまった。ぼーっとし過ぎていたかな。
「ーったく…。いつまでこんな所で待たせる気だ?」
不満気な毛利さんに蘭ちゃんが仕方ないと言うも、確かに大分待たされている。法事だからなのは分かるが、タイミングが悪かったなぁ。
と思っていると蘭ちゃんが新ちゃんを呼び止めた。それと同時に扉の開く音がしたので、大方また新ちゃんが好奇心を抑えられなかったのだろう。困った子だと皆で部屋へと入った。声の響き方から結構大きい部屋のようだ。足元はフローリングかな?波の音も聞こえるから海も近いみたいだ。香る磯の匂いに鼻先を動かしていると、ふと、変な匂いがした。なんの匂いだろ…。
「でもこのピアノきったないわねー!少しは掃除すればいいのに…。」
呆れたような蘭ちゃんの声にはた、と顔を向ける。
「ピアノあるの。」
「うん!大きいグランドピアノだよ。真ん中に置いてある。触る?」
「汚いんでしょ?やめとく。」
新ちゃんの申し出を断りながら、先程の匂いの正体が埃かカビの匂いだったと気づく。再度嗅ぐと確かに毛羽立って喉奥にひっかかる特有のものを感じる。ほんの一瞬甘い匂いにも感じたが、まぁ気のせいだろう。それよりも遠くの方から聞こえてくる足音にやっとかと耳を傾けていると、
「ダメです!そのピアノに触っちゃ!!!」
足音の主であろう男性の大声が後ろからかかり、ビクリと肩が跳ねた。どうも蘭ちゃんがピアノに触ろうとしていたらしいのだが、そんな大声出さなくても…。毛利さんも疑問に思ったのだろう理由を尋ねると重々しく彼は話し始めた。
「このピアノは呪いのピアノなんです。」
彼が話し出したのは2年前の村長が亡くなった事件の事だった。鍵盤上で亡くなった前村長を発見したのは彼で、しかも麻生さんが亡くなった時と同じ『月光』が直前まで弾かれていたのを聞いたらしく、それ以来このピアノは『呪われたピアノ』と呼ばれるようになったのだそうだ。
何とも気味の悪い話に皆息を飲んでいた。決して夜になるからではない薄ら寒さを感じ腕を摩っていると足元で空気が揺れる。え、待って。まさか…。
「別になんともないよ。このピアノ…。」
「コ、コナン君!?」
新ちゃん…。いや、まぁ呪いなんてこの子は信じないかもしれないけど躊躇なく触るとは。一気に分散した重圧に彼は思い出したかのように私たちを外に出す。また暫くは待機かぁと内心うんざりしていると覚えのある声がかかった。先程会った浅井さんだ。隣には清水さんと言う人もおり、彼らはお焼香をあげに来たと言う。
あの抗議の人達もいつの間にかいなくなっていたし、もうすぐ時間なのだろうと軽く挨拶し別れた。
先程までのひしめき合った音や空気は玄関の奥へと消え、かろうじて聞こえる木魚の音が中の説明をする。法事が始まったのだ。中で人が行き来する気配から意識を外し、待つ傍ら蘭ちゃんと話をしていると新ちゃんが服を引いた。
「かなえねーちゃん、あのピアノの音どうだった?」
「ピアノの音?特に何も問題はなかったと思うよ。普通の音。」
先程新ちゃんが勝手に鳴らした音を思い出す。普通の、何ら変わらない音だった。それを素直に伝えると新ちゃんは黙り込んでしまった。何だろう。気になって声をかけようとした時、ポロン、とピアノの音が聞こえ始めた。音からしてラジオ放送とかだろうか。でも法事中に流すかな、と内心首を傾げていると新ちゃんが走り出す音がした。慌てて呼び止める蘭ちゃんに私あぁ、とため息を零す。
やっぱり旅館、先行っとけば良かったかも。
◇
あのピアノがあった部屋で川島さんと言う男性が亡くなった。一気に慌ただしくなる周りに邪魔にならないよう玄関先で立っていた私にはあまり話が分からないが、どうも例のピアノの鍵盤上で亡くなったらしかった。しかも私が放送と勘違いしたピアノの音は、『月光』がテープレコーダーから流されていたらしく、亀山さんの事件をなぞらえているのは明白だった。
毛利さんが指揮を取り現場検証や検死が行われ、法事中玄関から入った人はいないためここにいる人の中に犯人がいると結論が出た。そのせいで一時は疑心暗鬼な空気が漂ったが、とりあえず法事は一時中断となり、時間も遅いため事情聴取は明日へと持ち越しとなった。
帰る方向が一緒になった浅井さんと、旅館へと向かう道すがらどうもまた新ちゃんが現場検証に口を挟んだらしく、それが鋭かったと浅井さんが褒めていた。
性分とは言え困ったものだと苦笑する。毛利さんもまた調子のいいこと言ってるし、と浅井さんを見送りつつ蘭ちゃんと呆れていると、ふと新ちゃんがあの手紙について語り出した。
「てことは、あの手紙は殺人予告で、殺人も終わってないってこと?」
「うん。」
なんて事だ。ただでさえ人が1人死んで恐ろしいと言うのに、連続殺人事件だなんて…。なんだか夜道が途端に怖くなり早く旅館に行こうと皆に声をかけようとした。
「よーし、おまえらは旅館に行ってろ!オレはピアノのある公民館に戻る!!」
「ちょとお父さん!」
「ボク達も行こうよ!公民館に!!」
「えぇ…。」
駆けて行った毛利さんに続くよう言う新ちゃんに胃が痛くなる。ここで無理矢理旅館に連れて行ったとて新ちゃんなら一人で抜け出して公民館に行ってしまうだろう。こんな夜遅くに、しかも殺人犯が何処にいるかも分からない状況でそれは危険だ。かと言って蘭ちゃんに新ちゃんの付き添いを頼むと、今度は私が旅館に辿り着けない。
はぁ、とため息をつき新ちゃんを説得している蘭ちゃんを止める。
「仕方ない。この子なら1人でも行っちゃいそうだし公民館に行こうか。」
「でもかなえさん疲れてませんか?」
「大丈夫。申し訳ないけど補助お願いできる?」
そう言って手を出すと蘭ちゃんは了承してくれた。全くお互い大変だねと内心蘭ちゃんに呟きながら、片手に擦り寄ってきた小さな体温をぎゅっと握った。
慣れない土地はやはり疲れる。久しぶりの旅行は体力の消耗が激しい。これなら私だけでも先に旅館に行った方が良かったかな。いやでも一人では行けないし、誰かに着いてきてもらうとなるとその人が二度手間になってしまう。
「かなえさん?体調悪いですか?」
「へ?あぁ、大丈夫。ありがとう。」
私の右手が蘭ちゃんの心配そうな声と共に握られた。心配かけてしまった。ぼーっとし過ぎていたかな。
「ーったく…。いつまでこんな所で待たせる気だ?」
不満気な毛利さんに蘭ちゃんが仕方ないと言うも、確かに大分待たされている。法事だからなのは分かるが、タイミングが悪かったなぁ。
と思っていると蘭ちゃんが新ちゃんを呼び止めた。それと同時に扉の開く音がしたので、大方また新ちゃんが好奇心を抑えられなかったのだろう。困った子だと皆で部屋へと入った。声の響き方から結構大きい部屋のようだ。足元はフローリングかな?波の音も聞こえるから海も近いみたいだ。香る磯の匂いに鼻先を動かしていると、ふと、変な匂いがした。なんの匂いだろ…。
「でもこのピアノきったないわねー!少しは掃除すればいいのに…。」
呆れたような蘭ちゃんの声にはた、と顔を向ける。
「ピアノあるの。」
「うん!大きいグランドピアノだよ。真ん中に置いてある。触る?」
「汚いんでしょ?やめとく。」
新ちゃんの申し出を断りながら、先程の匂いの正体が埃かカビの匂いだったと気づく。再度嗅ぐと確かに毛羽立って喉奥にひっかかる特有のものを感じる。ほんの一瞬甘い匂いにも感じたが、まぁ気のせいだろう。それよりも遠くの方から聞こえてくる足音にやっとかと耳を傾けていると、
「ダメです!そのピアノに触っちゃ!!!」
足音の主であろう男性の大声が後ろからかかり、ビクリと肩が跳ねた。どうも蘭ちゃんがピアノに触ろうとしていたらしいのだが、そんな大声出さなくても…。毛利さんも疑問に思ったのだろう理由を尋ねると重々しく彼は話し始めた。
「このピアノは呪いのピアノなんです。」
彼が話し出したのは2年前の村長が亡くなった事件の事だった。鍵盤上で亡くなった前村長を発見したのは彼で、しかも麻生さんが亡くなった時と同じ『月光』が直前まで弾かれていたのを聞いたらしく、それ以来このピアノは『呪われたピアノ』と呼ばれるようになったのだそうだ。
何とも気味の悪い話に皆息を飲んでいた。決して夜になるからではない薄ら寒さを感じ腕を摩っていると足元で空気が揺れる。え、待って。まさか…。
「別になんともないよ。このピアノ…。」
「コ、コナン君!?」
新ちゃん…。いや、まぁ呪いなんてこの子は信じないかもしれないけど躊躇なく触るとは。一気に分散した重圧に彼は思い出したかのように私たちを外に出す。また暫くは待機かぁと内心うんざりしていると覚えのある声がかかった。先程会った浅井さんだ。隣には清水さんと言う人もおり、彼らはお焼香をあげに来たと言う。
あの抗議の人達もいつの間にかいなくなっていたし、もうすぐ時間なのだろうと軽く挨拶し別れた。
先程までのひしめき合った音や空気は玄関の奥へと消え、かろうじて聞こえる木魚の音が中の説明をする。法事が始まったのだ。中で人が行き来する気配から意識を外し、待つ傍ら蘭ちゃんと話をしていると新ちゃんが服を引いた。
「かなえねーちゃん、あのピアノの音どうだった?」
「ピアノの音?特に何も問題はなかったと思うよ。普通の音。」
先程新ちゃんが勝手に鳴らした音を思い出す。普通の、何ら変わらない音だった。それを素直に伝えると新ちゃんは黙り込んでしまった。何だろう。気になって声をかけようとした時、ポロン、とピアノの音が聞こえ始めた。音からしてラジオ放送とかだろうか。でも法事中に流すかな、と内心首を傾げていると新ちゃんが走り出す音がした。慌てて呼び止める蘭ちゃんに私あぁ、とため息を零す。
やっぱり旅館、先行っとけば良かったかも。
◇
あのピアノがあった部屋で川島さんと言う男性が亡くなった。一気に慌ただしくなる周りに邪魔にならないよう玄関先で立っていた私にはあまり話が分からないが、どうも例のピアノの鍵盤上で亡くなったらしかった。しかも私が放送と勘違いしたピアノの音は、『月光』がテープレコーダーから流されていたらしく、亀山さんの事件をなぞらえているのは明白だった。
毛利さんが指揮を取り現場検証や検死が行われ、法事中玄関から入った人はいないためここにいる人の中に犯人がいると結論が出た。そのせいで一時は疑心暗鬼な空気が漂ったが、とりあえず法事は一時中断となり、時間も遅いため事情聴取は明日へと持ち越しとなった。
帰る方向が一緒になった浅井さんと、旅館へと向かう道すがらどうもまた新ちゃんが現場検証に口を挟んだらしく、それが鋭かったと浅井さんが褒めていた。
性分とは言え困ったものだと苦笑する。毛利さんもまた調子のいいこと言ってるし、と浅井さんを見送りつつ蘭ちゃんと呆れていると、ふと新ちゃんがあの手紙について語り出した。
「てことは、あの手紙は殺人予告で、殺人も終わってないってこと?」
「うん。」
なんて事だ。ただでさえ人が1人死んで恐ろしいと言うのに、連続殺人事件だなんて…。なんだか夜道が途端に怖くなり早く旅館に行こうと皆に声をかけようとした。
「よーし、おまえらは旅館に行ってろ!オレはピアノのある公民館に戻る!!」
「ちょとお父さん!」
「ボク達も行こうよ!公民館に!!」
「えぇ…。」
駆けて行った毛利さんに続くよう言う新ちゃんに胃が痛くなる。ここで無理矢理旅館に連れて行ったとて新ちゃんなら一人で抜け出して公民館に行ってしまうだろう。こんな夜遅くに、しかも殺人犯が何処にいるかも分からない状況でそれは危険だ。かと言って蘭ちゃんに新ちゃんの付き添いを頼むと、今度は私が旅館に辿り着けない。
はぁ、とため息をつき新ちゃんを説得している蘭ちゃんを止める。
「仕方ない。この子なら1人でも行っちゃいそうだし公民館に行こうか。」
「でもかなえさん疲れてませんか?」
「大丈夫。申し訳ないけど補助お願いできる?」
そう言って手を出すと蘭ちゃんは了承してくれた。全くお互い大変だねと内心蘭ちゃんに呟きながら、片手に擦り寄ってきた小さな体温をぎゅっと握った。
