華の元JK、空を飛ぶ
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夜中にふと目が覚めた私は上着を一枚羽織り部屋を後にした。妙に寒いなと思いながら歩いていると、小窓から見える夜空に白い雪が舞っていて道理でと1人納得する。明日は朝から雪かきやら雪遊びやらで忙しくなるだろうなと微笑ましく思うも、やはり窓に映った顔は引きつっていた。
冬が嫌いだ。
元から寒いのは苦手だったが、自分の命も先生の命もこの世界の親も白銀の中に溶けて消え、独りの時は寒さと飢えで死にかけた私にとって冬は不吉の象徴だった。特に今日のようにハラハラと雪が振る日はその中に鮮血が見えてくる。記憶の投影だと分かっていてもなかなか堪えた。
はぁ、と1つため息を落として再び足を進めた。温かいものでも飲めばこんな静かな夜でも眠れるかもしれない。寝れなくても芯まで凍りそうな身体を解せる。そう思って寄った談話室の暖炉に火をつけた。湯が沸くまでまだ時間がかかりそうだ。暖炉の前のソファに腰掛けていると3回ノック音が聞こえた。
「マドモアゼル、いい子は寝る時間だよ。」
「ロベリアさん。」
こんばんは、と返す私に彼は肩を竦めながら部屋へと入ってきた。そしてそのまま近づいてきた彼は断りを入れてから隣へと腰掛ける。服装からして見張り当番ではないから、ロベリアさんも目が覚めたのだろう。
「寝れないのかい?」
「えぇ。こう静かだと逆に。」
「ふむ…。なら取っておきの音色を聞かせてあげよう。何、子守唄代わりと思えばいい。」
「いや、破壊音はちょっと…。」
「ノン。君の心に染みる音だ。」
彼の趣味は知っているので気乗りしない。けどあまりにもニコニコと笑ってどこから取り出したのか貝殻を差し出すので仕方なくそれを耳に当てた。ゆっくりと流れ出す音。思ったような激しい音ではないが、不思議な音だ。幾重にも重なっているような同じ音が一つだけ繰り返されているような。とにかく穏やかな音だった。
ほっと息を着く。そんな私にロベリアさんは優しく語りかけてくる。
「冬の海の音さ。雪が海面に溶けていく姿は本当に儚く美しい。」
「いいですね。これなら好きです。」
「くはっ。まだ根に持ってるのかい?」
当たり前だ。いきなり人が死ぬまでの拷問を録音したものを聞かされれば嫌でも記憶に残る。そう思ってジトッと睨むも彼は特に堪えた様子もなくニコニコとしている。まぁこの人に何を言ってもな。内心呆れながらまた耳を傾けた。
「冬も好きになれそうかい?」
貝殻から耳を離した。見上げたロベリアさんの瞳をじっと見つめながらふっと口元を和らげる。
「えぇ。でも、まだまだ眠れそうにはないです。だからもう少し私に付き合ってくれません?」
はた、とロベリアさんが目を瞬かせた。そして私と同じように目尻を下げると、少しだけ嬉しそうに声を弾ませる。
「君に誘われるとは思わなかった。けれど俺でよければ、眠れぬ夜のお供をしよう」
夜はまだまだふけそうにない。お喋り好きの彼ならばきっとこの雪の夜も苦にはならないだろうと、湧き上がったお湯で2人分のココアを作る。
パチパチと木が燃える音が響く中、不確かに揺らいでいた暖炉の火がしっかりと輪郭を持った。
冬が嫌いだ。
元から寒いのは苦手だったが、自分の命も先生の命もこの世界の親も白銀の中に溶けて消え、独りの時は寒さと飢えで死にかけた私にとって冬は不吉の象徴だった。特に今日のようにハラハラと雪が振る日はその中に鮮血が見えてくる。記憶の投影だと分かっていてもなかなか堪えた。
はぁ、と1つため息を落として再び足を進めた。温かいものでも飲めばこんな静かな夜でも眠れるかもしれない。寝れなくても芯まで凍りそうな身体を解せる。そう思って寄った談話室の暖炉に火をつけた。湯が沸くまでまだ時間がかかりそうだ。暖炉の前のソファに腰掛けていると3回ノック音が聞こえた。
「マドモアゼル、いい子は寝る時間だよ。」
「ロベリアさん。」
こんばんは、と返す私に彼は肩を竦めながら部屋へと入ってきた。そしてそのまま近づいてきた彼は断りを入れてから隣へと腰掛ける。服装からして見張り当番ではないから、ロベリアさんも目が覚めたのだろう。
「寝れないのかい?」
「えぇ。こう静かだと逆に。」
「ふむ…。なら取っておきの音色を聞かせてあげよう。何、子守唄代わりと思えばいい。」
「いや、破壊音はちょっと…。」
「ノン。君の心に染みる音だ。」
彼の趣味は知っているので気乗りしない。けどあまりにもニコニコと笑ってどこから取り出したのか貝殻を差し出すので仕方なくそれを耳に当てた。ゆっくりと流れ出す音。思ったような激しい音ではないが、不思議な音だ。幾重にも重なっているような同じ音が一つだけ繰り返されているような。とにかく穏やかな音だった。
ほっと息を着く。そんな私にロベリアさんは優しく語りかけてくる。
「冬の海の音さ。雪が海面に溶けていく姿は本当に儚く美しい。」
「いいですね。これなら好きです。」
「くはっ。まだ根に持ってるのかい?」
当たり前だ。いきなり人が死ぬまでの拷問を録音したものを聞かされれば嫌でも記憶に残る。そう思ってジトッと睨むも彼は特に堪えた様子もなくニコニコとしている。まぁこの人に何を言ってもな。内心呆れながらまた耳を傾けた。
「冬も好きになれそうかい?」
貝殻から耳を離した。見上げたロベリアさんの瞳をじっと見つめながらふっと口元を和らげる。
「えぇ。でも、まだまだ眠れそうにはないです。だからもう少し私に付き合ってくれません?」
はた、とロベリアさんが目を瞬かせた。そして私と同じように目尻を下げると、少しだけ嬉しそうに声を弾ませる。
「君に誘われるとは思わなかった。けれど俺でよければ、眠れぬ夜のお供をしよう」
夜はまだまだふけそうにない。お喋り好きの彼ならばきっとこの雪の夜も苦にはならないだろうと、湧き上がったお湯で2人分のココアを作る。
パチパチと木が燃える音が響く中、不確かに揺らいでいた暖炉の火がしっかりと輪郭を持った。