華の元JK、空を飛ぶ
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今年の休暇も大概なものだったなと私、[#dc=1#]は独り言ちる。元々世間の長期休暇時はピア二ストの仕事が多く騎空団のバカンスに参加出来なかったのだが、今回は無理やり休みをもぎ取りここアウギュステのシィラス島に来たのに、結局大事に巻き込まれてしまった。
浜辺で明るく燃える火を遠目に私は1人岩場へと来ていた。昼に見つけたここは位置的に賑わっている沖の方から丁度死角となっており陽の光さえ淡くなるひんやりとした洞穴は私的絶好の休憩スポットだった。よっこいせ、と言いながらスカートを膝上まで捲り比較的安定している窪みへと腰を下ろす。そして足を下ろすと膝小僧のすぐ下くらいまで海水に浸かった。半身浴のようにゆらゆらと足を揺らし作為的に波を作り見学したプールの授業を思い出し懐かしいなと少し感傷気味になった。沖の賑わいはさらに増し、誰かの笑い声や話し声がンナギの芳ばしいカヴァ焼きの匂いと共に届いてくる。広がる団欒の輪、優しい時間。その米粒にすら見えない輪郭の動きから目を離し岩の壁へともたれ掛かった。頭が冷たくなっていく。瞳を閉じてその感覚に浸っていた。
「そんな所で寝ては海に落ちますよ。」
はたと目を開ける。その聞き知った声に何故彼がここにいるのか疑問に思いながらも後ろを振り返った。
「セルエルさん。」
銀の髪が月の光を反射してキラキラと光っている。何時ものかっちりとした装いとは異なりこのリゾート地に相応しい水着姿で現れたエルーンの彼ーセルエルさんは立ち上がろうとした私を片手で制し、そのまま隣へと腰掛けた。
「まったく、昼間のこともあるというのに、こんな時間にこんな所へ来る者がいますか。少々どころか大分危機感が薄いのでは?」
「あはは。」
「笑い事ではない。」
相変わらず手厳しい。常からキツい口調がもっとキツくなっている気もしてきた。怒らせたかな。
「他者との交流は嫌いですか。」
「どう、でしょう。賑やかしいのは嫌いでは無いですしお喋りも好きです。ただ私自身インドア派なので、だからじゃないですかね?」
会話するとは思わず出だしが少し詰まるが持ち直し言葉を繋げた。流石に前世で見知った生き物と似たものを見てなおかつ名前が一字しか違わないことに言いようのない消失感が出たのだとは説明出来ない。まぁ嘘ではないので変に思われることもないだろう。
地平線に映る月の光に目を細めた。
諦めたつもりだけど、やっぱりふとした瞬間懐かしんでしまう。もう帰れないと知っているのに。
それが無性に寂しくなってほっと息を吐く。
はぁ、とお決まりのようなため息と心底仕方ないと言うように口を開くセルエルさんはそれでも隣から立ち去りはしなかった。
「まぁ貴女が何を思おうが知りませんが、あまり心配させるものではありません。」
「え、心配してくださったんですか?」
「でなければ探しに来ないでしょう。」
馬鹿なのかと続きそうな言い方だ。てっきりグラン辺りに言われて来たのかと思ったら自発的とは。驚いて思わず海水を跳ねさせてしまいまた怒られた。
「さぁもう気は済みましたね。戻りますよ、あまり遅いと他の者にも心配をかける。」
「いや、私はもう少しー。」
「はやく立つ。」
「はい…。」
ローアインさん達が言ってたロイヤルみってこの事かと内心愚痴りながら差し出された手を取る。普段は鎧で隠された節の太い指が私の手をしっかりと握り引っ張り上げた。ダンスに誘うような手の引き方ではないが、仲間だから少し荒いのだと分かると照れ臭く感じる。
「ありがとうございます。迎えに来てくれて。」
「副団長である前に貴女はまだ子供です。自覚なさい。」
離された手をそのままに2人並んで輪の中へと向かう。少しだけ先を行くセルエルさんにでも、と声を上げた。
「こうやって毎回来てくれたら安心ですね。」
また怒られるかなとも思ったが私の意に反してセルエルさんはこちらを振り返りその端正な顔をふっと緩め目を細めた。
「言われなくとも貴女を見つけ手を引くのは私だけですよ。」
光栄に思いなさい。
空いた穴に違う感情が滑り込んできた瞬間だった。
浜辺で明るく燃える火を遠目に私は1人岩場へと来ていた。昼に見つけたここは位置的に賑わっている沖の方から丁度死角となっており陽の光さえ淡くなるひんやりとした洞穴は私的絶好の休憩スポットだった。よっこいせ、と言いながらスカートを膝上まで捲り比較的安定している窪みへと腰を下ろす。そして足を下ろすと膝小僧のすぐ下くらいまで海水に浸かった。半身浴のようにゆらゆらと足を揺らし作為的に波を作り見学したプールの授業を思い出し懐かしいなと少し感傷気味になった。沖の賑わいはさらに増し、誰かの笑い声や話し声がンナギの芳ばしいカヴァ焼きの匂いと共に届いてくる。広がる団欒の輪、優しい時間。その米粒にすら見えない輪郭の動きから目を離し岩の壁へともたれ掛かった。頭が冷たくなっていく。瞳を閉じてその感覚に浸っていた。
「そんな所で寝ては海に落ちますよ。」
はたと目を開ける。その聞き知った声に何故彼がここにいるのか疑問に思いながらも後ろを振り返った。
「セルエルさん。」
銀の髪が月の光を反射してキラキラと光っている。何時ものかっちりとした装いとは異なりこのリゾート地に相応しい水着姿で現れたエルーンの彼ーセルエルさんは立ち上がろうとした私を片手で制し、そのまま隣へと腰掛けた。
「まったく、昼間のこともあるというのに、こんな時間にこんな所へ来る者がいますか。少々どころか大分危機感が薄いのでは?」
「あはは。」
「笑い事ではない。」
相変わらず手厳しい。常からキツい口調がもっとキツくなっている気もしてきた。怒らせたかな。
「他者との交流は嫌いですか。」
「どう、でしょう。賑やかしいのは嫌いでは無いですしお喋りも好きです。ただ私自身インドア派なので、だからじゃないですかね?」
会話するとは思わず出だしが少し詰まるが持ち直し言葉を繋げた。流石に前世で見知った生き物と似たものを見てなおかつ名前が一字しか違わないことに言いようのない消失感が出たのだとは説明出来ない。まぁ嘘ではないので変に思われることもないだろう。
地平線に映る月の光に目を細めた。
諦めたつもりだけど、やっぱりふとした瞬間懐かしんでしまう。もう帰れないと知っているのに。
それが無性に寂しくなってほっと息を吐く。
はぁ、とお決まりのようなため息と心底仕方ないと言うように口を開くセルエルさんはそれでも隣から立ち去りはしなかった。
「まぁ貴女が何を思おうが知りませんが、あまり心配させるものではありません。」
「え、心配してくださったんですか?」
「でなければ探しに来ないでしょう。」
馬鹿なのかと続きそうな言い方だ。てっきりグラン辺りに言われて来たのかと思ったら自発的とは。驚いて思わず海水を跳ねさせてしまいまた怒られた。
「さぁもう気は済みましたね。戻りますよ、あまり遅いと他の者にも心配をかける。」
「いや、私はもう少しー。」
「はやく立つ。」
「はい…。」
ローアインさん達が言ってたロイヤルみってこの事かと内心愚痴りながら差し出された手を取る。普段は鎧で隠された節の太い指が私の手をしっかりと握り引っ張り上げた。ダンスに誘うような手の引き方ではないが、仲間だから少し荒いのだと分かると照れ臭く感じる。
「ありがとうございます。迎えに来てくれて。」
「副団長である前に貴女はまだ子供です。自覚なさい。」
離された手をそのままに2人並んで輪の中へと向かう。少しだけ先を行くセルエルさんにでも、と声を上げた。
「こうやって毎回来てくれたら安心ですね。」
また怒られるかなとも思ったが私の意に反してセルエルさんはこちらを振り返りその端正な顔をふっと緩め目を細めた。
「言われなくとも貴女を見つけ手を引くのは私だけですよ。」
光栄に思いなさい。
空いた穴に違う感情が滑り込んできた瞬間だった。