工藤さん家の娘さんは目が見えない。
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お兄さん会えなくなってからはや数週間。
連絡が取れなくなるのは何となく予想が着いていたがまさか送り先が無くなるとは思わなかった。アドレスを変えたのかそもそもが壊れたのかは分からないが受信不可の文章は溜まっていく一方だ。
待っているとは言ったも安否すら分からないで待つのは辛い。病は気からというように、そんな風に毎日気落ちして引きこもっていたせいか体調を崩してしまった。
「新ちゃん、お姉ちゃんをお願いね。」
「何かあったら直ぐに連絡しなさい。」
「わーってるよ。」
ムクの体調もあまり良くないため病院への付き添いは弟の新ちゃんに頼んだ。本当は1人でも大丈夫だったが、多忙な両親が仕事を後回しにしてまで着いて来ようとするので無理言って同行してもらうことにしたのだ。ごめんね、ホームズの続き読むって言ってたのにね。
「ならそろそろ行くね。」
「本当に何かあったら直ぐに連絡してね。何かなくとも連絡して。」
「新一、しっかり守るんだぞ。」
「はいはい。」
行ってきますと声を揃えて玄関を出る。新ちゃんと手を握りまずはバス停へと向かった。
「たく、母さんも父さんも心配し過ぎなんだよ。」
「仕方ないよ。2人きりで出かけることなんてあんまりなかったから気分ははじめてのおつかいなんじゃないかな?」
「はぁ?俺はもう子供じゃねーよ。」
「10代はまだ子供かなぁ。」
次は右な、とぶっきらぼうな声が前よりも高い位置から聞こえる。まぁ私の方がまだ身長は高いけれどそれでも少しづつ成長していくのを肌で感じ、いつか姉さんと外で手を繋ぎたくない、なんて言われたらどうしようかと想像した。なんだかむず痒くてちょっと嬉しい。せいぜいからかってやろうと先導する弟の力強さに笑いをこぼした。
「ありがとうございました。」
先生がいるであろう方向に頭を下げ診察室を出る。廊下のソファに座っていた新ちゃんのまだ軽い足音が近づいてきた。
「どうだった?」
「精神面からくるものだって。一応お薬貰った。」
「やっぱり。姉さんただでさえ家から出ないんだからせめて部屋からは出ろよな。」
「あはは。」
「出ろよ。」
とりあえず場所を移動しようかと手を繋ぎ歩き出す。
途中迷惑にならない程度の会話を重ねながら薬品の匂い立ち込める廊下を進んでいると、ふと、騒音に混じり不可思議な音を耳が拾った。
「どうしたの?姉さん。」
「しっ。ちょっとだけ静かにしてて。」
時計に似ているが、少し違う。さっきの診察室の針の音から計算してこの音の間隔はズレている。しかも合間にピッピツと鳴っているのは時計というよりタイマーを彷彿とさせた。
「…新ちゃん、今から言う場所まで案内お願い。」
「わかった。」
音がする方向へと足を出す私がぶつからないよう、逸れないよう必要最低限の声をかける弟は自称とはいえ流石ホームズの弟子を名乗るだけはあって頭の回転がはやい。察しのいい弟のおかげで、あっという間に目的の物がある場所へと辿り着いた。歩いた距離とすれ違っていったものから、多分ナースステーションから近い待合室。病院が意図して置いた物なら別に気にする必要もないが、まぁ一応の確かめで。何もなければそれでいい。
「ここから聞こえたけど…。何かある?」
「ちょっと待って、今探して…!」
何かに気づいたように新ちゃんの手が離れていく。待合室の入口から丁度2時の方向、確か自販機が並んでいたかな、そこからジッパーを下ろす乾いた音が聞こえた。
「爆弾だ!」
「え”っ。」
思わず潰れたような声が出た。え、爆弾って。こんな、え、昼の日中に、そんなことある?突然の事で困惑する私は、はたと弟がその危険物の間近にいることを思い出しすぐさま駆け寄る。
「新ちゃんおいで!危ないから!」
「姉さんこそ危ない!いきなり走らないって約束だろ?!」
「非常事態だから許して!それより速くここから離れて警察に連絡しよう。タイマーの時間はまだ大丈夫だった?」
「うん。電話するだけの時間はあるけど、早い方がいいかもしれない。」
「なら知り合いの連絡先にかけるから新ちゃん、説明お願いね。」
「まかせて。」
やや小走りで待合室から離れ廊下にてスマホのホームボタンを押す。すぐに連絡先が入っているアプリをタップしハ行の所定の位置にある名前に連絡を入れた。
1、2、3。コールが続く。
いつもならこんなにかからないのに今日は長い。次第に募る焦りが苛立ちのようにチクチクと肌を刺す。しっかりと握った手のひらは汗ばんでいて気持ち悪いはずなのに新ちゃんは離さず、時節親指の腹で手の甲を撫でてくれた。
『ごめんかなえちゃん、今は「あの爆弾見つけました!」は?!なんで??!!』
忙しそうに駆ける足音と大人達の大声が電話越しの彼、萩原さんの後ろから聞こえる。それに少しの申し訳なさを感じつつもこちらも急を要するため早口にまくし立てる。
「あの、詳しいことは私には分からないので、見える弟に代わります!」
『え?あ、そっか!わかった??』
大分困らせたみたいだ。イントネーションが上がったり下がったりしている。本当にごめんなさいと心の中で謝りながら新ちゃんにスマホを渡し、一言入れてからナースステーションまで向かった。
連絡が取れなくなるのは何となく予想が着いていたがまさか送り先が無くなるとは思わなかった。アドレスを変えたのかそもそもが壊れたのかは分からないが受信不可の文章は溜まっていく一方だ。
待っているとは言ったも安否すら分からないで待つのは辛い。病は気からというように、そんな風に毎日気落ちして引きこもっていたせいか体調を崩してしまった。
「新ちゃん、お姉ちゃんをお願いね。」
「何かあったら直ぐに連絡しなさい。」
「わーってるよ。」
ムクの体調もあまり良くないため病院への付き添いは弟の新ちゃんに頼んだ。本当は1人でも大丈夫だったが、多忙な両親が仕事を後回しにしてまで着いて来ようとするので無理言って同行してもらうことにしたのだ。ごめんね、ホームズの続き読むって言ってたのにね。
「ならそろそろ行くね。」
「本当に何かあったら直ぐに連絡してね。何かなくとも連絡して。」
「新一、しっかり守るんだぞ。」
「はいはい。」
行ってきますと声を揃えて玄関を出る。新ちゃんと手を握りまずはバス停へと向かった。
「たく、母さんも父さんも心配し過ぎなんだよ。」
「仕方ないよ。2人きりで出かけることなんてあんまりなかったから気分ははじめてのおつかいなんじゃないかな?」
「はぁ?俺はもう子供じゃねーよ。」
「10代はまだ子供かなぁ。」
次は右な、とぶっきらぼうな声が前よりも高い位置から聞こえる。まぁ私の方がまだ身長は高いけれどそれでも少しづつ成長していくのを肌で感じ、いつか姉さんと外で手を繋ぎたくない、なんて言われたらどうしようかと想像した。なんだかむず痒くてちょっと嬉しい。せいぜいからかってやろうと先導する弟の力強さに笑いをこぼした。
「ありがとうございました。」
先生がいるであろう方向に頭を下げ診察室を出る。廊下のソファに座っていた新ちゃんのまだ軽い足音が近づいてきた。
「どうだった?」
「精神面からくるものだって。一応お薬貰った。」
「やっぱり。姉さんただでさえ家から出ないんだからせめて部屋からは出ろよな。」
「あはは。」
「出ろよ。」
とりあえず場所を移動しようかと手を繋ぎ歩き出す。
途中迷惑にならない程度の会話を重ねながら薬品の匂い立ち込める廊下を進んでいると、ふと、騒音に混じり不可思議な音を耳が拾った。
「どうしたの?姉さん。」
「しっ。ちょっとだけ静かにしてて。」
時計に似ているが、少し違う。さっきの診察室の針の音から計算してこの音の間隔はズレている。しかも合間にピッピツと鳴っているのは時計というよりタイマーを彷彿とさせた。
「…新ちゃん、今から言う場所まで案内お願い。」
「わかった。」
音がする方向へと足を出す私がぶつからないよう、逸れないよう必要最低限の声をかける弟は自称とはいえ流石ホームズの弟子を名乗るだけはあって頭の回転がはやい。察しのいい弟のおかげで、あっという間に目的の物がある場所へと辿り着いた。歩いた距離とすれ違っていったものから、多分ナースステーションから近い待合室。病院が意図して置いた物なら別に気にする必要もないが、まぁ一応の確かめで。何もなければそれでいい。
「ここから聞こえたけど…。何かある?」
「ちょっと待って、今探して…!」
何かに気づいたように新ちゃんの手が離れていく。待合室の入口から丁度2時の方向、確か自販機が並んでいたかな、そこからジッパーを下ろす乾いた音が聞こえた。
「爆弾だ!」
「え”っ。」
思わず潰れたような声が出た。え、爆弾って。こんな、え、昼の日中に、そんなことある?突然の事で困惑する私は、はたと弟がその危険物の間近にいることを思い出しすぐさま駆け寄る。
「新ちゃんおいで!危ないから!」
「姉さんこそ危ない!いきなり走らないって約束だろ?!」
「非常事態だから許して!それより速くここから離れて警察に連絡しよう。タイマーの時間はまだ大丈夫だった?」
「うん。電話するだけの時間はあるけど、早い方がいいかもしれない。」
「なら知り合いの連絡先にかけるから新ちゃん、説明お願いね。」
「まかせて。」
やや小走りで待合室から離れ廊下にてスマホのホームボタンを押す。すぐに連絡先が入っているアプリをタップしハ行の所定の位置にある名前に連絡を入れた。
1、2、3。コールが続く。
いつもならこんなにかからないのに今日は長い。次第に募る焦りが苛立ちのようにチクチクと肌を刺す。しっかりと握った手のひらは汗ばんでいて気持ち悪いはずなのに新ちゃんは離さず、時節親指の腹で手の甲を撫でてくれた。
『ごめんかなえちゃん、今は「あの爆弾見つけました!」は?!なんで??!!』
忙しそうに駆ける足音と大人達の大声が電話越しの彼、萩原さんの後ろから聞こえる。それに少しの申し訳なさを感じつつもこちらも急を要するため早口にまくし立てる。
「あの、詳しいことは私には分からないので、見える弟に代わります!」
『え?あ、そっか!わかった??』
大分困らせたみたいだ。イントネーションが上がったり下がったりしている。本当にごめんなさいと心の中で謝りながら新ちゃんにスマホを渡し、一言入れてからナースステーションまで向かった。