工藤さん家の娘さんは目が見えない。
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母が用意したタクシーを使い米花ホテルへと着いた私は、予め教えて貰っていた部屋まで向かうと意を決してドアをノックした。直ぐに聞こえた明るい母の声に心臓がバクバクと音を立てる。
ここに来るまでに何回も考えたけれど、やっぱり現状を打破できる案は出なかった。それどころかどんどん悪い考えばかりが頭を巡り始め、タクシーを使ったのにどっと疲れてしまった。
それが顔に出ていたのだろう、母はドアを開けるなり慌てた様子で私を室内に招き入れソファへと座らせた。
「かなえちゃん大丈夫?やっぱり迎えに行った方がよかった?」
「大丈夫…、ちょっと吐きそうなだけだから…。」
「そりゃいかん!何か薬はなかったかの。」
上着だろうか。バサバサと何かを漁る音に薬を探しているのだと分かり大丈夫だと手で制した。ただの一過性のものだ、阿笠博士に薬を貰うほどではない。
…、阿笠博士?
「なんで?!」
「阿笠博士もこの悪巧みに加担してたからだよ。」
「えっ?!」
隣から聞こえた新ちゃんの声に慌てて顔を向けた。と言っても顔は見えないわけだが、それでもとてつもなく不機嫌なのは伝わってくる。なんでも博士は前に父と母に新ちゃんの事情を伝えていたらしく、今回は全て知っていて帰国したらしいのだった。
「なら私も騙されてたってこと…?」
「そー言うこと。…てか、オレはいいけど姉さんはやめろよな。顔色すげー悪かったぞ。」
「今回はかなえにもお灸を据えるつもりだったからね。…さて、2人とも。」
父の声に途端に背筋が伸びる。きた。
「危険なのは十分分かっただろう?もし父さん達が例の男達だったら今頃新一もかなえもあの世行きだ。だから2人共、危険な探偵ごっこはやめて父さん達とのんびり外国で暮らそう。」
父の声は明るかった。けれど内容と隠しきれない真剣さにぐっと喉が詰まる。そうだ、新ちゃんでさえ危なかったのに私がいても足を引っ張るだけ。ならさっさとアメリカに行った方が安全なのは分かっている。分かっているが、
「これはオレの事件だ!オレが解く!!父さん達は手を出すな!!それに…オレはまだここを、離れるわけにはいかねーんだ!!」
「ごめん、お父さん。私も残りたい。残ってやりたいことがあるの。」
「新一、かなえ…。」
母が私達の名を呼ぶ。その声音に胸が押しつぶされそうになるも私は顔を下げなかった。
両親の心情を分からないわけじゃない。けれど私は日本に残りたい。今まで助けてくれた新ちゃんの力にもなりたいし、残ってお兄さんのことを探したい。それに、やっと松田さんと萩原さんとしっかりとした友達になれたのだ。少しづつだけど、私は確かに前を向けているのだ。
「だからお父さんお母さん、お願いします。見守っていて下さい。」
そう言って頭を下げると、頭上からひとつ、大きなため息が聞こえポン、と頭に父の手が乗った。
「今度からはちゃんと、何かあれば直ぐに連絡するんだぞ。」
「っ、ありがとう!」
父の言葉にホッと胸を撫で下ろす。よかった、ひとまず安心だ。そんな私の隣では新ちゃんが父に早速からかわれている。それに苦笑していると、ふと誰かが隣へと腰掛けた気配がした。そしてそのま手を握られる。母だ。
「かなえちゃん、無茶したら駄目よ。お母さんとの約束ね。」
「うん。お母さんもありがとう、大好き。」
「私もよ。ずっと愛してる。」
力強く抱き締め合う。
頭を撫でられる感覚を噛み締めながら、暫くの間母の腕の中で甘えていた。
父と母はそのまま飛行機の時間があると言って行ってしまい、私と新ちゃんは博士の車に乗せてもらった。
後部座席で2人、ゆらゆらと揺られながらシートに身体を沈める。博士も疲れたのだろう。車内はとても静かだ。
「ごめんね、新ちゃん。あとありがとう。」
「いきなり何だよ?」
私の謝罪に新ちゃんが怪訝そうにする。
いくら父と母が分かっていても私が上手く言い訳も嘘も付けず新ちゃんを庇えなかったのは事実だし、ホテルの時なんてそんな私を責めるでもなく体調の心配までしてくれた。姉としては中々格好悪い。
「今回は芝居だったから良かったけど…。お姉ちゃん、もうちょっとしっかりするね。」
「バーロー。姉さんはあんま首突っ込まなくていーんだよ。それより、」
新ちゃんはそこまで言うと、心底意地悪そうな声音で続けた。
「このままやられっぱなしには出来ねぇよ。父さん達に仕返ししよーぜ。」
「えぇ〜。」
その後嬉々として色んな雑誌社に連絡する新ちゃんに私と博士は苦笑する。
まぁ何はともあれ一件落着だと、困っているであろう父の顔を思い笑いが零れた。
ここに来るまでに何回も考えたけれど、やっぱり現状を打破できる案は出なかった。それどころかどんどん悪い考えばかりが頭を巡り始め、タクシーを使ったのにどっと疲れてしまった。
それが顔に出ていたのだろう、母はドアを開けるなり慌てた様子で私を室内に招き入れソファへと座らせた。
「かなえちゃん大丈夫?やっぱり迎えに行った方がよかった?」
「大丈夫…、ちょっと吐きそうなだけだから…。」
「そりゃいかん!何か薬はなかったかの。」
上着だろうか。バサバサと何かを漁る音に薬を探しているのだと分かり大丈夫だと手で制した。ただの一過性のものだ、阿笠博士に薬を貰うほどではない。
…、阿笠博士?
「なんで?!」
「阿笠博士もこの悪巧みに加担してたからだよ。」
「えっ?!」
隣から聞こえた新ちゃんの声に慌てて顔を向けた。と言っても顔は見えないわけだが、それでもとてつもなく不機嫌なのは伝わってくる。なんでも博士は前に父と母に新ちゃんの事情を伝えていたらしく、今回は全て知っていて帰国したらしいのだった。
「なら私も騙されてたってこと…?」
「そー言うこと。…てか、オレはいいけど姉さんはやめろよな。顔色すげー悪かったぞ。」
「今回はかなえにもお灸を据えるつもりだったからね。…さて、2人とも。」
父の声に途端に背筋が伸びる。きた。
「危険なのは十分分かっただろう?もし父さん達が例の男達だったら今頃新一もかなえもあの世行きだ。だから2人共、危険な探偵ごっこはやめて父さん達とのんびり外国で暮らそう。」
父の声は明るかった。けれど内容と隠しきれない真剣さにぐっと喉が詰まる。そうだ、新ちゃんでさえ危なかったのに私がいても足を引っ張るだけ。ならさっさとアメリカに行った方が安全なのは分かっている。分かっているが、
「これはオレの事件だ!オレが解く!!父さん達は手を出すな!!それに…オレはまだここを、離れるわけにはいかねーんだ!!」
「ごめん、お父さん。私も残りたい。残ってやりたいことがあるの。」
「新一、かなえ…。」
母が私達の名を呼ぶ。その声音に胸が押しつぶされそうになるも私は顔を下げなかった。
両親の心情を分からないわけじゃない。けれど私は日本に残りたい。今まで助けてくれた新ちゃんの力にもなりたいし、残ってお兄さんのことを探したい。それに、やっと松田さんと萩原さんとしっかりとした友達になれたのだ。少しづつだけど、私は確かに前を向けているのだ。
「だからお父さんお母さん、お願いします。見守っていて下さい。」
そう言って頭を下げると、頭上からひとつ、大きなため息が聞こえポン、と頭に父の手が乗った。
「今度からはちゃんと、何かあれば直ぐに連絡するんだぞ。」
「っ、ありがとう!」
父の言葉にホッと胸を撫で下ろす。よかった、ひとまず安心だ。そんな私の隣では新ちゃんが父に早速からかわれている。それに苦笑していると、ふと誰かが隣へと腰掛けた気配がした。そしてそのま手を握られる。母だ。
「かなえちゃん、無茶したら駄目よ。お母さんとの約束ね。」
「うん。お母さんもありがとう、大好き。」
「私もよ。ずっと愛してる。」
力強く抱き締め合う。
頭を撫でられる感覚を噛み締めながら、暫くの間母の腕の中で甘えていた。
父と母はそのまま飛行機の時間があると言って行ってしまい、私と新ちゃんは博士の車に乗せてもらった。
後部座席で2人、ゆらゆらと揺られながらシートに身体を沈める。博士も疲れたのだろう。車内はとても静かだ。
「ごめんね、新ちゃん。あとありがとう。」
「いきなり何だよ?」
私の謝罪に新ちゃんが怪訝そうにする。
いくら父と母が分かっていても私が上手く言い訳も嘘も付けず新ちゃんを庇えなかったのは事実だし、ホテルの時なんてそんな私を責めるでもなく体調の心配までしてくれた。姉としては中々格好悪い。
「今回は芝居だったから良かったけど…。お姉ちゃん、もうちょっとしっかりするね。」
「バーロー。姉さんはあんま首突っ込まなくていーんだよ。それより、」
新ちゃんはそこまで言うと、心底意地悪そうな声音で続けた。
「このままやられっぱなしには出来ねぇよ。父さん達に仕返ししよーぜ。」
「えぇ〜。」
その後嬉々として色んな雑誌社に連絡する新ちゃんに私と博士は苦笑する。
まぁ何はともあれ一件落着だと、困っているであろう父の顔を思い笑いが零れた。