工藤さん家の娘さんは目が見えない。
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「いやー、お手柄だったよ!」
豪快な声に姉弟揃って苦笑を漏らす。警視庁の、どこかは分からないが一室で私達は事情聴取されていた。
あの後すぐに警察が病院へ来て爆弾を解体した。大事には至らずほっと胸をなでおろした私に、今回爆弾を処理したのはやはり萩原さんだと他の警察の人が教えてくれた。
萩原さんとの出会いは色々衝撃的で今でも思い出すと少し緊張する。
その日私は唯一と言ってもいい友人の家であるマンションに遊びに行っていた。両親が共働きで家にはその子と私しかおらず、どのような事をしたかは忘れたが兎に角、お菓子を買いに行くとその子が出掛けるまで私達は一緒に遊んでいた。
その子がいなくなり手持ち無沙汰になった私はその頃まだムクもいなかったためぼーっと帰りを待っていた。
テレビから流れる教育番組のお姉さんの声がキャラクターが映っているであろう声優へと変わった瞬間、突然玄関の戸が力強く叩かれた。
驚いてか細く悲鳴をこぼした私に扉の向こう側の人は必死に開けてくれと叫んでいる。人の家とか目が見えないからとか色々開けてはいけない理由はあったのだが、その人のあまりの必死さに怖気付き心臓を大きく鳴らしながら鍵を開けた。
「本当にいた!ごめんっ、話は後でするからっ!」
「え、え、え?!」
一瞬のうちに抱えあげられた私を連れてその人は全速力で駆けていった。胸に抱えられた所謂お姫様抱っこ状態だったため風の抵抗は感じなかったも耳にはびゅんびゅんと空を切る音が響く。何が何だか分からないまま、それでも振り落とされまいと必死にしがみつくもその人が着ていた硬いベストのような物はつるつると滑り、結局行き場のない両手は耳を塞ぐしかなかった。
怖いよな、とか、もうちょっと、とか、助ける、とかそんな言葉が断片的に聞こえた気がする。というのもあまりの急展開に途中で意識が飛び気づいた時には病院のベットの上だったため殆ど覚えていないのだ。
泣きながら飛びついてきた友人と心配して仕事から駆けつけてくれた父の話によると、何でもマンション内に爆弾があったそうで。民間の避難をしている最中に帰ってきた友人が私の事を警察に伝え、救出するにしても今からでは入れないため爆弾処理中だった人が手を止めて来てくれたらしい。
成程、ならその萩原研二さんが私を抱えてくれた人なのかと納得する。いくら成人男性で鍛えているからと言って15の子供を抱えるとは大変だったろうと父の付き添いの元、感謝を述べに行くと避難命令を聞いていなかったのかと怒られた。まぁこの事がきっかけで盲導犬を飼うことにしたので、あながち悪いだけの思い出ではないのだが、抱えた時のあまりの無抵抗さに萩原さんの中での私は随分と危機感の薄い子供になっているらしく、何かあればすぐ連絡するようにと言われていた。まさかこんな形で役に立つとは思いもよらなかったけれど。
警察の方が終わりを告げ私と新ちゃんはその部屋を後にする。家族には連絡がいっているらしくもうすぐ父が迎えに来るそうだ。
2人で休憩所のソファに移動し自販機で買った飲み物に口をつけていると、聞き知った足音にふと顔を上げた。
「かなえちゃん。」
「やっぱり萩原さん!」
ぎゅっと強くなった新ちゃんの握る手を優しく握り返し安心させ立ち上がろうとするも、より速くこちらに近づいてきた萩原さんはいつかと同じ大きな手で私の頭を犬のように掻き乱した。
「怪我なくてよかったぁ。本当にありがとう。」
「わっ!」
痛くないが突然の事で思わず声が出る。伸ばし始めた毛先が頬や目に当たりくすぐったいもこんなにテンションが高い萩原さんは初めて見るので苦笑しながら甘んじて受け入れていた。
暫くすると落ち着いたのか手の動きも1、2度髪を撫でつけるだけになり離れていった。自分でも指先で髪を空いて整えたあと未だに強く握っている新ちゃんに向き直りニコリと微笑む。
「新ちゃんこの方が前に話した爆弾処理の萩原研二さん。で、こちらが弟の新一です。」
「どうも〜。」
「………。」
珍しい、新ちゃんが喋らない。いつもならきちんと挨拶するし、なんなら事件のことも根掘り葉掘り聞き出すのに今日はやや不機嫌ですらある。さっきまでは何ともなかったけどこれは、もしや…。
「お姉ちゃん盗られて拗ねちゃった?」
「あ、やっぱりそう思います?」
「はぁ?!んなわけねぇだろバーロー!!」
若干裏返った声が結構な大きさで響いた。というかまたバーローって…。キザな口調は両親譲りだがこの口癖は誰の影響だろうか。帰ったら注意しようと心に決めたも萩原さんは特に気にした様子もなく言葉を続けた。
「分かる分かる。俺も姉ちゃんに彼氏できた時何かモヤモヤしたもん。」
「か、か、か、か、かれ、かれ?!」
「萩原さん、お姉さんおられるんですね。」
「そうだよ〜。意外?」
「頼りになるからてっきりお兄さんかと。」
「嬉しこと言ってくれるね。」
「姉さん、コイツと付き合ってるの??!!」
2回目の大声に首を傾げる。はてなんの話しだろうか。もし先程のじゃれ合いを見てそう思っているのなら誤解だ。萩原さんのこの距離は妹に対するみたいなものだし、正直からかい半分もある。前はそれこそ照れもしていたがもう慣れてしまった。だから空気感もそんな甘ったるものではないのだが…。
尽きぬ疑問にハテナマークを頭上に浮かべていれると、いきなり肩を抱かれ鼻腔いっぱいに萩原さん愛用のタバコの匂いが広がる。
「今は違うけど…。将来俺を兄さんって呼んだりするかもな。」
「っっっっ絶対認めねーからな!!」
はははと軽やかな笑い声に負けじと応戦する新ちゃんの大声に堪らず口角が上がる。
おませな弟の反抗期はまだまだ先なようだ。
豪快な声に姉弟揃って苦笑を漏らす。警視庁の、どこかは分からないが一室で私達は事情聴取されていた。
あの後すぐに警察が病院へ来て爆弾を解体した。大事には至らずほっと胸をなでおろした私に、今回爆弾を処理したのはやはり萩原さんだと他の警察の人が教えてくれた。
萩原さんとの出会いは色々衝撃的で今でも思い出すと少し緊張する。
その日私は唯一と言ってもいい友人の家であるマンションに遊びに行っていた。両親が共働きで家にはその子と私しかおらず、どのような事をしたかは忘れたが兎に角、お菓子を買いに行くとその子が出掛けるまで私達は一緒に遊んでいた。
その子がいなくなり手持ち無沙汰になった私はその頃まだムクもいなかったためぼーっと帰りを待っていた。
テレビから流れる教育番組のお姉さんの声がキャラクターが映っているであろう声優へと変わった瞬間、突然玄関の戸が力強く叩かれた。
驚いてか細く悲鳴をこぼした私に扉の向こう側の人は必死に開けてくれと叫んでいる。人の家とか目が見えないからとか色々開けてはいけない理由はあったのだが、その人のあまりの必死さに怖気付き心臓を大きく鳴らしながら鍵を開けた。
「本当にいた!ごめんっ、話は後でするからっ!」
「え、え、え?!」
一瞬のうちに抱えあげられた私を連れてその人は全速力で駆けていった。胸に抱えられた所謂お姫様抱っこ状態だったため風の抵抗は感じなかったも耳にはびゅんびゅんと空を切る音が響く。何が何だか分からないまま、それでも振り落とされまいと必死にしがみつくもその人が着ていた硬いベストのような物はつるつると滑り、結局行き場のない両手は耳を塞ぐしかなかった。
怖いよな、とか、もうちょっと、とか、助ける、とかそんな言葉が断片的に聞こえた気がする。というのもあまりの急展開に途中で意識が飛び気づいた時には病院のベットの上だったため殆ど覚えていないのだ。
泣きながら飛びついてきた友人と心配して仕事から駆けつけてくれた父の話によると、何でもマンション内に爆弾があったそうで。民間の避難をしている最中に帰ってきた友人が私の事を警察に伝え、救出するにしても今からでは入れないため爆弾処理中だった人が手を止めて来てくれたらしい。
成程、ならその萩原研二さんが私を抱えてくれた人なのかと納得する。いくら成人男性で鍛えているからと言って15の子供を抱えるとは大変だったろうと父の付き添いの元、感謝を述べに行くと避難命令を聞いていなかったのかと怒られた。まぁこの事がきっかけで盲導犬を飼うことにしたので、あながち悪いだけの思い出ではないのだが、抱えた時のあまりの無抵抗さに萩原さんの中での私は随分と危機感の薄い子供になっているらしく、何かあればすぐ連絡するようにと言われていた。まさかこんな形で役に立つとは思いもよらなかったけれど。
警察の方が終わりを告げ私と新ちゃんはその部屋を後にする。家族には連絡がいっているらしくもうすぐ父が迎えに来るそうだ。
2人で休憩所のソファに移動し自販機で買った飲み物に口をつけていると、聞き知った足音にふと顔を上げた。
「かなえちゃん。」
「やっぱり萩原さん!」
ぎゅっと強くなった新ちゃんの握る手を優しく握り返し安心させ立ち上がろうとするも、より速くこちらに近づいてきた萩原さんはいつかと同じ大きな手で私の頭を犬のように掻き乱した。
「怪我なくてよかったぁ。本当にありがとう。」
「わっ!」
痛くないが突然の事で思わず声が出る。伸ばし始めた毛先が頬や目に当たりくすぐったいもこんなにテンションが高い萩原さんは初めて見るので苦笑しながら甘んじて受け入れていた。
暫くすると落ち着いたのか手の動きも1、2度髪を撫でつけるだけになり離れていった。自分でも指先で髪を空いて整えたあと未だに強く握っている新ちゃんに向き直りニコリと微笑む。
「新ちゃんこの方が前に話した爆弾処理の萩原研二さん。で、こちらが弟の新一です。」
「どうも〜。」
「………。」
珍しい、新ちゃんが喋らない。いつもならきちんと挨拶するし、なんなら事件のことも根掘り葉掘り聞き出すのに今日はやや不機嫌ですらある。さっきまでは何ともなかったけどこれは、もしや…。
「お姉ちゃん盗られて拗ねちゃった?」
「あ、やっぱりそう思います?」
「はぁ?!んなわけねぇだろバーロー!!」
若干裏返った声が結構な大きさで響いた。というかまたバーローって…。キザな口調は両親譲りだがこの口癖は誰の影響だろうか。帰ったら注意しようと心に決めたも萩原さんは特に気にした様子もなく言葉を続けた。
「分かる分かる。俺も姉ちゃんに彼氏できた時何かモヤモヤしたもん。」
「か、か、か、か、かれ、かれ?!」
「萩原さん、お姉さんおられるんですね。」
「そうだよ〜。意外?」
「頼りになるからてっきりお兄さんかと。」
「嬉しこと言ってくれるね。」
「姉さん、コイツと付き合ってるの??!!」
2回目の大声に首を傾げる。はてなんの話しだろうか。もし先程のじゃれ合いを見てそう思っているのなら誤解だ。萩原さんのこの距離は妹に対するみたいなものだし、正直からかい半分もある。前はそれこそ照れもしていたがもう慣れてしまった。だから空気感もそんな甘ったるものではないのだが…。
尽きぬ疑問にハテナマークを頭上に浮かべていれると、いきなり肩を抱かれ鼻腔いっぱいに萩原さん愛用のタバコの匂いが広がる。
「今は違うけど…。将来俺を兄さんって呼んだりするかもな。」
「っっっっ絶対認めねーからな!!」
はははと軽やかな笑い声に負けじと応戦する新ちゃんの大声に堪らず口角が上がる。
おませな弟の反抗期はまだまだ先なようだ。