番外編 ご都合展開シリーズ
空欄の場合は『スイ』になります。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
スイは絶望していた。
「これは…。全く、星晶獣は奥が深いねぇ。」
隣で顎に手を当て興味深そうに呟く男に、スイの顔が青ざめていく。一体私が何をしたと言うんだ…。
物資の調達や依頼で停泊することになったこの島で、スイは久しぶりの休暇を楽しんでいた。観光地と言うこともあり賑やかな街並みに心浮かれながら歩いていると、ふと見知った姿を見つけた。何故ここに、と思う暇もなくその背は人混みに消えかかり始める。不味い、ここで逃す訳にはいかないとスイは慌ててその人を追いかけた。
「何してるんですか。」
「おやおや。」
追いついた森の中で声を上げたスイに、その男、フェルディナンドはまるで驚いた様子もなくゆっくりと振り返る。前と変わらず薄ら笑みを浮かべスイを見下ろすその顔に、もしや罠だったかと内心焦るもあまり接点のない自分を嵌めるメリットは無いだろうと鋭い眼光を向けた。
「こんな所で会うなんて奇遇だね。何をしているのかな?」
「それはこちらのセリフです。また厄介事ですか?」
「厄介な事をした覚えはないんだけどね。」
いけしゃあしゃあと…。飄々としたフェルディナンドの態度に苛立ちが募る。スイはグランのように真っ直ぐな正義感を持ち合わせてはいない。しかし団員であるティコと仲が良かったため、そのティコを苦しめる元凶であるフェルディナンドに軽い憎悪を持っていた。故にこの場で何としてもこの男を捕まえようと、スイは武器に手をかける。
「おっと。私は戦うつもりはないよ。」
「私は戦うつもりです。」
「それは困ったな。」
そう言ってフェルディナンドは本当に困ったような顔をする。それも演技のうちだろうが、スイの神経を逆撫でするには十分だった。話しても無駄だな。この男の実力は未知数だが何としても情報は引き出す、そう思ってスイが足に力を入れたその時、
「っうわ!!」
辺り一面に眩い光が広がる。何が起こったか分からず咄嗟に目を閉じた。そして暫くして刺すような光が引き、スイがゆっくりと目を開けると、
「…え?」
何故かフェルディナンドと2人、見知らぬ部屋にいた。
そして話は冒頭へと戻る。
「とある星晶獣の噂を耳にしてね。何でもその星晶獣は対象者をホテルの一室を模した場所に閉じ込め、命令を出すらしい。何でこんな物を星の民は作ったかは知らないが…、あまり使い勝手は良くなさそうだ。」
1人で納得したように話すフェルディナンドにスイは頭を抱えた。完全に自分のミスだ。何でもっと慎重に動かなかったかと己の浅はかさに奥歯を噛み締める。しかし後悔しても自分と敵であるフェルディナンドが閉じ込められた事実は変わらず、スイは武器が消え魔法も使えなくなった今の状況を嘆くしかなかった。
「…命令を聞く以外に脱出方法はありますか。」
「聞いたことがないだけかもしれないが、私の知る範囲ではないな。」
最悪だ…。スイは再度抱えそうになった頭を何とか上げ、周りを観察し始めた。
見たところスイの前世にあるビジネスホテルの一室に似ているが、物は少なく真っ白でシワひとつないベッドと、その横にあるナイトテーブルがあるのみで武器になりそうな物はない。しかもその真正面には魔法陣が濃く光る開く気配のない片開きのドアがあり、窓はひとつもなかった。ライトもないのに明るいし…。用途も何も分からない空間に嫌な予感が募る。
「お、スイくんドアを見たまえ。命令が浮かんできたよ。」
「何でそんな冷静で…、は?」
魔法陣がぼやけて消えたかと思うと、扉には同じように濃い色で文字が浮かび上がってきた。が、その文字がとんでもない爆弾だった。
「『触れ合わないと出られない部屋…?』」
なんだそれ。
え、触れ合うって何?何がどうやって?動物とかとの触れ合いのこと?でも動物なんていないし、…まさか、私とこの男で??
「出せ!今すぐ出せ!!!」
一気に青ざめたスイは大声を出しながら力の限りドアを叩いた。冗談じゃない。気持ち悪い。嫌悪感と怒りで今にも暴れ出しそうなスイを、しかしフェルディナンドは微笑みながら制してきた。
「こらこら暴れない。そんな事しても無駄だって言っただろう?」
「?!ちょっ、どこ触ってっ!!」
「女性の身体に不躾に触るのは良くないが如何せん『触れ合わないと』出られないからね。暫く我慢してなさい。なぁに直ぐに終わるさ。」
後ろからスイを羽交い締めにしたかと思うと、フェルディナンドは何時もの様子で言う。まさか本当にやる気…?ゾッとするスイは必死にもがくも、女と男では力の差は歴然で。直ぐに抑え込まれたスイはそのまま後ろからフェルディナンドに身体を撫でられ始めてしまった。
「っひ!」
「怖がらないで。大丈夫、少しくすぐったいだけだよ。」
優しい声が耳に吹きかかる。吐息すらも感じる距離に相当密着しているからだと分かり、スイは身体が震えた。しかしそんなことお構い無しに無骨な男の手は凹凸をなぞっていく。脇と胸の間から流れるように下がり下腹部を摩られ、片手はスイの耳裏を柔く引っ掻く。
むず痒いその刺激に思わず息が漏れそうになり、慌ててマスクの下で唇を引き締めた。先程までの嫌悪感は拭えないが徐々に身体が熱くなっている気がする。きっと後ろから見える自身の首はほんのりと色付き始めているだろう。
このままでは不味い。そう警報が鳴り響く頭で何とか抜け出そうと身体を攀じる。しかしそんな簡単にいくはずもなく、逆にフェルディナンドはスイの足の間に自分の足を入れ、スイは足を開かざる得なくなってしまった。
「お転婆だね。でも女の子もそれくらい元気があった方が個人的には良いと思っている。ほら、私の膝に乗って。疲れただろう?」
まるで親のように、優しく語りかけてくるその声にスイは首を動かし睨むことしか出来ない。けれどその目は涙で少し潤んでおり、迫力どころか縋るようにも見える。その姿にフェルディナンドは一瞬暗く笑うと再度耳に口を近づけた。可愛いよ、と囁きながらスイを更に嬲る。隠しきれなくなり始めた甘い声とビクつく身体に心底楽しそうにしながら、フェルディナンドはベッドへと腰掛けた。
「っも、ほんとやめっ、ひゃあ!?」
座った衝撃か、思わず上がった甲高い声にスイは咄嗟に口を抑える。けれど出てしまったものは仕方なく、膝に乗せて楽しんでいたフェルディナンドもポカンと目を丸くしていた。
恥ずかしい。あまりの恥辱に顔を真っ赤にするスイにふと目を細めたフェルディナンドは、そのままいつもの笑顔に戻ると自身のベルトでスイの両手を縛り上げた。
「なんっ、」
あまりの手際の良さに抵抗らしい抵抗も出来ぬまま身体をベッドへと押し倒される。そしてそのままうつ伏せになったスイの上からのしかかったフェルディナンドはマスクの下に指を這わせ、非難しようとしたスイの口の中を蹂躙し始めた。
「はっ、ふ、んぐっ!」
「前から思っていたが、きみの声は本当に可愛らしいね。まるでミルクをせがむ子猫のようだ。」
「んんっ、くぅっ、ぁ、ぅんっんっ。」
「舌の付け根が気持ちいいのかい?太腿が震えているよ。」
そう言って空いている片手でスイの太腿を撫でるフェルディナンド。その感覚にビクビクと身体を震わせるスイは、逃れることも出来ずただただ甘い痺れを耐えるしかなかった。
「っは、ぁぐっ!」
「うんうん、気持ちいいね。可愛いよ。」
どこまでも変わらない声音。卑猥な水音に鼓膜を刺激され、こっちは息も絶え絶えだと言うのにその余裕さに腹が立つ。指を噛んでやろうとするが上手く力が入らない。ドロドロと垂れてくる唾液と涙がフェルディナンドの指を濡らしていく。
「これはもう必要ないね。」
「ぁ…、」
暫くしてスイの顔からマスクが奪われた。確かに使い物にはならなくなっていたがそれでも毎日付けているそれを外されると心許ない。投げ捨てられるマスクを目で追っていると、そのまま顎を掬われる。なんだ、と回らない頭で考えるより早く少し上がった顔に影がさした。
「ん…、」
「っ??!!」
キスをされた。
柔らかい感触と酷い嫌悪感に一気に視界がクリアになったスイは、咄嗟に入ってきた舌を噛む。ガリっと鈍い音がしたかと思うと、素早くフェルディナンドはスイの身体を離した。残った血の味に吐き気を感じながらスイを見下ろす男を下から睨みつける。
「…いけない子だね。血が出てしまったよ。」
「そっちが、いきなりっ!」
「あぁ!そうか、驚いてしまったんだね。確かにいきなりだとビックリするね。でも噛むのはいけない。悪い子だ。」
そう言うやいなや身体を仰向けにされ、上着を左右に開かれた。さらけ出される己の素肌に身体から一気に熱が引く。
「綺麗な肌だ。確か先生と歳が近かったはずだから…、まだ10代だ。」
言いながらフェルディナンドは自身の手でスイの脇腹を撫でる。弾力を楽しむかのように肌に圧をかけたり、擽るように際を掠めたりしてくるその指先に震えが止まらない。温度、質感、全てにおいて服の上からとじゃ比べ物にならない感覚にゾワッと鳥肌が立った。逃げなくてはならない。危険信号でパニックになる頭を動かし身体を捻るスイに、しかしなおもフェルディナンドは止まることなく、そのまま上へと手を滑らせていった。
「少し脈が速いね…。」
ひたり、と首筋に手を置かれた。太い血管、急所に敵の手があると思うと呼吸が荒くなる。ハッハッ、と息が早くなるも身体は指先ひとつ動かない。そんなスイにフェルディナンドは柔く微笑むと、その唇を動かした。
「今度は噛んだらダメだよ。」
首筋に手は添えたまま。
降ってきたそれに抗えるはずもなく、スイはフェルディナンドからの口付けに応える。湿った吐息が絡み合い、侵入してきた舌はスイの狭い口腔内を舐った。口の端から溢れた唾液と涙が頬を伝い、シーツにシミを作る。グチュグチュ、と厭らしい水音が部屋に響き渡った。
その間もフェルディナンドの片手はスイの足や腕、耳や指を悪戯に触ってくる。そのむず痒さが快楽へと移り変わる直前にカチャン、と鍵のようなものが開く音がしたが、酸素の薄い脳みそはそれを記憶することは出来なかった。
「ふ、っんっ。ぁ、」
「はぁ…。」
熱を帯びたため息と共に離れていくフェルディナンドの口からツー、と銀の糸がひく。それが途中で切れてもスイは肩で息をするだけで動けずにいた。
「さて…。まだ扉は開きそうにないな。あぁ、心配ないよ。きみはただ感じているだけでいい。全て私に任せなさい。」
そう言って笑うフェルディナンドはいつもと変わらない。けれどその瞳には見たこともない鈍い光が指している。
あぁ、完全にやらかした…。
後悔先に立たずとはこの事か、と上着を脱ぐフェルディナンドを見上げながら、脱力したスイは過去の己の行動を悔いるしかなかった。
「これは…。全く、星晶獣は奥が深いねぇ。」
隣で顎に手を当て興味深そうに呟く男に、スイの顔が青ざめていく。一体私が何をしたと言うんだ…。
物資の調達や依頼で停泊することになったこの島で、スイは久しぶりの休暇を楽しんでいた。観光地と言うこともあり賑やかな街並みに心浮かれながら歩いていると、ふと見知った姿を見つけた。何故ここに、と思う暇もなくその背は人混みに消えかかり始める。不味い、ここで逃す訳にはいかないとスイは慌ててその人を追いかけた。
「何してるんですか。」
「おやおや。」
追いついた森の中で声を上げたスイに、その男、フェルディナンドはまるで驚いた様子もなくゆっくりと振り返る。前と変わらず薄ら笑みを浮かべスイを見下ろすその顔に、もしや罠だったかと内心焦るもあまり接点のない自分を嵌めるメリットは無いだろうと鋭い眼光を向けた。
「こんな所で会うなんて奇遇だね。何をしているのかな?」
「それはこちらのセリフです。また厄介事ですか?」
「厄介な事をした覚えはないんだけどね。」
いけしゃあしゃあと…。飄々としたフェルディナンドの態度に苛立ちが募る。スイはグランのように真っ直ぐな正義感を持ち合わせてはいない。しかし団員であるティコと仲が良かったため、そのティコを苦しめる元凶であるフェルディナンドに軽い憎悪を持っていた。故にこの場で何としてもこの男を捕まえようと、スイは武器に手をかける。
「おっと。私は戦うつもりはないよ。」
「私は戦うつもりです。」
「それは困ったな。」
そう言ってフェルディナンドは本当に困ったような顔をする。それも演技のうちだろうが、スイの神経を逆撫でするには十分だった。話しても無駄だな。この男の実力は未知数だが何としても情報は引き出す、そう思ってスイが足に力を入れたその時、
「っうわ!!」
辺り一面に眩い光が広がる。何が起こったか分からず咄嗟に目を閉じた。そして暫くして刺すような光が引き、スイがゆっくりと目を開けると、
「…え?」
何故かフェルディナンドと2人、見知らぬ部屋にいた。
そして話は冒頭へと戻る。
「とある星晶獣の噂を耳にしてね。何でもその星晶獣は対象者をホテルの一室を模した場所に閉じ込め、命令を出すらしい。何でこんな物を星の民は作ったかは知らないが…、あまり使い勝手は良くなさそうだ。」
1人で納得したように話すフェルディナンドにスイは頭を抱えた。完全に自分のミスだ。何でもっと慎重に動かなかったかと己の浅はかさに奥歯を噛み締める。しかし後悔しても自分と敵であるフェルディナンドが閉じ込められた事実は変わらず、スイは武器が消え魔法も使えなくなった今の状況を嘆くしかなかった。
「…命令を聞く以外に脱出方法はありますか。」
「聞いたことがないだけかもしれないが、私の知る範囲ではないな。」
最悪だ…。スイは再度抱えそうになった頭を何とか上げ、周りを観察し始めた。
見たところスイの前世にあるビジネスホテルの一室に似ているが、物は少なく真っ白でシワひとつないベッドと、その横にあるナイトテーブルがあるのみで武器になりそうな物はない。しかもその真正面には魔法陣が濃く光る開く気配のない片開きのドアがあり、窓はひとつもなかった。ライトもないのに明るいし…。用途も何も分からない空間に嫌な予感が募る。
「お、スイくんドアを見たまえ。命令が浮かんできたよ。」
「何でそんな冷静で…、は?」
魔法陣がぼやけて消えたかと思うと、扉には同じように濃い色で文字が浮かび上がってきた。が、その文字がとんでもない爆弾だった。
「『触れ合わないと出られない部屋…?』」
なんだそれ。
え、触れ合うって何?何がどうやって?動物とかとの触れ合いのこと?でも動物なんていないし、…まさか、私とこの男で??
「出せ!今すぐ出せ!!!」
一気に青ざめたスイは大声を出しながら力の限りドアを叩いた。冗談じゃない。気持ち悪い。嫌悪感と怒りで今にも暴れ出しそうなスイを、しかしフェルディナンドは微笑みながら制してきた。
「こらこら暴れない。そんな事しても無駄だって言っただろう?」
「?!ちょっ、どこ触ってっ!!」
「女性の身体に不躾に触るのは良くないが如何せん『触れ合わないと』出られないからね。暫く我慢してなさい。なぁに直ぐに終わるさ。」
後ろからスイを羽交い締めにしたかと思うと、フェルディナンドは何時もの様子で言う。まさか本当にやる気…?ゾッとするスイは必死にもがくも、女と男では力の差は歴然で。直ぐに抑え込まれたスイはそのまま後ろからフェルディナンドに身体を撫でられ始めてしまった。
「っひ!」
「怖がらないで。大丈夫、少しくすぐったいだけだよ。」
優しい声が耳に吹きかかる。吐息すらも感じる距離に相当密着しているからだと分かり、スイは身体が震えた。しかしそんなことお構い無しに無骨な男の手は凹凸をなぞっていく。脇と胸の間から流れるように下がり下腹部を摩られ、片手はスイの耳裏を柔く引っ掻く。
むず痒いその刺激に思わず息が漏れそうになり、慌ててマスクの下で唇を引き締めた。先程までの嫌悪感は拭えないが徐々に身体が熱くなっている気がする。きっと後ろから見える自身の首はほんのりと色付き始めているだろう。
このままでは不味い。そう警報が鳴り響く頭で何とか抜け出そうと身体を攀じる。しかしそんな簡単にいくはずもなく、逆にフェルディナンドはスイの足の間に自分の足を入れ、スイは足を開かざる得なくなってしまった。
「お転婆だね。でも女の子もそれくらい元気があった方が個人的には良いと思っている。ほら、私の膝に乗って。疲れただろう?」
まるで親のように、優しく語りかけてくるその声にスイは首を動かし睨むことしか出来ない。けれどその目は涙で少し潤んでおり、迫力どころか縋るようにも見える。その姿にフェルディナンドは一瞬暗く笑うと再度耳に口を近づけた。可愛いよ、と囁きながらスイを更に嬲る。隠しきれなくなり始めた甘い声とビクつく身体に心底楽しそうにしながら、フェルディナンドはベッドへと腰掛けた。
「っも、ほんとやめっ、ひゃあ!?」
座った衝撃か、思わず上がった甲高い声にスイは咄嗟に口を抑える。けれど出てしまったものは仕方なく、膝に乗せて楽しんでいたフェルディナンドもポカンと目を丸くしていた。
恥ずかしい。あまりの恥辱に顔を真っ赤にするスイにふと目を細めたフェルディナンドは、そのままいつもの笑顔に戻ると自身のベルトでスイの両手を縛り上げた。
「なんっ、」
あまりの手際の良さに抵抗らしい抵抗も出来ぬまま身体をベッドへと押し倒される。そしてそのままうつ伏せになったスイの上からのしかかったフェルディナンドはマスクの下に指を這わせ、非難しようとしたスイの口の中を蹂躙し始めた。
「はっ、ふ、んぐっ!」
「前から思っていたが、きみの声は本当に可愛らしいね。まるでミルクをせがむ子猫のようだ。」
「んんっ、くぅっ、ぁ、ぅんっんっ。」
「舌の付け根が気持ちいいのかい?太腿が震えているよ。」
そう言って空いている片手でスイの太腿を撫でるフェルディナンド。その感覚にビクビクと身体を震わせるスイは、逃れることも出来ずただただ甘い痺れを耐えるしかなかった。
「っは、ぁぐっ!」
「うんうん、気持ちいいね。可愛いよ。」
どこまでも変わらない声音。卑猥な水音に鼓膜を刺激され、こっちは息も絶え絶えだと言うのにその余裕さに腹が立つ。指を噛んでやろうとするが上手く力が入らない。ドロドロと垂れてくる唾液と涙がフェルディナンドの指を濡らしていく。
「これはもう必要ないね。」
「ぁ…、」
暫くしてスイの顔からマスクが奪われた。確かに使い物にはならなくなっていたがそれでも毎日付けているそれを外されると心許ない。投げ捨てられるマスクを目で追っていると、そのまま顎を掬われる。なんだ、と回らない頭で考えるより早く少し上がった顔に影がさした。
「ん…、」
「っ??!!」
キスをされた。
柔らかい感触と酷い嫌悪感に一気に視界がクリアになったスイは、咄嗟に入ってきた舌を噛む。ガリっと鈍い音がしたかと思うと、素早くフェルディナンドはスイの身体を離した。残った血の味に吐き気を感じながらスイを見下ろす男を下から睨みつける。
「…いけない子だね。血が出てしまったよ。」
「そっちが、いきなりっ!」
「あぁ!そうか、驚いてしまったんだね。確かにいきなりだとビックリするね。でも噛むのはいけない。悪い子だ。」
そう言うやいなや身体を仰向けにされ、上着を左右に開かれた。さらけ出される己の素肌に身体から一気に熱が引く。
「綺麗な肌だ。確か先生と歳が近かったはずだから…、まだ10代だ。」
言いながらフェルディナンドは自身の手でスイの脇腹を撫でる。弾力を楽しむかのように肌に圧をかけたり、擽るように際を掠めたりしてくるその指先に震えが止まらない。温度、質感、全てにおいて服の上からとじゃ比べ物にならない感覚にゾワッと鳥肌が立った。逃げなくてはならない。危険信号でパニックになる頭を動かし身体を捻るスイに、しかしなおもフェルディナンドは止まることなく、そのまま上へと手を滑らせていった。
「少し脈が速いね…。」
ひたり、と首筋に手を置かれた。太い血管、急所に敵の手があると思うと呼吸が荒くなる。ハッハッ、と息が早くなるも身体は指先ひとつ動かない。そんなスイにフェルディナンドは柔く微笑むと、その唇を動かした。
「今度は噛んだらダメだよ。」
首筋に手は添えたまま。
降ってきたそれに抗えるはずもなく、スイはフェルディナンドからの口付けに応える。湿った吐息が絡み合い、侵入してきた舌はスイの狭い口腔内を舐った。口の端から溢れた唾液と涙が頬を伝い、シーツにシミを作る。グチュグチュ、と厭らしい水音が部屋に響き渡った。
その間もフェルディナンドの片手はスイの足や腕、耳や指を悪戯に触ってくる。そのむず痒さが快楽へと移り変わる直前にカチャン、と鍵のようなものが開く音がしたが、酸素の薄い脳みそはそれを記憶することは出来なかった。
「ふ、っんっ。ぁ、」
「はぁ…。」
熱を帯びたため息と共に離れていくフェルディナンドの口からツー、と銀の糸がひく。それが途中で切れてもスイは肩で息をするだけで動けずにいた。
「さて…。まだ扉は開きそうにないな。あぁ、心配ないよ。きみはただ感じているだけでいい。全て私に任せなさい。」
そう言って笑うフェルディナンドはいつもと変わらない。けれどその瞳には見たこともない鈍い光が指している。
あぁ、完全にやらかした…。
後悔先に立たずとはこの事か、と上着を脱ぐフェルディナンドを見上げながら、脱力したスイは過去の己の行動を悔いるしかなかった。
2/2ページ