工藤さん家の娘さんは目が見えない
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12月25日。クリスマス当日の外出は人が多いためなるべく避けるのだが、仕事で必要な物が壊れたため仕方なく重い腰を上げる。ただこの時期ムクに冷たいアスファルトを歩かせるのは忍びなく、かと言って1人で歩くには少量でも雪道は危ないのでどうしたものかと悩む。
いつもなら新ちゃんか友人に付き添いを頼むけど皆今日は予定があるって言ってたしなぁ。うーんと頭を悩ませているとふと、1人思い浮かんだ。仕事かもしれないがまぁダメで元々。短い文章のメールを送ると、意外にも直ぐに返信が来た。スマホの機能を使い読み上げると急いで出かける準備をした。
「すみません、車まで出して頂いて。」
玄関を出てしばらく待っているとエンジン音が前で停り聞き知った声に名前を呼ばれ、そのまま彼、萩原さんの案内の元車の助手席に座らせて貰った。
「気にしないで。コイツも最近運転してやってなかったから丁度良かったよ。行くのは電気屋でいいね。」
「はい、お願いします。」
答えながらシートベルトを探すも上手く場所が分からない。自分の左上を触っていると小さな笑い声の共に気配が近づき体温が背中の方に籠る。固まる私を気にすることなく萩原さんが代わりにシートベルトを付けてくれた。タバコとシャンプーの匂い…。父や新ちゃんとは違う男性の香りが何だか少しだけ気になった。
◇
お目当ての物、キーボードを無事買えた私は気分良く店を後にする。補助をしてくれている萩原さんにお礼を言いつつ車に向かっていると軽い口調で話しかけられた。
「俺この後百貨店に用あるんだけど、寄って大丈夫?」
「全然大丈夫ですよ。」
ありがとう、と言われたがお礼を言うのはこちらの方なのに思いやりのある人だ。
再度車に乗り込みそのまま私たちは百貨店へと向かった。
百貨店に着くと直ぐ萩原さんは頼んでいた物を受け取ると言い、その間私も店員さんの手を借りながらお店の商品を物色していた。デザインは分からないので機能性を説明してもらっていると、いいなと思う物があったのでそのまま会計に向かう。
支払いが終わると丁度萩原さんも用事が終わったらしく、このままお茶でもしようかと言う話になった。時間的にも昼時は過ぎているのでレストランフロアのカフェに入りお互い飲み物を注文して一息つくことにした。
「ありがとね。付き合ってもらっちゃって。」
「いえ。こちらこそクリスマスにありがとうございました。」
「ぜーんぜん。どうせひとり寂しくテレビ観てるか陣平ちゃんと呑みに行くかしかなかったから。」
よく聞く名前に笑ってしまう。ほんと仲が良い。
「それってお姉さんへのプレゼントですか?」
「違う違う。かなえちゃんも何か買ってたよね。新一くん?」
「あ、いえこれは、…今は会えない人なんですけど、いつか、お礼も兼ねて渡したくて。」
家族や友人の分はもう買ってあるので本来なら予定になかったが、この商品の説明を聞いた時お兄さんを思い出した。買ったところで渡せないけどまぁ腐る物ではないしクリスマス仕様ではないので、いつか、必ず会えた時に渡そうと決めたのだ。
「大切な人なんだね。…なんか妬けるな。」
静かに、独り言のように萩原さんが囁いた。まさかそんな事を言われるとは思わず一瞬言葉が詰まる。しかしいつもの揶揄いの延長だと気づき力が抜けた。
「もう、揶揄わないでくださいよ。」
「嘘じゃないぜ?俺もかなえちゃんの大切な人になりたいなー。」
「私の大切な人になるには父を倒していただかないと…。」
「あ、やっぱ今のなし。」
途端に掌を返す萩原さんに笑ってしまう。ただ、少しドキッとしたのは内緒だ。
◇
萩原さんに送ってもらっていると、家の前に誰かいると言われた。
「あれ…、毛利さんとこの娘さんだわ。」
「蘭ちゃんですか?」
はて、何か用事でもあったろうか。首を傾げながら萩原さんに一日のお礼を言い車から降りる。エンジ音が遠ざかるのと同時に蘭ちゃんが慌てたように名前を呼んできた。
「かなえさん!突然すみません。新一帰ってきてないですか?」
「新ちゃん?」
新ちゃんがどうしたのだろう。確か蘭ちゃんと園子ちゃんと一緒だったはずだが、まさかまた何かやらかした…?今度は何したのかと慌てて聞くも蘭ちゃんは黙ったまま答えてはくれなかった。
重苦しい空気に自然に眉が下がる。これは新ちゃんが何かしたっぽいな。内心呆れながら蘭ちゃんの手をギュッと握る。
「とりあえず家に入ろう?」
何時から待っていたのだろう。氷のように冷たくなった彼女の手を引いて家へと入った。
荷物をテーブルに置くとムクのために元々つけていた暖房の温度を上げる。雪も本格的に降ってきたし今夜は冷え込むだろうな。手伝いを申し出る蘭ちゃんを制し紅茶を入れる。インスタントだがリラックス効果はあるはずだ。部屋へと戻りテーブルにコップを置くとソファに座る蘭ちゃんの隣に腰掛けた。いただきます、と小さな声が聞こえコクコクと嚥下の音がする。しばらくして蘭ちゃんが静かに息を吐いたのを確認してからそっと声をかけた。
「それで蘭ちゃん、どうしたの?」
「…実は、」
蘭ちゃん曰く園子ちゃん達と事件に巻き込まれ、それを解決したのが新ちゃんだったらしい。姿は見えなかったがカラオケのスピーカーから話す新ちゃんに、やっと帰って来たのだと家で待ち構えていたも新ちゃんは一向に姿を現さず、私が来たのだと。
涙声でそう話す蘭ちゃんに胸が痛む。ほんと…、うちの軽率な愚弟がごめん。今すぐにでも話して安心させたい気持ちをグッと堪え、蘭ちゃんの背中を撫でる。
「そっか…。でもごめん、私のところには何の連絡も来てないの。」
「そうですか…。」
「暫く待っててみる?」
「…いいんですか?」
勿論だと頷く。それにやっと安堵の息を漏らした蘭ちゃんに胸を撫で下ろす。諦めるまでのその時間で私が出来ることなどたかが知れている。だからこそせめてその時間の負担が少しでも減るようにと手を握りしめた。
大分落ち着いた蘭ちゃんにトイレに行くと一声かけて部屋を後にする。ヒヤリとする廊下を歩いていると、ふと、聞き知った声が私を呼んだ。
「し、コナン君…。」
「よぉ。」
やっぱり新ちゃんだった。下の方から聞こえる高い声は悪びれた様子もなく普段通りで、思わず口を尖らせてしまう。
「何か用?」
「なんで怒ってんだよ…。」
「自分の胸に手を当てて考えなさい。…それで?どうしたの、蘭ちゃんもいるのに。」
「その蘭のことで姉さんにちょっと協力してもらいたくて。」
「協力?」
身をかがめる私の耳に新ちゃんが手を添える。そのまま縮まった距離と新ちゃんの吐息に集中すると、思いもよらない提案をされた。
「それ…。ほんとに大丈夫?」
「心配ねーよ。じゃ、よろしくな!」
「あ、」
まだやるなんて言ってないのに…。タッタッタッと遠ざかって行く足音の軽さに我が弟ながら憎らしくなった。
いつもなら新ちゃんか友人に付き添いを頼むけど皆今日は予定があるって言ってたしなぁ。うーんと頭を悩ませているとふと、1人思い浮かんだ。仕事かもしれないがまぁダメで元々。短い文章のメールを送ると、意外にも直ぐに返信が来た。スマホの機能を使い読み上げると急いで出かける準備をした。
「すみません、車まで出して頂いて。」
玄関を出てしばらく待っているとエンジン音が前で停り聞き知った声に名前を呼ばれ、そのまま彼、萩原さんの案内の元車の助手席に座らせて貰った。
「気にしないで。コイツも最近運転してやってなかったから丁度良かったよ。行くのは電気屋でいいね。」
「はい、お願いします。」
答えながらシートベルトを探すも上手く場所が分からない。自分の左上を触っていると小さな笑い声の共に気配が近づき体温が背中の方に籠る。固まる私を気にすることなく萩原さんが代わりにシートベルトを付けてくれた。タバコとシャンプーの匂い…。父や新ちゃんとは違う男性の香りが何だか少しだけ気になった。
◇
お目当ての物、キーボードを無事買えた私は気分良く店を後にする。補助をしてくれている萩原さんにお礼を言いつつ車に向かっていると軽い口調で話しかけられた。
「俺この後百貨店に用あるんだけど、寄って大丈夫?」
「全然大丈夫ですよ。」
ありがとう、と言われたがお礼を言うのはこちらの方なのに思いやりのある人だ。
再度車に乗り込みそのまま私たちは百貨店へと向かった。
百貨店に着くと直ぐ萩原さんは頼んでいた物を受け取ると言い、その間私も店員さんの手を借りながらお店の商品を物色していた。デザインは分からないので機能性を説明してもらっていると、いいなと思う物があったのでそのまま会計に向かう。
支払いが終わると丁度萩原さんも用事が終わったらしく、このままお茶でもしようかと言う話になった。時間的にも昼時は過ぎているのでレストランフロアのカフェに入りお互い飲み物を注文して一息つくことにした。
「ありがとね。付き合ってもらっちゃって。」
「いえ。こちらこそクリスマスにありがとうございました。」
「ぜーんぜん。どうせひとり寂しくテレビ観てるか陣平ちゃんと呑みに行くかしかなかったから。」
よく聞く名前に笑ってしまう。ほんと仲が良い。
「それってお姉さんへのプレゼントですか?」
「違う違う。かなえちゃんも何か買ってたよね。新一くん?」
「あ、いえこれは、…今は会えない人なんですけど、いつか、お礼も兼ねて渡したくて。」
家族や友人の分はもう買ってあるので本来なら予定になかったが、この商品の説明を聞いた時お兄さんを思い出した。買ったところで渡せないけどまぁ腐る物ではないしクリスマス仕様ではないので、いつか、必ず会えた時に渡そうと決めたのだ。
「大切な人なんだね。…なんか妬けるな。」
静かに、独り言のように萩原さんが囁いた。まさかそんな事を言われるとは思わず一瞬言葉が詰まる。しかしいつもの揶揄いの延長だと気づき力が抜けた。
「もう、揶揄わないでくださいよ。」
「嘘じゃないぜ?俺もかなえちゃんの大切な人になりたいなー。」
「私の大切な人になるには父を倒していただかないと…。」
「あ、やっぱ今のなし。」
途端に掌を返す萩原さんに笑ってしまう。ただ、少しドキッとしたのは内緒だ。
◇
萩原さんに送ってもらっていると、家の前に誰かいると言われた。
「あれ…、毛利さんとこの娘さんだわ。」
「蘭ちゃんですか?」
はて、何か用事でもあったろうか。首を傾げながら萩原さんに一日のお礼を言い車から降りる。エンジ音が遠ざかるのと同時に蘭ちゃんが慌てたように名前を呼んできた。
「かなえさん!突然すみません。新一帰ってきてないですか?」
「新ちゃん?」
新ちゃんがどうしたのだろう。確か蘭ちゃんと園子ちゃんと一緒だったはずだが、まさかまた何かやらかした…?今度は何したのかと慌てて聞くも蘭ちゃんは黙ったまま答えてはくれなかった。
重苦しい空気に自然に眉が下がる。これは新ちゃんが何かしたっぽいな。内心呆れながら蘭ちゃんの手をギュッと握る。
「とりあえず家に入ろう?」
何時から待っていたのだろう。氷のように冷たくなった彼女の手を引いて家へと入った。
荷物をテーブルに置くとムクのために元々つけていた暖房の温度を上げる。雪も本格的に降ってきたし今夜は冷え込むだろうな。手伝いを申し出る蘭ちゃんを制し紅茶を入れる。インスタントだがリラックス効果はあるはずだ。部屋へと戻りテーブルにコップを置くとソファに座る蘭ちゃんの隣に腰掛けた。いただきます、と小さな声が聞こえコクコクと嚥下の音がする。しばらくして蘭ちゃんが静かに息を吐いたのを確認してからそっと声をかけた。
「それで蘭ちゃん、どうしたの?」
「…実は、」
蘭ちゃん曰く園子ちゃん達と事件に巻き込まれ、それを解決したのが新ちゃんだったらしい。姿は見えなかったがカラオケのスピーカーから話す新ちゃんに、やっと帰って来たのだと家で待ち構えていたも新ちゃんは一向に姿を現さず、私が来たのだと。
涙声でそう話す蘭ちゃんに胸が痛む。ほんと…、うちの軽率な愚弟がごめん。今すぐにでも話して安心させたい気持ちをグッと堪え、蘭ちゃんの背中を撫でる。
「そっか…。でもごめん、私のところには何の連絡も来てないの。」
「そうですか…。」
「暫く待っててみる?」
「…いいんですか?」
勿論だと頷く。それにやっと安堵の息を漏らした蘭ちゃんに胸を撫で下ろす。諦めるまでのその時間で私が出来ることなどたかが知れている。だからこそせめてその時間の負担が少しでも減るようにと手を握りしめた。
大分落ち着いた蘭ちゃんにトイレに行くと一声かけて部屋を後にする。ヒヤリとする廊下を歩いていると、ふと、聞き知った声が私を呼んだ。
「し、コナン君…。」
「よぉ。」
やっぱり新ちゃんだった。下の方から聞こえる高い声は悪びれた様子もなく普段通りで、思わず口を尖らせてしまう。
「何か用?」
「なんで怒ってんだよ…。」
「自分の胸に手を当てて考えなさい。…それで?どうしたの、蘭ちゃんもいるのに。」
「その蘭のことで姉さんにちょっと協力してもらいたくて。」
「協力?」
身をかがめる私の耳に新ちゃんが手を添える。そのまま縮まった距離と新ちゃんの吐息に集中すると、思いもよらない提案をされた。
「それ…。ほんとに大丈夫?」
「心配ねーよ。じゃ、よろしくな!」
「あ、」
まだやるなんて言ってないのに…。タッタッタッと遠ざかって行く足音の軽さに我が弟ながら憎らしくなった。
