華の元JK、空を飛ぶ
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ビィの身体が気持ちよさそうにハンモックで揺れる昼下がり。使い込まれた剣を持ち森へと誘う血の繋がらない弟を追いかける。
あぁ、今日も憎らしいほど快晴だ。
黄色い線の後ろに、なんてアナウンスを聞かずともしっかりとそのルールを守っていたのにも関わらず、背中に受けた衝撃で宙に投げ出された私の身体は時速30kmで迫り来る鉄の塊と衝突した。
雪がハラハラと眼前を彩る、ピアノのコンクールで優勝した日のことだった。
痛みは一瞬だったが身体の倦怠感は重くのしかかりただただ暗い闇の中で漂い続けた。
生や死の概念すらなく四肢があるのかも解らぬまま、時間すら頭から消えた私はそれでもどこからか聞こえてくる川のせせらぎに縋り一筋の光へと向かった。
そして前世とは似ても似つかないこの世界で、私は新たな生命として誕生を果たした。
母しか愛さず母しか執着しない父と、そんな父に最愛を殺され無理矢理娶られた母。
そんな夫婦が上手くいくわけもなく、母の私に対しての虐待は日に日にエスカレートしていった。
産んでもらった事には感謝するが、育てて貰った恩はない。
もしこれが普通の子供なら我慢し続けたのだろうが、生憎中身はそこそこ優秀な学校に行っていた分別の着く元JK。
そうそうに家族に見切りをつけた私は死にたくない一心で大きな屋敷を飛び出した。
この国は世界でも1.2を争うほど制度や保証などがしっかりとしている所らしい。
それを知った時思ったのは、機関や施設に見つかったり助けを求めたりしたら体勢を気にする祖父にすぐに連れ戻されてしまうということ。
それだけは嫌だと毎日怯えながら路地裏で泥水を啜っていた。
路頭に迷い、絶望も涙も果てなく湧いてくる。
死にたくない、でもこのままではいずれ死んでしまう。
私が私のこれからの人生に多大なる影響を与えてくるエルーンの男性と会ったのは、そんなある日の事だった。
私を拾い上げたエルーンの男性ーマオ先生ことマリオルト・アルフォートさんとの生活は現代の甘い考えを抜きにしても決して幸せとは言えなかった。
壊れかけた先生からの教育と躾は恐ろしかった。しかし、エゴの中にある繊細で脆い愛を知り、教わる知識のその重要性にも逃げることは出来ず、偶に見せる正気に戻った時の優しさを心の糧に自身の転生した世界の知識を増やしていった。
そんな地獄と優しさを煮詰めた日々は、何の前触れもなく首を括った先生の最期で終わりを告げた。
ボロボロの身体を引き摺り、何処にもない居場所と安寧を求めて彷徨った。唯一の頼みは先生の遺品の武器と、ピアノだけ。それでも何とか生き続け、いつしか国を超え島を超え空を跨いで行き倒れたその場所が、グランのいるここザンクティンゼルだった。
すっかり疑心暗鬼になり奸悪になっていた私はそれはもう幾つか歳下のグランに迷惑をかけっぱなしだった。
しかし彼は私を見捨てるどころか共に住むことを提案しその正しい愛で接してくれた。
惨めで不甲斐なくて、それでも嬉しくて。グランとの日々はこの世界に来てから初めての安寧であり平和であった。
前を歩くグランの背中は初めて会った日から随分と成長した。けれどまだまだ幼いその姿に言い様のない感情がとぐろを巻く。
「グラン。」
「なに?」
少し先からグランが首を捻る。そんなに変わらない位置にある瞳が私の姿を映した。
「何でもない。」
その言葉にパチパチと目を瞬かせるグランはそのまま仕方ないと言う風に微笑んでみせた。
「変なスイ。」
優しくて暖かい私の宝物。
私を救ってくれたあの日から、私は貴方を愛し続けると決めた。例えその愛で溺れてしまっても、もう後悔なんてない。
あぁ、今日も憎らしいほど快晴だ。
黄色い線の後ろに、なんてアナウンスを聞かずともしっかりとそのルールを守っていたのにも関わらず、背中に受けた衝撃で宙に投げ出された私の身体は時速30kmで迫り来る鉄の塊と衝突した。
雪がハラハラと眼前を彩る、ピアノのコンクールで優勝した日のことだった。
痛みは一瞬だったが身体の倦怠感は重くのしかかりただただ暗い闇の中で漂い続けた。
生や死の概念すらなく四肢があるのかも解らぬまま、時間すら頭から消えた私はそれでもどこからか聞こえてくる川のせせらぎに縋り一筋の光へと向かった。
そして前世とは似ても似つかないこの世界で、私は新たな生命として誕生を果たした。
母しか愛さず母しか執着しない父と、そんな父に最愛を殺され無理矢理娶られた母。
そんな夫婦が上手くいくわけもなく、母の私に対しての虐待は日に日にエスカレートしていった。
産んでもらった事には感謝するが、育てて貰った恩はない。
もしこれが普通の子供なら我慢し続けたのだろうが、生憎中身はそこそこ優秀な学校に行っていた分別の着く元JK。
そうそうに家族に見切りをつけた私は死にたくない一心で大きな屋敷を飛び出した。
この国は世界でも1.2を争うほど制度や保証などがしっかりとしている所らしい。
それを知った時思ったのは、機関や施設に見つかったり助けを求めたりしたら体勢を気にする祖父にすぐに連れ戻されてしまうということ。
それだけは嫌だと毎日怯えながら路地裏で泥水を啜っていた。
路頭に迷い、絶望も涙も果てなく湧いてくる。
死にたくない、でもこのままではいずれ死んでしまう。
私が私のこれからの人生に多大なる影響を与えてくるエルーンの男性と会ったのは、そんなある日の事だった。
私を拾い上げたエルーンの男性ーマオ先生ことマリオルト・アルフォートさんとの生活は現代の甘い考えを抜きにしても決して幸せとは言えなかった。
壊れかけた先生からの教育と躾は恐ろしかった。しかし、エゴの中にある繊細で脆い愛を知り、教わる知識のその重要性にも逃げることは出来ず、偶に見せる正気に戻った時の優しさを心の糧に自身の転生した世界の知識を増やしていった。
そんな地獄と優しさを煮詰めた日々は、何の前触れもなく首を括った先生の最期で終わりを告げた。
ボロボロの身体を引き摺り、何処にもない居場所と安寧を求めて彷徨った。唯一の頼みは先生の遺品の武器と、ピアノだけ。それでも何とか生き続け、いつしか国を超え島を超え空を跨いで行き倒れたその場所が、グランのいるここザンクティンゼルだった。
すっかり疑心暗鬼になり奸悪になっていた私はそれはもう幾つか歳下のグランに迷惑をかけっぱなしだった。
しかし彼は私を見捨てるどころか共に住むことを提案しその正しい愛で接してくれた。
惨めで不甲斐なくて、それでも嬉しくて。グランとの日々はこの世界に来てから初めての安寧であり平和であった。
前を歩くグランの背中は初めて会った日から随分と成長した。けれどまだまだ幼いその姿に言い様のない感情がとぐろを巻く。
「グラン。」
「なに?」
少し先からグランが首を捻る。そんなに変わらない位置にある瞳が私の姿を映した。
「何でもない。」
その言葉にパチパチと目を瞬かせるグランはそのまま仕方ないと言う風に微笑んでみせた。
「変なスイ。」
優しくて暖かい私の宝物。
私を救ってくれたあの日から、私は貴方を愛し続けると決めた。例えその愛で溺れてしまっても、もう後悔なんてない。
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