工藤さん家の娘さんは目が見えない
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新ちゃんの言った名前に訝しそうにうーんと首を傾げる蘭ちゃん。やっぱり咄嗟と言えど変だよね!と心の中で叫びながら慌ててフォローに入る。
「えっと、この子のお父さんがコナン・ドイルのファンで!変わってるけどいい名前でしょ?」
大分無理矢理ではあるがコナンとつく名前でおかしくなさそうな理由を上げる。幸い蘭ちゃんは特に気に留めず納得してくれたようでほっと胸を撫で下ろした。それより新ちゃんの事が気になるみたいで心配そうに今日あったことを説明してくれた。ほんと、女の子を置いて怪しい人を追いかけるとか…。うちの愚弟は…。
「やっぱり警察に言った方がいいんじゃないかなって…。」
「う、う〜ん。そんな心配しなくても大丈夫じゃないかな?」
「…かなえさん、いつもなら凄く心配するのに今日はどうしたんですか?」
ピシリと身体が固まる。
まずい。見えなくとも蘭ちゃんが怪しんでるのが分かる。本日何度目かのピンチにどう説明しようかと脳をフル回転させていると、おおそうだと博士が蘭ちゃんの名前を呼んだ。
「すまんが少しの間、この子を君の家で預かってくれんか?」
「え?」
「いやー、この子の親が事故で入院したんで、ワシが世話を頼まれとったんじゃが、ワシも一人暮らしでなにかと大変じゃし、かと言ってかなえ君に頼むのものー…。」
これまた苦しい言い訳だが本当の事を言う訳にはいかないし、ここは博士の言葉に乗るしかない。それに博士の言う通り蘭ちゃんのお父さんは元探偵だし、住むには安全でしかも情報も入ってくるはずだ。私や博士といるより断然好条件だろう。…まぁ好きな子の家で寝泊まりするのは、結構、いやかなりしんどいだろうけど…。
しかし背に腹はかえられないと私も手を合わせて頼むと蘭ちゃんは分かりましたと、新ちゃんを引き取ってくれることとなった。ほんと、なんていい子なんだろうか。隠したのはこっちだけどこんないい子に辛い想いをさせるなんて…。弟共々不甲斐ない。でも新ちゃんも私も蘭ちゃんがいないとショックで死にそうになるので見捨てないで欲しい。
そう願いながら博士と共に手を繋いで帰っていく蘭ちゃん達を送り出す。まだまだ問題は山積みだがひとまず様子見かと安堵の息を吐く私に、ムクは静かに鼻を鳴らした。
◇
あれから新ちゃんは上手いこと毛利探偵事務所で生活しているらしく、博士から受け取った発明品を駆使して事件解決もしているらしかった。
隠す気あるのかと呆れたけどバレてはいないらしい。毛利さんはワンチャン騙せそうだけど蘭ちゃんも騙せているのがすごいな。変声期を使って電話したのもあるだろうけど、あの子の演技力の高さにはいっそ恐怖すら覚える。あと忍耐力も。普通好きな子とひとつ屋根の下って結構ドキドキ体験だと思うんだけど…。
と、弟の事を心配しているがそれよりも問題なのが私の方だ。
新ちゃんの事を誰かに聞かれたら多分私は誤魔化せない。他人を騙す演技力もピンチを切り抜ける頭脳もない、しかもハンデのある私は格好の餌だ。全くもって自分が嫌になる。
「ナポレオンの言葉が身に染みるわ…。」
ボソリと呟いた言葉がリビングの空気に溶けていく。はぁと1度ため息をついて気分転換に曲でもかけようかとした時、突然インターホンが鳴り響いた。
「誰…?」
ピクリと反応したムクに待つよう指示を出し玄関へと向かう。今日誰かが訪問してくる予定はなく、もし蘭ちゃんみたいに私と面識なある人なら事前に連絡をしてくれる。何かと話題を集める家族だからこそ突然の訪問に警戒心は跳ね上がった。
恐る恐る備え付けのテレビドアホンを触る。これは博士が改良してくれたもので、玄関にいる人の性別や背格好、持ち物などを音声で教えてくれる優れものだ。勿論外には聞こえない。
対人センサーが反応し数秒後に優しい女の人の声が聞こえた。スーツを着た成人男性、しかも手ぶら。怪しすぎる。少し怖くて居留守でもしようかと考えるも、もしかしたら父の知り合いかもしれないと思い通話のボタンを押した。
「はい。」
『突然申し訳ありません。私、警察庁の風見と申します。』
記憶にはない名前だ。家族からも聞いたことがない。怖すぎる…。変な汗が流れ始めたが、いきなり切る訳にもいかないのでとりあえず警察と一番関わりのある父の不在を告げる。
「生憎ですが父は今おりません。わざわざ御足労頂いたのに申し訳ありません。」
『いえ、工藤かなえさん。貴女に用があって来ました。』
「…私?」
『はい。緑川唯からの伝言です。』
ひゅっと息が詰まった。
心臓がいやに大きな音を立てる。
直ぐにあがってもらおうとした私に彼はインターホン越しで構わないと言い、ならばと一音も聞き逃さないように耳をそばだてた。
『"全てが終わったら、俺のおすすめの店で君が書いた小説を見せてくれ"、と。』
ただそれだけを伝えそれではと去っていく彼に何も返せずその場にへたりこんだ。考えなければいけないことは色々あるのに出来たのは口元に手を添えるだけだった。
「ふ、うっ…っ、」
小説の話をしたのはお兄さんにだけだ。まだ2人だけの秘密だった。それなのにあの風見と言う人は知っていた。それはつまり。
信じられないくらい熱い息が掌にかかる。
良かった。生きていた。
頭を駆け巡る疑問は尽きないが、それでも胸の締めつけは解かれていく。溢れ出す涙が頬を濡らし始めその声にムクが心配して来てくれても、私はただただ顔を覆って泣いていた。
「えっと、この子のお父さんがコナン・ドイルのファンで!変わってるけどいい名前でしょ?」
大分無理矢理ではあるがコナンとつく名前でおかしくなさそうな理由を上げる。幸い蘭ちゃんは特に気に留めず納得してくれたようでほっと胸を撫で下ろした。それより新ちゃんの事が気になるみたいで心配そうに今日あったことを説明してくれた。ほんと、女の子を置いて怪しい人を追いかけるとか…。うちの愚弟は…。
「やっぱり警察に言った方がいいんじゃないかなって…。」
「う、う〜ん。そんな心配しなくても大丈夫じゃないかな?」
「…かなえさん、いつもなら凄く心配するのに今日はどうしたんですか?」
ピシリと身体が固まる。
まずい。見えなくとも蘭ちゃんが怪しんでるのが分かる。本日何度目かのピンチにどう説明しようかと脳をフル回転させていると、おおそうだと博士が蘭ちゃんの名前を呼んだ。
「すまんが少しの間、この子を君の家で預かってくれんか?」
「え?」
「いやー、この子の親が事故で入院したんで、ワシが世話を頼まれとったんじゃが、ワシも一人暮らしでなにかと大変じゃし、かと言ってかなえ君に頼むのものー…。」
これまた苦しい言い訳だが本当の事を言う訳にはいかないし、ここは博士の言葉に乗るしかない。それに博士の言う通り蘭ちゃんのお父さんは元探偵だし、住むには安全でしかも情報も入ってくるはずだ。私や博士といるより断然好条件だろう。…まぁ好きな子の家で寝泊まりするのは、結構、いやかなりしんどいだろうけど…。
しかし背に腹はかえられないと私も手を合わせて頼むと蘭ちゃんは分かりましたと、新ちゃんを引き取ってくれることとなった。ほんと、なんていい子なんだろうか。隠したのはこっちだけどこんないい子に辛い想いをさせるなんて…。弟共々不甲斐ない。でも新ちゃんも私も蘭ちゃんがいないとショックで死にそうになるので見捨てないで欲しい。
そう願いながら博士と共に手を繋いで帰っていく蘭ちゃん達を送り出す。まだまだ問題は山積みだがひとまず様子見かと安堵の息を吐く私に、ムクは静かに鼻を鳴らした。
◇
あれから新ちゃんは上手いこと毛利探偵事務所で生活しているらしく、博士から受け取った発明品を駆使して事件解決もしているらしかった。
隠す気あるのかと呆れたけどバレてはいないらしい。毛利さんはワンチャン騙せそうだけど蘭ちゃんも騙せているのがすごいな。変声期を使って電話したのもあるだろうけど、あの子の演技力の高さにはいっそ恐怖すら覚える。あと忍耐力も。普通好きな子とひとつ屋根の下って結構ドキドキ体験だと思うんだけど…。
と、弟の事を心配しているがそれよりも問題なのが私の方だ。
新ちゃんの事を誰かに聞かれたら多分私は誤魔化せない。他人を騙す演技力もピンチを切り抜ける頭脳もない、しかもハンデのある私は格好の餌だ。全くもって自分が嫌になる。
「ナポレオンの言葉が身に染みるわ…。」
ボソリと呟いた言葉がリビングの空気に溶けていく。はぁと1度ため息をついて気分転換に曲でもかけようかとした時、突然インターホンが鳴り響いた。
「誰…?」
ピクリと反応したムクに待つよう指示を出し玄関へと向かう。今日誰かが訪問してくる予定はなく、もし蘭ちゃんみたいに私と面識なある人なら事前に連絡をしてくれる。何かと話題を集める家族だからこそ突然の訪問に警戒心は跳ね上がった。
恐る恐る備え付けのテレビドアホンを触る。これは博士が改良してくれたもので、玄関にいる人の性別や背格好、持ち物などを音声で教えてくれる優れものだ。勿論外には聞こえない。
対人センサーが反応し数秒後に優しい女の人の声が聞こえた。スーツを着た成人男性、しかも手ぶら。怪しすぎる。少し怖くて居留守でもしようかと考えるも、もしかしたら父の知り合いかもしれないと思い通話のボタンを押した。
「はい。」
『突然申し訳ありません。私、警察庁の風見と申します。』
記憶にはない名前だ。家族からも聞いたことがない。怖すぎる…。変な汗が流れ始めたが、いきなり切る訳にもいかないのでとりあえず警察と一番関わりのある父の不在を告げる。
「生憎ですが父は今おりません。わざわざ御足労頂いたのに申し訳ありません。」
『いえ、工藤かなえさん。貴女に用があって来ました。』
「…私?」
『はい。緑川唯からの伝言です。』
ひゅっと息が詰まった。
心臓がいやに大きな音を立てる。
直ぐにあがってもらおうとした私に彼はインターホン越しで構わないと言い、ならばと一音も聞き逃さないように耳をそばだてた。
『"全てが終わったら、俺のおすすめの店で君が書いた小説を見せてくれ"、と。』
ただそれだけを伝えそれではと去っていく彼に何も返せずその場にへたりこんだ。考えなければいけないことは色々あるのに出来たのは口元に手を添えるだけだった。
「ふ、うっ…っ、」
小説の話をしたのはお兄さんにだけだ。まだ2人だけの秘密だった。それなのにあの風見と言う人は知っていた。それはつまり。
信じられないくらい熱い息が掌にかかる。
良かった。生きていた。
頭を駆け巡る疑問は尽きないが、それでも胸の締めつけは解かれていく。溢れ出す涙が頬を濡らし始めその声にムクが心配して来てくれても、私はただただ顔を覆って泣いていた。
