華の元JK、空を飛ぶ
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ふと、意識が覚醒する。
と言ってもこれが夢だと私は本能的に感じていた。先生以外の夢を見るなんて何時ぶりだろう。しかもザンクティンゼルのグランがよく修行をしていた森なんて。
何故今こんな夢を見るのかと不思議に思いながら、何かに導かれるように森の奥へと足を進めた。
夢だけど歩く感覚はしっかりとありザクザクと草や土を踏む感覚が足に伝わる。明晰夢、と言うんだっけ。こんな感じなんだと新たに知ったことに多少驚きつつも歩いていると、ふと見知らぬ人影を見つけた。
背が高く、紫の長髪。全体的に不健康そうなその姿に首を捻る。誰だろう、記憶にない人だ。立ち止まり訝しく見ていると、視線に気づいたのかその人が後ろを振り返る。
バチ、と目が合った。…あれ?
「そんな所にいないでこっちおいで。」
優しい声がかかる。分かるようで分からない、記憶のような思い出のようなものが湧き上がりそうになりながら、私はその人の言う通りにした。常なら知らない人の傍に行かないのに、その自身の行動を不可思議に思いながらも隣へと辿り着いた私にその男の人は優しく微笑む。その顔が何だか懐かしくて、見上げる目を少し細めた。
「僕の名前はオロロジャイア。気軽にロジャーって呼んでよ。」
「なら、ロジャーさん?」
「あ…、そっか…。…うん、ロジャーさんです。」
一瞬寂しそうな顔をしたあとオロロジャイアさん、改めロジャーさんはグラン達の怪我の具合を聞いてきた。何で六竜のことや厓てを知っているのか、疑問は尽きなかったが、それでも私は何故か素直に全てに答えていた。
グランとビィに問題はないと伝え終わるとロジャーさんは私の顔を覗き込む。クマの濃い顔は心配そうに私を見つめた。
「スイの怪我は大丈夫?もう平気?」
怪我?なんの話しかと首を傾げる私にロジャーさんは『六龍の』と言った。それにあぁと納得し返事をする。
「大丈夫ですよ。私あんまり前に出てませんし。」
「でもさ、実際怪我はしたじゃん。指とか大丈夫だった?ちぎれてない??」
「ちぎれてません。」
ほら、とロジャーさんの前で両手を広げる。そのまま全ての指を曲げたり伸ばしたりするとホッとしたように眉を下げた。その顔にはた、と目を瞬かせる。見たことある優しい表情は前世の母によく似ていて、私はついポロッと口からこぼれ出してしまった。
「ロジャーさんって、お母さんみたい。」
「え?」
しまった。初対面の男性相手に言う言葉ではなかった。慌てて謝罪しようとした私は、しかし言葉を飲み込む。
驚き見開かれていたロジャーさんの瞳は、見る見る狭まっていき揺れ動いていたのだ。
まるで泣いているかのようなその目にたじろぐ。どうしたのだろうか。そんなに嫌だったのだろうか。
再度謝罪を述べようとした私に、けれどロジャーさんの方が早くポツリと零した。
「スイ、お願いがあるんだ。」
「私に、出来ることなら。」
「君にしか出来ない事だよ。…ぎゅっ、って抱きしめて欲しいんだ。」
今度は私が驚く番だった。
ポカンとしてしまった私の顔を見てロジャーさんは声を上げる。
「あ、別に変な意味とかなくてですね?!ただ人肌と言うか感覚というか、それを感じたくて!あれ?これただの変態なのでは??」
慌てふためくロジャーさんは自分の発言を自分で否定しながら首を傾げている。どんどん言葉がこんがらがっていくのを眺めながら、何だか懐かしい気持ちになった。
初めて会った人にこんな感情可笑しいだろうが、それでも私はこのやり取りが懐かしい。涙が出そうなほど、懐かしいのだ。
ふわりと持ち上げた両腕を、彼の背に回す。
跳ねたロジャーさんの身体は服越しでも温かい。それが嬉しくて、寂しい気がしてつま先立ちになるのも構わず更に身体を密着させた。
「…あたたかいね、ロジャーさん。」
「…っ。」
ぐっ、と彼の喉が鳴り、力強く私の身体が引き寄せられた。ゼロ距離になった今、ロジャーさんがどんな顔をしているのかは分からない。けれど、幸せそうに笑ってくれていたらいいなと思う。
そう願い私は抱きしめる力をより一層強くした。
と言ってもこれが夢だと私は本能的に感じていた。先生以外の夢を見るなんて何時ぶりだろう。しかもザンクティンゼルのグランがよく修行をしていた森なんて。
何故今こんな夢を見るのかと不思議に思いながら、何かに導かれるように森の奥へと足を進めた。
夢だけど歩く感覚はしっかりとありザクザクと草や土を踏む感覚が足に伝わる。明晰夢、と言うんだっけ。こんな感じなんだと新たに知ったことに多少驚きつつも歩いていると、ふと見知らぬ人影を見つけた。
背が高く、紫の長髪。全体的に不健康そうなその姿に首を捻る。誰だろう、記憶にない人だ。立ち止まり訝しく見ていると、視線に気づいたのかその人が後ろを振り返る。
バチ、と目が合った。…あれ?
「そんな所にいないでこっちおいで。」
優しい声がかかる。分かるようで分からない、記憶のような思い出のようなものが湧き上がりそうになりながら、私はその人の言う通りにした。常なら知らない人の傍に行かないのに、その自身の行動を不可思議に思いながらも隣へと辿り着いた私にその男の人は優しく微笑む。その顔が何だか懐かしくて、見上げる目を少し細めた。
「僕の名前はオロロジャイア。気軽にロジャーって呼んでよ。」
「なら、ロジャーさん?」
「あ…、そっか…。…うん、ロジャーさんです。」
一瞬寂しそうな顔をしたあとオロロジャイアさん、改めロジャーさんはグラン達の怪我の具合を聞いてきた。何で六竜のことや厓てを知っているのか、疑問は尽きなかったが、それでも私は何故か素直に全てに答えていた。
グランとビィに問題はないと伝え終わるとロジャーさんは私の顔を覗き込む。クマの濃い顔は心配そうに私を見つめた。
「スイの怪我は大丈夫?もう平気?」
怪我?なんの話しかと首を傾げる私にロジャーさんは『六龍の』と言った。それにあぁと納得し返事をする。
「大丈夫ですよ。私あんまり前に出てませんし。」
「でもさ、実際怪我はしたじゃん。指とか大丈夫だった?ちぎれてない??」
「ちぎれてません。」
ほら、とロジャーさんの前で両手を広げる。そのまま全ての指を曲げたり伸ばしたりするとホッとしたように眉を下げた。その顔にはた、と目を瞬かせる。見たことある優しい表情は前世の母によく似ていて、私はついポロッと口からこぼれ出してしまった。
「ロジャーさんって、お母さんみたい。」
「え?」
しまった。初対面の男性相手に言う言葉ではなかった。慌てて謝罪しようとした私は、しかし言葉を飲み込む。
驚き見開かれていたロジャーさんの瞳は、見る見る狭まっていき揺れ動いていたのだ。
まるで泣いているかのようなその目にたじろぐ。どうしたのだろうか。そんなに嫌だったのだろうか。
再度謝罪を述べようとした私に、けれどロジャーさんの方が早くポツリと零した。
「スイ、お願いがあるんだ。」
「私に、出来ることなら。」
「君にしか出来ない事だよ。…ぎゅっ、って抱きしめて欲しいんだ。」
今度は私が驚く番だった。
ポカンとしてしまった私の顔を見てロジャーさんは声を上げる。
「あ、別に変な意味とかなくてですね?!ただ人肌と言うか感覚というか、それを感じたくて!あれ?これただの変態なのでは??」
慌てふためくロジャーさんは自分の発言を自分で否定しながら首を傾げている。どんどん言葉がこんがらがっていくのを眺めながら、何だか懐かしい気持ちになった。
初めて会った人にこんな感情可笑しいだろうが、それでも私はこのやり取りが懐かしい。涙が出そうなほど、懐かしいのだ。
ふわりと持ち上げた両腕を、彼の背に回す。
跳ねたロジャーさんの身体は服越しでも温かい。それが嬉しくて、寂しい気がしてつま先立ちになるのも構わず更に身体を密着させた。
「…あたたかいね、ロジャーさん。」
「…っ。」
ぐっ、と彼の喉が鳴り、力強く私の身体が引き寄せられた。ゼロ距離になった今、ロジャーさんがどんな顔をしているのかは分からない。けれど、幸せそうに笑ってくれていたらいいなと思う。
そう願い私は抱きしめる力をより一層強くした。