華の元JK、空を飛ぶ
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淡い光が照らす廊下を歩くジークフリートの毛先から流れた水滴が肩にかけたタオルへと染み込んでいく。
時刻は23時半を少し過ぎ、寝静まってはいないが起きている者も限られてくる時間帯に人とすれ違うことはあまりない。まぁパーシヴァル辺りにこの姿が見つかればどやされるがあの自分より二回り近く歳の離れた少女はきっと変わらずその目尻をほんの少し下げ困ったように笑うのだろう。
もう寝ているかもしれない、しかしどうしても期待してしまう自分に苦笑が漏れ風呂上がりの水を含み垂れた前髪をかきあげた時、前方から望んだ少女ースイが歩いて来る姿が見えた。
彼女も対面のジークフリートの姿を捉えると、普段は白いマスクで隠された口元をほんの少し歪めやはり困ったように笑った。
「またですか?ジークフリートさん。」
「申し訳ない。」
「まったく、風邪引きますよ。」
持っていた楽譜の入った大きめのクリアケースを小脇に抱え直し無遠慮に肩のタオルを引っ張るスイにジークフリートも慣れたように屈む。頭をタオルで覆われあまり強くない力でゴシゴシと水気を吸い取っていく。しかし長髪故に毛先からはまだポタリポタリと水滴が落ちていた。上がってから自分で少しでも拭いたのだろうかとため息を隠さないスイは動かしていた手を止めタオルを外した。
「談話室でいいですか?」
「乾かしてくれるのか?」
「始めからそのつもりだったくせに。」
口を尖らせ何回目だと抗議するスイに愛おしさが込み上げる。思わず笑みを零すと益々難色を示すもこのままでは進まないと踏んだのだろう、湯冷めして少々ひんやりとしているジークフリートの手を引いてスイは数ある談話室のひとつで、ドライヤーのある何時もの部屋へと向かった。
柔らかいシルクのように肌触りのいいカーペットに腰を下ろしたジークフリートの後ろでスイはソファからいくらか低い位置になった彼の頭を乾かしていた。先程のタオルは大分湿っていたので真新し無地のものを取り出し、ドライヤーをかけるまでに粗方の水気を飛ばす。その荒い手つきに始めの頃の一つ一つ断りや謝罪を入れていたどこか距離のあった彼女はおらず、慣れてこの行為が当たり前になった彼女の態度が受け入れられたようでジークフリートは軽い優越感に浸る。手負いの猫のようなあの警戒した姿も初々しくて良いが今のように仕方ないと微笑む姿も可愛らしい。けれどジークフリートは近頃自身で作り上げたこの現状に少し物足りなさを感じていた。
信頼のおける人間だと思わせたのは自分だが、果てさて男という認識まで薄まるとは思わなかった。いや、聡いスイのことだから態と、と言うこともある。現に歳の離れた異性には父性愛を求めてしまうとはスイ自身の言い分だ。だが別にジークフリートはスイの父親になりたいわけではない。
ひとりでに息を吐く。
折角縮めた距離だが仕方ない。彼女を求める者は多く手をこまねいている暇はないのだ。
「ランスロットさん達からは聞いてましたけど、頓着がなくとも髪くらいはご自身で乾かしてください。風邪引いて任務に出れないなんて竜殺しの名が泣きますよ。」
「はは、心配ないさ。それより、」
2人きりの時に他の男の名を出すのはあまり関心しないな。
ピタリとタオル越しに髪を掻き乱す手が止まる。手持ち無沙汰で眺めていた彼女の楽譜を床に置きジークフリートはそのままスイの片方ずつをそっと自分の手で包み込んだ。湯冷めしたわけではないだろうに、ひんやりとした指先に彼女の狡いところが垣間見える。
はらりと落ちるタオルをそのままにジークフリートは顔を上げた。いつもは優しく見下ろす金の目に今はスイの不安げな瞳が上から映り込む。その奥に揺れる熱は竜の反射かそれともー。
大剣を振るう武骨な男の手が鮮やかな音色を奏でる少女の幼い指先を絡め取った。
時刻は23時半を少し過ぎ、寝静まってはいないが起きている者も限られてくる時間帯に人とすれ違うことはあまりない。まぁパーシヴァル辺りにこの姿が見つかればどやされるがあの自分より二回り近く歳の離れた少女はきっと変わらずその目尻をほんの少し下げ困ったように笑うのだろう。
もう寝ているかもしれない、しかしどうしても期待してしまう自分に苦笑が漏れ風呂上がりの水を含み垂れた前髪をかきあげた時、前方から望んだ少女ースイが歩いて来る姿が見えた。
彼女も対面のジークフリートの姿を捉えると、普段は白いマスクで隠された口元をほんの少し歪めやはり困ったように笑った。
「またですか?ジークフリートさん。」
「申し訳ない。」
「まったく、風邪引きますよ。」
持っていた楽譜の入った大きめのクリアケースを小脇に抱え直し無遠慮に肩のタオルを引っ張るスイにジークフリートも慣れたように屈む。頭をタオルで覆われあまり強くない力でゴシゴシと水気を吸い取っていく。しかし長髪故に毛先からはまだポタリポタリと水滴が落ちていた。上がってから自分で少しでも拭いたのだろうかとため息を隠さないスイは動かしていた手を止めタオルを外した。
「談話室でいいですか?」
「乾かしてくれるのか?」
「始めからそのつもりだったくせに。」
口を尖らせ何回目だと抗議するスイに愛おしさが込み上げる。思わず笑みを零すと益々難色を示すもこのままでは進まないと踏んだのだろう、湯冷めして少々ひんやりとしているジークフリートの手を引いてスイは数ある談話室のひとつで、ドライヤーのある何時もの部屋へと向かった。
柔らかいシルクのように肌触りのいいカーペットに腰を下ろしたジークフリートの後ろでスイはソファからいくらか低い位置になった彼の頭を乾かしていた。先程のタオルは大分湿っていたので真新し無地のものを取り出し、ドライヤーをかけるまでに粗方の水気を飛ばす。その荒い手つきに始めの頃の一つ一つ断りや謝罪を入れていたどこか距離のあった彼女はおらず、慣れてこの行為が当たり前になった彼女の態度が受け入れられたようでジークフリートは軽い優越感に浸る。手負いの猫のようなあの警戒した姿も初々しくて良いが今のように仕方ないと微笑む姿も可愛らしい。けれどジークフリートは近頃自身で作り上げたこの現状に少し物足りなさを感じていた。
信頼のおける人間だと思わせたのは自分だが、果てさて男という認識まで薄まるとは思わなかった。いや、聡いスイのことだから態と、と言うこともある。現に歳の離れた異性には父性愛を求めてしまうとはスイ自身の言い分だ。だが別にジークフリートはスイの父親になりたいわけではない。
ひとりでに息を吐く。
折角縮めた距離だが仕方ない。彼女を求める者は多く手をこまねいている暇はないのだ。
「ランスロットさん達からは聞いてましたけど、頓着がなくとも髪くらいはご自身で乾かしてください。風邪引いて任務に出れないなんて竜殺しの名が泣きますよ。」
「はは、心配ないさ。それより、」
2人きりの時に他の男の名を出すのはあまり関心しないな。
ピタリとタオル越しに髪を掻き乱す手が止まる。手持ち無沙汰で眺めていた彼女の楽譜を床に置きジークフリートはそのままスイの片方ずつをそっと自分の手で包み込んだ。湯冷めしたわけではないだろうに、ひんやりとした指先に彼女の狡いところが垣間見える。
はらりと落ちるタオルをそのままにジークフリートは顔を上げた。いつもは優しく見下ろす金の目に今はスイの不安げな瞳が上から映り込む。その奥に揺れる熱は竜の反射かそれともー。
大剣を振るう武骨な男の手が鮮やかな音色を奏でる少女の幼い指先を絡め取った。