華の元JK、空を飛ぶ
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俺、シエテはこの騎空団の副団長のスイちゃんとお付き合いをしている。始めこそ10代の女の子に手を出すなんてとかロリコン野郎とか最低とか散々言われたけど、今では団長ちゃんも認めてくれている。たまにまだカトルにはぺドとか言われるけど。
まぁそんな風に茶化されながらも想い合っている俺達はしかし、お互いに立場があるもの同士だ。彼女は将来有望なピアニストで俺は十天衆の頭目。表立ってイチャイチャなんてできないし、お互いを1番に優先することもできない。それはあの子も俺も理解してるし納得もしてるんだけど、
「でも、少しくらい頼ってくれても罰は当たらないんじゃないかなぁ?」
そう言ってぶぅとむくれる俺に目の前に座る団長ちゃんが珍しそうに目を開いた。そんな彼を尻目に食堂のいつもの席で楽しげに団員と会話するスイちゃんを見つめる。その頬には不釣り合いな大きいガーゼが貼られていた。
「シエテもそんなことを言うんだね。」
「そりゃ恋人だからね。やっぱり理不尽に傷ついて欲しくないよ。」
つい先日のことだ。彼女に演奏を依頼した男と一悶着あったらしく、真新しい傷をこさえてスイちゃんは艇に帰ってきた。よくある事だし実力で黙らせたと本人は言っていたが、俺は気が気じゃなかった。そんな目に遭うのが分かっていたなら俺が護衛したし、なんなら今からでもそいつにガツンと言ってやりたい。え?そんな時間あるのかって?まぁ確かに忙しいけど、可愛い恋人のためなら死ぬ気で時間くらい作るって。逆に俺達は一緒にいる時間が少な過ぎるんだよ。
「つまりもっとスイと一緒にいたいと。」
「いや、そうなんだけどそうじゃなくて。もっとこう、俺は恋人らしいことをしてもいいんじゃないかなぁって。」
「分かった分かった。シエテの分の仕事を少し調節するね。」
ご馳走様〜と笑いながら席を立つ団長ちゃんに慌てて声をかけるも取り合ってくれない。これは絶対誤解してる。参ったなぁと頬をかいたが、少しだけでもスイちゃんと過ごす時間が増えるのは純粋に嬉しかった。
全くまさか俺が歳下の女の子相手にこんな事で喜ぶなんてねぇ。自分に苦笑しながらじっとスイちゃんを見つめる。目尻を下げて笑っている顔はマスクのせいで半分しか見えないが、本当に可愛くて惚れた弱みと分かっていても胸が甘く痺れた。
十天衆の仕事も落ち着きしばらく艇に滞在することにした。俺がやる依頼はないし稽古も今日は誰からも頼まれてない。久々の完全オフだ。確かピアノ関係の仕事で艇をあけていたスイちゃんも帰ってきてたはず…。なら2人で過ごしたいな、と考えて女子部屋のエリアに向かおうとした俺にタイミングよく声がかけられた。
「シエテさん。」
「スイちゃん。」
振り返ればやはり会いに行こうとしていた恋人がいて、思わず名前を呼ぶ声が弾んだ。うわ、俺恥ずかしいな。バレてないよね?
「なになに、スイちゃんもお兄さんに会いたくなっちゃった?」
自分の恥ずかしさを紛らわすためにわざと茶目っ気を入れながら言うと、スイちゃんは目を瞬かせてから少し俯いた。え、本当に?スイちゃんも会いたかったの??うわー!今凄く心臓ドキドキしてる!ティーンでもないのに、初恋の時みたいに心がギュッとなった。マスクの下の顔が見たいな。絶対可愛いんだろうなと身体が少し熱くなるのを感じながらスイちゃんを見つめていると、覚悟を決めたように顔が上がる。
しかしその顔は期待とは全く異なる表情を浮かべていた。
「もうやめてください。」
「…ん?」
言われた意味が分からず数度瞬きをする。
目の前のスイちゃんは変わらずしかめっ面で、瞳は拒絶と嫌悪が混じっていた。とても恋人に向けていいものではないそれに喉が絞まる。
「やめてって?」
「とぼけないでください。最近妙に周りと噛み合わないなと思ったら、グランにまで…。シエテさん、貴方本当になんのつもりなんですか。私は貴方と付き合ってないし恋人でもない。」
キーンと耳鳴りがする。この子は何を言っているのだろうか。わけも分からず混乱する俺を置いてスイはなおも捲し立てる。
「それにあれも貴方の仕業ですよね。」
そう言って彼女が話し出したのはこの前の男の事。その男が最近何者かに襲われたと痛ましげに話すスイに首を傾げた。
スイの音の価値を分からない馬鹿の鼓膜などいくら潰れても構わないだろう。スイを傷つける人間はきっとこの後も他の人を傷つける。だからあれは全空のためでもあるのに、スイは何故か険しい顔を崩さない。誰にでも優しい子、ではないのに。…と言うかスイを傷つけたくせに心配してもらってるとか、やっぱり殺せば良かった。
ほんと、迷惑な奴。
「何故貴方がこんな事をしているかは知りません。知りたくもない。でもこれだけは言っておきます。私はシエテさんとは恋人ではないし恋愛感情も持ってません。艇から降りろとは言いませんが、金輪際私に関わらないでください。」
「なにそれ。」
すっと体温が下がるのが分かる。それに比例して自身の声音が恐ろしく冷たくなった。先程までの幸福感は消え失せ、俺の腹からは見知った鉛のようなものが流れ出してきた。
びくりと肩を揺らし一歩後退るスイの腕を掴む。そのままぐっと引き寄せ距離を縮めた。顔の距離が近い。そう言えばキスすらしたことなかったな、俺達。
「言っていい冗談と悪い冗談の区別も出来ないの?あ、もしかして俺が空の平和を優先するから拗ねてるの。でも付き合う前にそれは話し合ってるよね。それにお前だってグランが1番じゃない。いつもいつもグランの近くにいて休みの日も一緒に出かけて、ピアノだってグランのために弾いてあげて。俺のことはいっつも後回しじゃないか。…それとも何、他に好きな奴がいるの。」
ギリギリと腕を掴む手に力が入っていく。痛みから逃れるために捻られたスイの身体はカタカタと震えていた。
「駄目だよそんなの。もし、スイが俺から離れてったら、俺、そいつに何するか分からないよ…?」
可能性がある人間の顔が頭の中にリストアップされていく。どんどん青ざめていくスイにあーあ、と口を尖らせた。かっこいい彼氏でいたかったのに。ヤキモチ焼いてるとことかかっこ悪いから見せたくなかったのになぁ。でもスイが不安だったからってタチの悪い冗談を言うのがいけないんだ。こんなこと言うほど溜め込む前に頼って欲しかった。いくらでも甘えてくれていいのに。
「スイも不安だったんだよね。大丈夫、俺はちゃんとお前を愛してるよ。でも俺もスイの言葉にはすっごく傷ついたから、仲直りしよう。
ねぇ、お前部屋、連れてってくれる?」
もともと今日1日イチャイチャする予定だったんだからいいよね。そう笑いかけた俺にスイは小さく悲鳴を漏らす。
あ、その顔もかわいー。
まぁそんな風に茶化されながらも想い合っている俺達はしかし、お互いに立場があるもの同士だ。彼女は将来有望なピアニストで俺は十天衆の頭目。表立ってイチャイチャなんてできないし、お互いを1番に優先することもできない。それはあの子も俺も理解してるし納得もしてるんだけど、
「でも、少しくらい頼ってくれても罰は当たらないんじゃないかなぁ?」
そう言ってぶぅとむくれる俺に目の前に座る団長ちゃんが珍しそうに目を開いた。そんな彼を尻目に食堂のいつもの席で楽しげに団員と会話するスイちゃんを見つめる。その頬には不釣り合いな大きいガーゼが貼られていた。
「シエテもそんなことを言うんだね。」
「そりゃ恋人だからね。やっぱり理不尽に傷ついて欲しくないよ。」
つい先日のことだ。彼女に演奏を依頼した男と一悶着あったらしく、真新しい傷をこさえてスイちゃんは艇に帰ってきた。よくある事だし実力で黙らせたと本人は言っていたが、俺は気が気じゃなかった。そんな目に遭うのが分かっていたなら俺が護衛したし、なんなら今からでもそいつにガツンと言ってやりたい。え?そんな時間あるのかって?まぁ確かに忙しいけど、可愛い恋人のためなら死ぬ気で時間くらい作るって。逆に俺達は一緒にいる時間が少な過ぎるんだよ。
「つまりもっとスイと一緒にいたいと。」
「いや、そうなんだけどそうじゃなくて。もっとこう、俺は恋人らしいことをしてもいいんじゃないかなぁって。」
「分かった分かった。シエテの分の仕事を少し調節するね。」
ご馳走様〜と笑いながら席を立つ団長ちゃんに慌てて声をかけるも取り合ってくれない。これは絶対誤解してる。参ったなぁと頬をかいたが、少しだけでもスイちゃんと過ごす時間が増えるのは純粋に嬉しかった。
全くまさか俺が歳下の女の子相手にこんな事で喜ぶなんてねぇ。自分に苦笑しながらじっとスイちゃんを見つめる。目尻を下げて笑っている顔はマスクのせいで半分しか見えないが、本当に可愛くて惚れた弱みと分かっていても胸が甘く痺れた。
十天衆の仕事も落ち着きしばらく艇に滞在することにした。俺がやる依頼はないし稽古も今日は誰からも頼まれてない。久々の完全オフだ。確かピアノ関係の仕事で艇をあけていたスイちゃんも帰ってきてたはず…。なら2人で過ごしたいな、と考えて女子部屋のエリアに向かおうとした俺にタイミングよく声がかけられた。
「シエテさん。」
「スイちゃん。」
振り返ればやはり会いに行こうとしていた恋人がいて、思わず名前を呼ぶ声が弾んだ。うわ、俺恥ずかしいな。バレてないよね?
「なになに、スイちゃんもお兄さんに会いたくなっちゃった?」
自分の恥ずかしさを紛らわすためにわざと茶目っ気を入れながら言うと、スイちゃんは目を瞬かせてから少し俯いた。え、本当に?スイちゃんも会いたかったの??うわー!今凄く心臓ドキドキしてる!ティーンでもないのに、初恋の時みたいに心がギュッとなった。マスクの下の顔が見たいな。絶対可愛いんだろうなと身体が少し熱くなるのを感じながらスイちゃんを見つめていると、覚悟を決めたように顔が上がる。
しかしその顔は期待とは全く異なる表情を浮かべていた。
「もうやめてください。」
「…ん?」
言われた意味が分からず数度瞬きをする。
目の前のスイちゃんは変わらずしかめっ面で、瞳は拒絶と嫌悪が混じっていた。とても恋人に向けていいものではないそれに喉が絞まる。
「やめてって?」
「とぼけないでください。最近妙に周りと噛み合わないなと思ったら、グランにまで…。シエテさん、貴方本当になんのつもりなんですか。私は貴方と付き合ってないし恋人でもない。」
キーンと耳鳴りがする。この子は何を言っているのだろうか。わけも分からず混乱する俺を置いてスイはなおも捲し立てる。
「それにあれも貴方の仕業ですよね。」
そう言って彼女が話し出したのはこの前の男の事。その男が最近何者かに襲われたと痛ましげに話すスイに首を傾げた。
スイの音の価値を分からない馬鹿の鼓膜などいくら潰れても構わないだろう。スイを傷つける人間はきっとこの後も他の人を傷つける。だからあれは全空のためでもあるのに、スイは何故か険しい顔を崩さない。誰にでも優しい子、ではないのに。…と言うかスイを傷つけたくせに心配してもらってるとか、やっぱり殺せば良かった。
ほんと、迷惑な奴。
「何故貴方がこんな事をしているかは知りません。知りたくもない。でもこれだけは言っておきます。私はシエテさんとは恋人ではないし恋愛感情も持ってません。艇から降りろとは言いませんが、金輪際私に関わらないでください。」
「なにそれ。」
すっと体温が下がるのが分かる。それに比例して自身の声音が恐ろしく冷たくなった。先程までの幸福感は消え失せ、俺の腹からは見知った鉛のようなものが流れ出してきた。
びくりと肩を揺らし一歩後退るスイの腕を掴む。そのままぐっと引き寄せ距離を縮めた。顔の距離が近い。そう言えばキスすらしたことなかったな、俺達。
「言っていい冗談と悪い冗談の区別も出来ないの?あ、もしかして俺が空の平和を優先するから拗ねてるの。でも付き合う前にそれは話し合ってるよね。それにお前だってグランが1番じゃない。いつもいつもグランの近くにいて休みの日も一緒に出かけて、ピアノだってグランのために弾いてあげて。俺のことはいっつも後回しじゃないか。…それとも何、他に好きな奴がいるの。」
ギリギリと腕を掴む手に力が入っていく。痛みから逃れるために捻られたスイの身体はカタカタと震えていた。
「駄目だよそんなの。もし、スイが俺から離れてったら、俺、そいつに何するか分からないよ…?」
可能性がある人間の顔が頭の中にリストアップされていく。どんどん青ざめていくスイにあーあ、と口を尖らせた。かっこいい彼氏でいたかったのに。ヤキモチ焼いてるとことかかっこ悪いから見せたくなかったのになぁ。でもスイが不安だったからってタチの悪い冗談を言うのがいけないんだ。こんなこと言うほど溜め込む前に頼って欲しかった。いくらでも甘えてくれていいのに。
「スイも不安だったんだよね。大丈夫、俺はちゃんとお前を愛してるよ。でも俺もスイの言葉にはすっごく傷ついたから、仲直りしよう。
ねぇ、お前部屋、連れてってくれる?」
もともと今日1日イチャイチャする予定だったんだからいいよね。そう笑いかけた俺にスイは小さく悲鳴を漏らす。
あ、その顔もかわいー。