工藤さん家の娘さんは目が見えない
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目の前の机にコトッと物が置かれる音がした。
「オレンジジュースじゃよ。かなえくんが持ってきてくれたお菓子もあるから子供たちを呼んでくれるかの。」
「はい。」
博士の言葉にソファから腰を浮かす。何度も来ている博士の家なので、補助がなくとも難なく庭へと続く引き違い窓まで辿り着いた。開け放たれた窓から草や風の外の匂いが鼻先をくすぐり、元気よく走り回る子供たちの声と楽しげなムクの息遣いに頬が緩む。
「博士がおやつ用意してくれたから入っておいで。」
「わーい!やったー!」
「ありがとうございます!」
「オレ、1番大きいやつ!」
「あ、お前ら!手洗えよ!」
はーい、と新ちゃんの言葉に大きな返事が返ってくる。慌ただしい足音で室内に上がってくる子供たちに呆れる弟の横でムクの足を拭きながら笑いが漏れた。
◇
子供たち、光彦君と歩美ちゃんと元太君に出会ったのはつい先日のことだ。子供たちの間でお化け屋敷と噂されていたらしい我が家に真意を確かめるべく訪れた3人は、庭にいた私を見てここが普通の住宅だと知り突然押しかけた事を物凄く申し訳なさそうに謝ってくれた。
まぁわざと小学生の登下校時間からずらして動いているので人がいないと思われても仕方ないが、まさかお化け屋敷にまで認識が発展しているとは思わなかった。
後日新ちゃんにその話をすると何と同じクラスだと言われ、なんでも少年探偵団なる仲間なのだと言う。
つくづく探偵に縁があるなぁと苦笑したが、新ちゃんの仲介や元来の子供たちの素直さもあり、今では私の代わりにムクと遊んでくれるまでに親しくなった。
今日も私の代わりに博士の庭でムクと遊んでくれている。本来ならパートナーであり飼い主でもある私がしなければいけないのだが、如何せん私には体力的にも行動範囲的にも限度がある。だから子供たちには本当に感謝してもしきれないくらいだ。
ムクも大分満足したのか今は眠っている。子供達もジュースとおやつを食べ終わりそろそろお開きの流れになった。
「今日はありがとうね。皆が来てくれてよかった。」
「お易い御用ですよ!」
「歩美もムクのこと好きだから楽しかった!」
「次はシュークリームが食べたいんだぞ!」
「分かった。用意しておくね。」
バイバイとまだまだ元気が有り余っていそうな声に、気をつけてねと返しながら皆を見送る。暫くしてから家の中へと戻り博士にもお礼を告げた。
「博士もありがとう。庭貸してくれて。」
「なに、構わんよ。」
家の庭では少し狭いのでムクが遊ぶ時は公園を利用しているが時々博士の庭を借りる時がある。勿論借りる時はお菓子を持ってきてはいるが今度何かちゃんとしたお礼をしなきゃ。そう考えながら食器を下げ一通りの片付けを終わらせる。フカフカの柔らかいソファに腰掛け一息ついていると新ちゃんが隣に座った。
「新ちゃんもありがとう。」
「別に。あいつらもムクに会いたがってたから。」
「友達思いだねぇ。」
「バーロー。そんなんじゃねーよ。」
全く素直じゃないな。
でもそんな小生意気なところが可愛いくてニヤニヤとしていたらデコピンされた。私お姉ちゃんなのに。
「そういや、例の『お兄さん』と連絡取れるようになったんだってな。」
「そう!そうなの!」
思わず声のボリュームが上がってしまい慌てて口を噤む。あれは子供たちに会う少し前、いつものように繋がらないお兄さんへメールを打っていると受信完了の音が鳴ったのだ。驚いて再度確認するとしっかりとお兄さん宛にメールは送られており、ハイテンションのまま新ちゃんに電話したのは記憶に新しい。
「電話は繋がらないし返信は来ないけど、ちゃんとこっちのメールは受信されるようになったよ。」
「それほんとに本人かよ…。」
呆れたように言う新ちゃんはまだ疑っているらしい。思えばお兄さんと会っていた時から新ちゃんはお兄さんに疑念を持っていた。何がこの子の琴線に触れているのかは分からないけど友達を疑われるのは悲しい。それを悟られないよう少し強引に話題を変えた。
「そう言えば、あの女の人どうなったの?」
2、3日前、毛利さんの所にとある女性が依頼をしに来た。なんでも父親の捜索して欲しいとの事だったが、蓋を開ければ捜索依頼の男性は父親でもなく血縁関係者でもなかったらしい。しかもその女性はあの組織に関わりがあったらしく、新ちゃんからその日絶対外に出ないよう言われたのだ。
「ああ…。…死んじまったよ、組織の奴に殺されてな…。」
「…そっか…。」
一応お兄さんにもメール送ってみたけど、意味なかったみたいだな…。随分前に探偵の知り合いがいると言っていたので何か分かるかもと送ったが、後でもう一度解決した有無のメールを送っておこう。そう思いながら随分下になってしまった頭に手を置く。そのまま優しく撫でる私の手を新ちゃんは払うことはなかった。
「でも妙なんだ。」
「何が?」
新ちゃんの言葉に頭から手を離しながら首を傾げる。
「死体を警察が持って行く時、高木刑事が言ってたんだ。『この死体は公安に届けられるらしい』って。」
「公安?」
公安についての知識はほぼ皆無だが、同じ警察ならどこでも大丈夫ではないのだろうか。そう聞こうとしたら丁度博士が戻ってきて話はそこで途切れてしまった。
…そう言えば、萩原さん達の同期の人が公安に行ったって前に聞いた事あったけど…。
「…考え過ぎだよね?」
ふと脳裏を掠めた可能性に首を振る。年齢の近い警察官なんていくらでもいるのにそんな偶然、奇跡にも等しい。第一お兄さんが本当に警察かも分かってないんだからと、自分の考えをコップのお茶と一緒に飲み込んだ。
「オレンジジュースじゃよ。かなえくんが持ってきてくれたお菓子もあるから子供たちを呼んでくれるかの。」
「はい。」
博士の言葉にソファから腰を浮かす。何度も来ている博士の家なので、補助がなくとも難なく庭へと続く引き違い窓まで辿り着いた。開け放たれた窓から草や風の外の匂いが鼻先をくすぐり、元気よく走り回る子供たちの声と楽しげなムクの息遣いに頬が緩む。
「博士がおやつ用意してくれたから入っておいで。」
「わーい!やったー!」
「ありがとうございます!」
「オレ、1番大きいやつ!」
「あ、お前ら!手洗えよ!」
はーい、と新ちゃんの言葉に大きな返事が返ってくる。慌ただしい足音で室内に上がってくる子供たちに呆れる弟の横でムクの足を拭きながら笑いが漏れた。
◇
子供たち、光彦君と歩美ちゃんと元太君に出会ったのはつい先日のことだ。子供たちの間でお化け屋敷と噂されていたらしい我が家に真意を確かめるべく訪れた3人は、庭にいた私を見てここが普通の住宅だと知り突然押しかけた事を物凄く申し訳なさそうに謝ってくれた。
まぁわざと小学生の登下校時間からずらして動いているので人がいないと思われても仕方ないが、まさかお化け屋敷にまで認識が発展しているとは思わなかった。
後日新ちゃんにその話をすると何と同じクラスだと言われ、なんでも少年探偵団なる仲間なのだと言う。
つくづく探偵に縁があるなぁと苦笑したが、新ちゃんの仲介や元来の子供たちの素直さもあり、今では私の代わりにムクと遊んでくれるまでに親しくなった。
今日も私の代わりに博士の庭でムクと遊んでくれている。本来ならパートナーであり飼い主でもある私がしなければいけないのだが、如何せん私には体力的にも行動範囲的にも限度がある。だから子供たちには本当に感謝してもしきれないくらいだ。
ムクも大分満足したのか今は眠っている。子供達もジュースとおやつを食べ終わりそろそろお開きの流れになった。
「今日はありがとうね。皆が来てくれてよかった。」
「お易い御用ですよ!」
「歩美もムクのこと好きだから楽しかった!」
「次はシュークリームが食べたいんだぞ!」
「分かった。用意しておくね。」
バイバイとまだまだ元気が有り余っていそうな声に、気をつけてねと返しながら皆を見送る。暫くしてから家の中へと戻り博士にもお礼を告げた。
「博士もありがとう。庭貸してくれて。」
「なに、構わんよ。」
家の庭では少し狭いのでムクが遊ぶ時は公園を利用しているが時々博士の庭を借りる時がある。勿論借りる時はお菓子を持ってきてはいるが今度何かちゃんとしたお礼をしなきゃ。そう考えながら食器を下げ一通りの片付けを終わらせる。フカフカの柔らかいソファに腰掛け一息ついていると新ちゃんが隣に座った。
「新ちゃんもありがとう。」
「別に。あいつらもムクに会いたがってたから。」
「友達思いだねぇ。」
「バーロー。そんなんじゃねーよ。」
全く素直じゃないな。
でもそんな小生意気なところが可愛いくてニヤニヤとしていたらデコピンされた。私お姉ちゃんなのに。
「そういや、例の『お兄さん』と連絡取れるようになったんだってな。」
「そう!そうなの!」
思わず声のボリュームが上がってしまい慌てて口を噤む。あれは子供たちに会う少し前、いつものように繋がらないお兄さんへメールを打っていると受信完了の音が鳴ったのだ。驚いて再度確認するとしっかりとお兄さん宛にメールは送られており、ハイテンションのまま新ちゃんに電話したのは記憶に新しい。
「電話は繋がらないし返信は来ないけど、ちゃんとこっちのメールは受信されるようになったよ。」
「それほんとに本人かよ…。」
呆れたように言う新ちゃんはまだ疑っているらしい。思えばお兄さんと会っていた時から新ちゃんはお兄さんに疑念を持っていた。何がこの子の琴線に触れているのかは分からないけど友達を疑われるのは悲しい。それを悟られないよう少し強引に話題を変えた。
「そう言えば、あの女の人どうなったの?」
2、3日前、毛利さんの所にとある女性が依頼をしに来た。なんでも父親の捜索して欲しいとの事だったが、蓋を開ければ捜索依頼の男性は父親でもなく血縁関係者でもなかったらしい。しかもその女性はあの組織に関わりがあったらしく、新ちゃんからその日絶対外に出ないよう言われたのだ。
「ああ…。…死んじまったよ、組織の奴に殺されてな…。」
「…そっか…。」
一応お兄さんにもメール送ってみたけど、意味なかったみたいだな…。随分前に探偵の知り合いがいると言っていたので何か分かるかもと送ったが、後でもう一度解決した有無のメールを送っておこう。そう思いながら随分下になってしまった頭に手を置く。そのまま優しく撫でる私の手を新ちゃんは払うことはなかった。
「でも妙なんだ。」
「何が?」
新ちゃんの言葉に頭から手を離しながら首を傾げる。
「死体を警察が持って行く時、高木刑事が言ってたんだ。『この死体は公安に届けられるらしい』って。」
「公安?」
公安についての知識はほぼ皆無だが、同じ警察ならどこでも大丈夫ではないのだろうか。そう聞こうとしたら丁度博士が戻ってきて話はそこで途切れてしまった。
…そう言えば、萩原さん達の同期の人が公安に行ったって前に聞いた事あったけど…。
「…考え過ぎだよね?」
ふと脳裏を掠めた可能性に首を振る。年齢の近い警察官なんていくらでもいるのにそんな偶然、奇跡にも等しい。第一お兄さんが本当に警察かも分かってないんだからと、自分の考えをコップのお茶と一緒に飲み込んだ。
