工藤さん家の娘さんは目が見えない。
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「今日はありがとうございました。」
松田さんの腕に掴まりながら反対の手でムクのリードを握る。
日用品が切れてしまい補充のためデパートへ買い物に出掛けようと思ったはいいが、家からデパートまではそこそこの距離があり荷物を持って帰るには少々不安があった。あの地下にあるプリンも食べたかったが仕方ないと今日は諦めて近くのスーパーに行こうとした時、たまたまタイミングよく松田さんから電話がきてそのまま付き添いをしてくれると言ってくれた。
母も父も海外に行ってしまい、新ちゃんも日中は高校なので有難く松田さんからの提案に頷いた私は、お目当ての物が手に入りホクホクとしながらお礼を言う。
「荷物まで持っていただいて。」
「俺もオフだったからな。荷物も構わねぇよ。」
「なら、お礼と言ってはなんですがこの後お暇なら一緒に買ったお菓子食べません?ここの甘さ控えめですし、すっごく美味しいんですよ。」
「いいな。ハギに写真送ってやろ。」
何とも意地の悪い言い方に笑いが漏れる。萩原さんは今日から連勤だと聞いているので羨ましがるのが容易に想像できた。
「おぉい!松田ぁ!!」
さて家には何の飲み物があったかなと思い出していると前の方から大きな声が聞こえた。この声は確か…。
「伊達じゃねぇか。」
あ、そうそう伊達さんだ。ずっと前に父と協力して犯人を捕まえていた刑事さん。松田さんとも知り合いだったのか。
一度立ち止まるぞと声がかかりムクに指示を出して足を止める。こちらから行かずあちらから来てくれるらしい。こう言う細やかな気遣いを感じると流石周りに目がいく刑事さんだなと思う。ゆったりとした足音が近づいてくるのを耳が拾いそのまま正面で止まった。2人いるから仕事中かな。
「っと、嬢ちゃんだったか。…なんだ松田。お前も隅に置けねぇな。」
「うるせぇ、引率だ引率。」
引率…。大変気になる発言に掴んでいる手に力を込めるも松田さんはクツクツと笑うだけで全くこたえていない。それどころか態と腕に力を入れて筋肉アピールまでしてくる。くそっ、やっぱり蘭ちゃんに鍛えてもらうしかないのか。そんな風に内心悔しがっているとあの、と控えめな声が聞こえてきた。
「伊達さん、この方達は…。」
「お、そうか。高木は会ったことなかったな。こいつは俺の同期の松田陣平。あの観覧車の爆弾処理したのがこいつだ。んで、こっちのお嬢さんは工藤かなえちゃん。あの工藤優作のご息女なんだぜ?」
「どーも。」
「初めまして。」
そう言って軽く頭を下げると高木さんも慌てたように名乗ってくれた。この慣れてない感じは新米刑事なのだろう。思った通りその後伊達さんは自分が教育係であることや今は徹夜明けの仕事帰りであることを話してくれた。高木さんと逮捕したのが嬉しかったのだろう、自慢げに話す声音に微笑ましくなる。なら長く話していても悪かろうとそろそろ切り上げるため声をかけようとした時、ふと、ムクの空気が変わった。そわっとした雰囲気はトイレじゃない、何か人間には聞こえない音を拾っている時だ。
「あの、」
何となく嫌な予感がして松田さんから手を離し伊達さんの腕を引こうとしたその直後、とてつもなく大きな衝突音が響き渡った。
驚いて固まる身体を何かに包まれる。強くなったタバコの匂いと頬に擦れた布の感覚に抱き締められていると分かり松田さんの腕にしがみついた。
「かなえ事故だ。あまり距離は離れてねぇがこっちに被害が来ることはねぇ。大丈夫だ。」
「はい…。」
「伊達さん!」
「わーってるよ!松田、あとは俺たちがやっとくから嬢ちゃんを頼んだ。」
こちらの返事も待たずに駆け出す足音に今のは車がどこかにぶつかった衝撃かと身震いする。ムクが感じとっていたのはこれか…。幸いリードから手は離していないしムクが心配そうに足元に擦り寄る感覚もあるので無事だと分かるが、万一を考えると心臓が鳴るのがはやくなった。そんな私の固まる腕を2、3度タップした松田さんにはっとして身体を離しす。守ろうとしてくれたことに多少の照れを感じながら感謝を述べてずっと掴まったままだった手を離した。
「とりあえず、今から警察が来るからお茶はまた今度だな。」
「はい。でも、事情聴取とか私見えてなかったですけど。」
「俺もいるしそんな詳しくは聞かれねぇよ。…しかし、あれだな。弟と一緒でお前も呼ぶ方かもな。」
「どう言う意味ですか。」
新ちゃんは自分から首突っ込んでいて私は完全に偶然巻き込まれているだけだ。…あれ、これが呼んでるってことか?
分からなくなって眉を寄せた私に松田さんは変わらずクツクツと笑っていた。緊張したのを和らげるためとは言え釈然としない言い草に、松田さんの腕をまた掴み力を入れた。服、皺になってしまえ。
松田さんの腕に掴まりながら反対の手でムクのリードを握る。
日用品が切れてしまい補充のためデパートへ買い物に出掛けようと思ったはいいが、家からデパートまではそこそこの距離があり荷物を持って帰るには少々不安があった。あの地下にあるプリンも食べたかったが仕方ないと今日は諦めて近くのスーパーに行こうとした時、たまたまタイミングよく松田さんから電話がきてそのまま付き添いをしてくれると言ってくれた。
母も父も海外に行ってしまい、新ちゃんも日中は高校なので有難く松田さんからの提案に頷いた私は、お目当ての物が手に入りホクホクとしながらお礼を言う。
「荷物まで持っていただいて。」
「俺もオフだったからな。荷物も構わねぇよ。」
「なら、お礼と言ってはなんですがこの後お暇なら一緒に買ったお菓子食べません?ここの甘さ控えめですし、すっごく美味しいんですよ。」
「いいな。ハギに写真送ってやろ。」
何とも意地の悪い言い方に笑いが漏れる。萩原さんは今日から連勤だと聞いているので羨ましがるのが容易に想像できた。
「おぉい!松田ぁ!!」
さて家には何の飲み物があったかなと思い出していると前の方から大きな声が聞こえた。この声は確か…。
「伊達じゃねぇか。」
あ、そうそう伊達さんだ。ずっと前に父と協力して犯人を捕まえていた刑事さん。松田さんとも知り合いだったのか。
一度立ち止まるぞと声がかかりムクに指示を出して足を止める。こちらから行かずあちらから来てくれるらしい。こう言う細やかな気遣いを感じると流石周りに目がいく刑事さんだなと思う。ゆったりとした足音が近づいてくるのを耳が拾いそのまま正面で止まった。2人いるから仕事中かな。
「っと、嬢ちゃんだったか。…なんだ松田。お前も隅に置けねぇな。」
「うるせぇ、引率だ引率。」
引率…。大変気になる発言に掴んでいる手に力を込めるも松田さんはクツクツと笑うだけで全くこたえていない。それどころか態と腕に力を入れて筋肉アピールまでしてくる。くそっ、やっぱり蘭ちゃんに鍛えてもらうしかないのか。そんな風に内心悔しがっているとあの、と控えめな声が聞こえてきた。
「伊達さん、この方達は…。」
「お、そうか。高木は会ったことなかったな。こいつは俺の同期の松田陣平。あの観覧車の爆弾処理したのがこいつだ。んで、こっちのお嬢さんは工藤かなえちゃん。あの工藤優作のご息女なんだぜ?」
「どーも。」
「初めまして。」
そう言って軽く頭を下げると高木さんも慌てたように名乗ってくれた。この慣れてない感じは新米刑事なのだろう。思った通りその後伊達さんは自分が教育係であることや今は徹夜明けの仕事帰りであることを話してくれた。高木さんと逮捕したのが嬉しかったのだろう、自慢げに話す声音に微笑ましくなる。なら長く話していても悪かろうとそろそろ切り上げるため声をかけようとした時、ふと、ムクの空気が変わった。そわっとした雰囲気はトイレじゃない、何か人間には聞こえない音を拾っている時だ。
「あの、」
何となく嫌な予感がして松田さんから手を離し伊達さんの腕を引こうとしたその直後、とてつもなく大きな衝突音が響き渡った。
驚いて固まる身体を何かに包まれる。強くなったタバコの匂いと頬に擦れた布の感覚に抱き締められていると分かり松田さんの腕にしがみついた。
「かなえ事故だ。あまり距離は離れてねぇがこっちに被害が来ることはねぇ。大丈夫だ。」
「はい…。」
「伊達さん!」
「わーってるよ!松田、あとは俺たちがやっとくから嬢ちゃんを頼んだ。」
こちらの返事も待たずに駆け出す足音に今のは車がどこかにぶつかった衝撃かと身震いする。ムクが感じとっていたのはこれか…。幸いリードから手は離していないしムクが心配そうに足元に擦り寄る感覚もあるので無事だと分かるが、万一を考えると心臓が鳴るのがはやくなった。そんな私の固まる腕を2、3度タップした松田さんにはっとして身体を離しす。守ろうとしてくれたことに多少の照れを感じながら感謝を述べてずっと掴まったままだった手を離した。
「とりあえず、今から警察が来るからお茶はまた今度だな。」
「はい。でも、事情聴取とか私見えてなかったですけど。」
「俺もいるしそんな詳しくは聞かれねぇよ。…しかし、あれだな。弟と一緒でお前も呼ぶ方かもな。」
「どう言う意味ですか。」
新ちゃんは自分から首突っ込んでいて私は完全に偶然巻き込まれているだけだ。…あれ、これが呼んでるってことか?
分からなくなって眉を寄せた私に松田さんは変わらずクツクツと笑っていた。緊張したのを和らげるためとは言え釈然としない言い草に、松田さんの腕をまた掴み力を入れた。服、皺になってしまえ。