華の元JK、空を飛ぶ
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今回の依頼の報酬には色がついたとかで余ったお金でどんちゃん騒ぐ団員達に最初は混じっていた私も少し疲れたため席を外し、甲板へと夜風を浴びに出た。
暖かい季節になったとはいえ、まだまだ夜は冷えるなと上着の前を手繰り寄せる。
満点の星空が見上げながら今日の記憶に浸る。ヴェインさんに教わりながら作ったというヤイアちゃんのマフィンはとても美味しかった。カリオストロさんの実験は真新しくて面白かったしルナールさんが見せてくれた絵物語は漫画を彷彿とさせ懐かしかった。
依頼中怪我はあったものの大事に至ることもなく、今日も穏やかな日々だったことに安堵する。
ぎしぎしと天井の梁が軋む。
乱雑になった食器のいくつかが地面に落ちて割れていた。
定位置から斜めに大きく動いた机の傍で男物の靴が宙に浮いている。
その見慣れた姿にすぐ様夢だと認識すると倒れていた角椅子を起こしそこに腰をかけた。
目の前で揺れる先生を見つめる。
顔には影がかかり見えないがきっと安らかなのだろうと短くない歳月のおかげで分かった。
『相変わらずイイ趣味してる。』
突然現われたその男は嘲るような、それでいて心底愉快そうな声音で私の肩に手を回す。夢なのに服の上から感じた体温は何回経っても慣れない。
『夢で何度も恩師の死体を見るのはどんな気分だ?絶望?驚愕?恐怖?それとも、果てない歓喜?』
段々と近ずいてくる声が耳にダイレクトに響く。そのままリップ音を立てながら耳輪からゆっくりと首筋まで下がっていく唇の柔らかさと吐息の生温かさに、やはり狭間にいるだけで死んではいないのだと実感した。
私は束縛強いでも嫉妬深くもないが独占欲が強い。
ペンでもノートでも鞄でも壊れるまで私の物だし、誰かに壊されたらそれはもうガラクタだ。それは人にも言えることで、どれだけ飛び立とうと離れようと心や頭の片隅に私という存在を思い出す凝りがあれば、もうそれだけで優越に浸れる。
だから私は大切な人との大切な記憶は例えどんなに残酷でも醜くても誰にも触れさせるつもりはない。
気まぐれに艇に乗っていた時に無理矢理本性を引き出されて以来、何かとつっけかかってきた男ーベリアルさんの上着の裾を掴む。
「出てけ。コレは私だけのものだ。」
夢に入ることを強制出来たとしてもその後は制御出来ないだろう。空間を捻じ曲げ意識を覚醒へと導く。
『ファーさんやバブさんには劣るがやはりイイ。人間にしておくには勿体ない具合の良さだ。』
「よく言う。最近団員の何人かが夢見が悪いと言ってましたけど大方それを餌にグランを堕とすつもりだったんでしょう。でも残念、あの子は皆に平等に優しいよ。」
遠くの方で聞こえるあの子の声に身を委ねる。最後まであの堕天使は笑っていた。
「スイ、スイ、起きて。」
「ぅ、ん…。」
肩を揺すられ瞼を持ち上げる。
どうも手すりに凭れて眠っていたらしい。
「ごめん、ありがとうグラン。」
「ううん。疲れちゃった?」
そのまま隣に腰を下ろしたグランはいつもの柔らかい笑顔はそのままに手を握ってくる。グローブを外しているのでお互いの体温が直に伝わってくる。今日も生きてた。幸せだった。
「…夢見が悪いって話あったじゃん?あれ、もう大丈夫そう。」
「……何かあったの?」
心配そうに顔を覗き込むグランに曖昧に笑っておく。そうすれば納得はしてないがそれ以上聞いてくることもなくまた空を見上げた。
「今日も生きてる。」
「平和で幸せだった?」
変わらない笑顔に安らぎを感じて頭を撫でる。随分と節くれだってしまった、私の未来への投資物。それでもグランは嬉しそうに猫ように目を細める。
「無論、貴方が生きてるから。」
暖かい季節になったとはいえ、まだまだ夜は冷えるなと上着の前を手繰り寄せる。
満点の星空が見上げながら今日の記憶に浸る。ヴェインさんに教わりながら作ったというヤイアちゃんのマフィンはとても美味しかった。カリオストロさんの実験は真新しくて面白かったしルナールさんが見せてくれた絵物語は漫画を彷彿とさせ懐かしかった。
依頼中怪我はあったものの大事に至ることもなく、今日も穏やかな日々だったことに安堵する。
ぎしぎしと天井の梁が軋む。
乱雑になった食器のいくつかが地面に落ちて割れていた。
定位置から斜めに大きく動いた机の傍で男物の靴が宙に浮いている。
その見慣れた姿にすぐ様夢だと認識すると倒れていた角椅子を起こしそこに腰をかけた。
目の前で揺れる先生を見つめる。
顔には影がかかり見えないがきっと安らかなのだろうと短くない歳月のおかげで分かった。
『相変わらずイイ趣味してる。』
突然現われたその男は嘲るような、それでいて心底愉快そうな声音で私の肩に手を回す。夢なのに服の上から感じた体温は何回経っても慣れない。
『夢で何度も恩師の死体を見るのはどんな気分だ?絶望?驚愕?恐怖?それとも、果てない歓喜?』
段々と近ずいてくる声が耳にダイレクトに響く。そのままリップ音を立てながら耳輪からゆっくりと首筋まで下がっていく唇の柔らかさと吐息の生温かさに、やはり狭間にいるだけで死んではいないのだと実感した。
私は束縛強いでも嫉妬深くもないが独占欲が強い。
ペンでもノートでも鞄でも壊れるまで私の物だし、誰かに壊されたらそれはもうガラクタだ。それは人にも言えることで、どれだけ飛び立とうと離れようと心や頭の片隅に私という存在を思い出す凝りがあれば、もうそれだけで優越に浸れる。
だから私は大切な人との大切な記憶は例えどんなに残酷でも醜くても誰にも触れさせるつもりはない。
気まぐれに艇に乗っていた時に無理矢理本性を引き出されて以来、何かとつっけかかってきた男ーベリアルさんの上着の裾を掴む。
「出てけ。コレは私だけのものだ。」
夢に入ることを強制出来たとしてもその後は制御出来ないだろう。空間を捻じ曲げ意識を覚醒へと導く。
『ファーさんやバブさんには劣るがやはりイイ。人間にしておくには勿体ない具合の良さだ。』
「よく言う。最近団員の何人かが夢見が悪いと言ってましたけど大方それを餌にグランを堕とすつもりだったんでしょう。でも残念、あの子は皆に平等に優しいよ。」
遠くの方で聞こえるあの子の声に身を委ねる。最後まであの堕天使は笑っていた。
「スイ、スイ、起きて。」
「ぅ、ん…。」
肩を揺すられ瞼を持ち上げる。
どうも手すりに凭れて眠っていたらしい。
「ごめん、ありがとうグラン。」
「ううん。疲れちゃった?」
そのまま隣に腰を下ろしたグランはいつもの柔らかい笑顔はそのままに手を握ってくる。グローブを外しているのでお互いの体温が直に伝わってくる。今日も生きてた。幸せだった。
「…夢見が悪いって話あったじゃん?あれ、もう大丈夫そう。」
「……何かあったの?」
心配そうに顔を覗き込むグランに曖昧に笑っておく。そうすれば納得はしてないがそれ以上聞いてくることもなくまた空を見上げた。
「今日も生きてる。」
「平和で幸せだった?」
変わらない笑顔に安らぎを感じて頭を撫でる。随分と節くれだってしまった、私の未来への投資物。それでもグランは嬉しそうに猫ように目を細める。
「無論、貴方が生きてるから。」