工藤さん家の娘さんは目が見えない。
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「へー、そんな事があったの。」
夕暮れ時。偶然蘭ちゃんと園子ちゃんが学校から帰るところに鉢合わせた私は、蘭ちゃんの腕に捕まりながら先日別荘であったと言う事件を聞きながら歩いていた。
「カッコよかったんですよ!園子の探偵ぶり。」
「凄いじゃん園子ちゃん。平成のホームズになっちゃう?」
「まあね!わたしにかかればあんな事件ちょろいちょろい!もう新一君や蘭のお父さんなんて目じゃないわ!」
そう言って自分の時代だと高笑いする園子ちゃんに苦笑する。多分だが新ちゃんが博士から貰った麻酔銃を使ったのだろう。園子ちゃんこれに味を占めて変な事に首を突っ込まなきゃいいけどな。心配半分でそう苦笑していた私に、蘭ちゃんがそう言えば、と思い出したかのように声を上げた。
「新一から連絡ありました?」
「それがまだなくて…。」
「もう直ぐクリスマスなのに彼女とお姉ちゃん置いてどこほっつき歩いてんのかしらね、新一君は。」
園子ちゃんのその言葉に慌てて否定する蘭ちゃんと尚も茶化す園子ちゃんに申し訳なさが募る。実は傍にいます、なんて口が裂けても言えないからなぁ。
けどそうか、クリスマスか…。楽しげに話す2人の隣で私はほぅ、と息を吐いた。
後日、私はクリスマスプレゼントを買いにデパートへ来ていた。この時期はムクに散歩でもない雪道を歩かせるのは忍びなくて、いつもなら新ちゃんか蘭ちゃんに付き添いを頼むのだが、今日2人は園子ちゃんの誘いで有名なバンドの打ち上げに参加するらしく断られてしまった。可愛いとか綺麗とかの判断が出来ないので本当は1人で行きたくないのだが仕方ない。ダメ元でも博士に頼めば良かったかなぁと思いながら1人でデパート内を探していた私に、ふと誰かが近寄ってくる気配がした。
「かなえちゃん。」
「え、萩原さん?」
その人はいつもお世話になっている萩原さんだった。思わぬ人物に内心喜びながらお久しぶりですと笑うと、萩原さんも優しい声音で返してくれた。なんでも使っていた財布が壊れてしまい新しく買いに来たそうで、たまたま私を見かけ声をかけてくれたらしい。
「いいの見つかりました?」
「まぁね。かなえちゃんの方は?」
「それがなかなか…。店員さんもこの時期は忙しいから捕まらなくて。」
軽くため息をつきながら手に持っていた商品を台に戻す。まだクリスマスには先だがやはり皆考えることは同じなのだろう。お客さんの数が多く店員さんに商品を説明してもらう時間が取れなかった。買う物は粗方決めて来たけど、また出直しかなぁと考えていると萩原さんがなら、と声を上げた。
「一緒に回ろうか。」
「え?」
願ったり叶ったりの提案だが折角の休日にいいのだろうか。少し躊躇っていると萩原さんは私の手を掬い自身の腕へと導いた。
「この後用事もないし手伝うよ。」
「ならお言葉に甘えてもいいですか?」
「OK〜。お兄さんに任せなさい。」
軽い口調だが頼もしい。もう一度お願いしますと伝えてから、私達は店の中へと入っていった。
有難いことに萩原さんが荷物を全て持っていてくれたので楽に商品を選べたが、それでも時間はかかりお昼からは大分時間が過ぎてしまっていた。今更ご飯を食べるという気にもなれずレストランフロアのカフェに入った私達はお互い飲み物を注文して一息つくことにした。
「ありがとうございます。凄く助かりました。」
「全然。俺も楽しかったから。」
「そうですか?なら良かったです。私、結構引っ張り回しちゃったから。」
「結構悩んでたよね。誰の?」
「友達です。あの子毎回好みが変わるから難しくて。」
「あぁ、あのアグレッシブな…。」
萩原さんの声が遠い。あの日警察に私が残っていることを伝えてくれた命の恩人なのだが、あの子濃いからなぁ。友達想いの優しい子なんだけど、ちょっと気が強過ぎると言うかなんと言うか…。今月も浮気した彼氏をボコボコにして警察沙汰になってたな。それを思い出し私も乾いた笑いが漏れた。
しかしそんなあの子もこれならきっと気に入ってくれるはずと、足元のカゴに入れていた袋を待ち上げ膝に置く。ココアが零れないよう気をつけながら紙袋の中に手を入れプレゼント用に包装されたそれ触った。萩原さんや店員さんにも聞いてやっと見つけた納得の物。今からでもあの子の喜ぶ声が聞こえる気がしてふふっ、と笑いが零れた。
「そう言えばもう一個買ってたよね。お父さんに?」
「あ、いえこれは…。」
父と母にはペアで使える物を買ったが、萩原さんの言うこれは1人用だ。私にも分かるようリボンの結び方が工夫されているうちのひとつを袋から取り出す。
「今は会えない人なんですけど、いつか、お礼も兼ねて渡したくて。」
本当なら今日買う予定になかった人。けれどここでこの商品を見つけた時、お兄さんにはこれが合うんじゃないかと思った。買ったところで渡せないけどまぁ腐る物ではないしクリスマス仕様ではないので、いつか、必ず会えた時に渡そうと決めたのだ。
「大切な人なんだね。…なんか妬けるな。」
静かに、独り言のように萩原さんが囁いた。まさかそんな事を言われるとは思わず一瞬言葉が詰まる。しかしいつもの揶揄いの延長だと気づき力が抜けた。
「もう、揶揄わないでくださいよ。」
「嘘じゃないぜ?」
「でもそれ女の子への常套句ですよね?松田さんが言ってました。」
「あいつ…。」
かなえちゃんに何教えてんだ、とブツブツ呟く萩原さんに苦笑しながら目の前のココアを啜る。うん、美味しいと口についたココアを舌で舐める。少しドキッとしたのは内緒だ。
夕暮れ時。偶然蘭ちゃんと園子ちゃんが学校から帰るところに鉢合わせた私は、蘭ちゃんの腕に捕まりながら先日別荘であったと言う事件を聞きながら歩いていた。
「カッコよかったんですよ!園子の探偵ぶり。」
「凄いじゃん園子ちゃん。平成のホームズになっちゃう?」
「まあね!わたしにかかればあんな事件ちょろいちょろい!もう新一君や蘭のお父さんなんて目じゃないわ!」
そう言って自分の時代だと高笑いする園子ちゃんに苦笑する。多分だが新ちゃんが博士から貰った麻酔銃を使ったのだろう。園子ちゃんこれに味を占めて変な事に首を突っ込まなきゃいいけどな。心配半分でそう苦笑していた私に、蘭ちゃんがそう言えば、と思い出したかのように声を上げた。
「新一から連絡ありました?」
「それがまだなくて…。」
「もう直ぐクリスマスなのに彼女とお姉ちゃん置いてどこほっつき歩いてんのかしらね、新一君は。」
園子ちゃんのその言葉に慌てて否定する蘭ちゃんと尚も茶化す園子ちゃんに申し訳なさが募る。実は傍にいます、なんて口が裂けても言えないからなぁ。
けどそうか、クリスマスか…。楽しげに話す2人の隣で私はほぅ、と息を吐いた。
後日、私はクリスマスプレゼントを買いにデパートへ来ていた。この時期はムクに散歩でもない雪道を歩かせるのは忍びなくて、いつもなら新ちゃんか蘭ちゃんに付き添いを頼むのだが、今日2人は園子ちゃんの誘いで有名なバンドの打ち上げに参加するらしく断られてしまった。可愛いとか綺麗とかの判断が出来ないので本当は1人で行きたくないのだが仕方ない。ダメ元でも博士に頼めば良かったかなぁと思いながら1人でデパート内を探していた私に、ふと誰かが近寄ってくる気配がした。
「かなえちゃん。」
「え、萩原さん?」
その人はいつもお世話になっている萩原さんだった。思わぬ人物に内心喜びながらお久しぶりですと笑うと、萩原さんも優しい声音で返してくれた。なんでも使っていた財布が壊れてしまい新しく買いに来たそうで、たまたま私を見かけ声をかけてくれたらしい。
「いいの見つかりました?」
「まぁね。かなえちゃんの方は?」
「それがなかなか…。店員さんもこの時期は忙しいから捕まらなくて。」
軽くため息をつきながら手に持っていた商品を台に戻す。まだクリスマスには先だがやはり皆考えることは同じなのだろう。お客さんの数が多く店員さんに商品を説明してもらう時間が取れなかった。買う物は粗方決めて来たけど、また出直しかなぁと考えていると萩原さんがなら、と声を上げた。
「一緒に回ろうか。」
「え?」
願ったり叶ったりの提案だが折角の休日にいいのだろうか。少し躊躇っていると萩原さんは私の手を掬い自身の腕へと導いた。
「この後用事もないし手伝うよ。」
「ならお言葉に甘えてもいいですか?」
「OK〜。お兄さんに任せなさい。」
軽い口調だが頼もしい。もう一度お願いしますと伝えてから、私達は店の中へと入っていった。
有難いことに萩原さんが荷物を全て持っていてくれたので楽に商品を選べたが、それでも時間はかかりお昼からは大分時間が過ぎてしまっていた。今更ご飯を食べるという気にもなれずレストランフロアのカフェに入った私達はお互い飲み物を注文して一息つくことにした。
「ありがとうございます。凄く助かりました。」
「全然。俺も楽しかったから。」
「そうですか?なら良かったです。私、結構引っ張り回しちゃったから。」
「結構悩んでたよね。誰の?」
「友達です。あの子毎回好みが変わるから難しくて。」
「あぁ、あのアグレッシブな…。」
萩原さんの声が遠い。あの日警察に私が残っていることを伝えてくれた命の恩人なのだが、あの子濃いからなぁ。友達想いの優しい子なんだけど、ちょっと気が強過ぎると言うかなんと言うか…。今月も浮気した彼氏をボコボコにして警察沙汰になってたな。それを思い出し私も乾いた笑いが漏れた。
しかしそんなあの子もこれならきっと気に入ってくれるはずと、足元のカゴに入れていた袋を待ち上げ膝に置く。ココアが零れないよう気をつけながら紙袋の中に手を入れプレゼント用に包装されたそれ触った。萩原さんや店員さんにも聞いてやっと見つけた納得の物。今からでもあの子の喜ぶ声が聞こえる気がしてふふっ、と笑いが零れた。
「そう言えばもう一個買ってたよね。お父さんに?」
「あ、いえこれは…。」
父と母にはペアで使える物を買ったが、萩原さんの言うこれは1人用だ。私にも分かるようリボンの結び方が工夫されているうちのひとつを袋から取り出す。
「今は会えない人なんですけど、いつか、お礼も兼ねて渡したくて。」
本当なら今日買う予定になかった人。けれどここでこの商品を見つけた時、お兄さんにはこれが合うんじゃないかと思った。買ったところで渡せないけどまぁ腐る物ではないしクリスマス仕様ではないので、いつか、必ず会えた時に渡そうと決めたのだ。
「大切な人なんだね。…なんか妬けるな。」
静かに、独り言のように萩原さんが囁いた。まさかそんな事を言われるとは思わず一瞬言葉が詰まる。しかしいつもの揶揄いの延長だと気づき力が抜けた。
「もう、揶揄わないでくださいよ。」
「嘘じゃないぜ?」
「でもそれ女の子への常套句ですよね?松田さんが言ってました。」
「あいつ…。」
かなえちゃんに何教えてんだ、とブツブツ呟く萩原さんに苦笑しながら目の前のココアを啜る。うん、美味しいと口についたココアを舌で舐める。少しドキッとしたのは内緒だ。