六連星を翔ける君
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「はぁぁ〜…。」
学校の帰り道、さっき先生から渡された紙を握り締めて歩くオレの口から大きさため息が出た。
オレ、沢田綱吉は何をやってもダメダメだ。運動も出来ない、勉強も無理、根性もないし何をやってもミスばっか。しかも最近は突然来た赤ん坊のリボーンって奴のせいで日常はしっちゃかめっちゃかになるしで毎日騒がしくて仕方ない。…まぁ、あいつのおかげで京子ちゃんと話せるようになったけど。
「でもこれはなぁ〜…。」
そう言って持っていた紙、テストを目の前に広げる。ペケペケペケの全問不正解。見事な0点だ。こんなのリボーンに見せたらタダじゃ済まない。きっとまた修行とかなんとか言って理不尽な事されるんだ。ただでさえマフィアとか意味分かんないことさせられてんのに…、とまたため息が出た。
「くっそ〜…、こんなものっ!」
勢いよく手の中の紙をぐしゃぐしゃに丸め遠くに投げる。捨てたところで何にもならないけど現実から目を背けたくて思いっきり力を入れた。山本みたいに真っ直ぐに飛ぶことなくヘロヘロと弱々しく飛んだそれは、少し先を歩いていた学生の肩に当たった。あ、
「あ?誰だよ今俺のとこにゴミ投げたのは…。お前かぁ!」
ぎゃー!不良に当たった!!こんなことある?!内心滝のように汗をかくオレにそいつは真っ直ぐ向かってくる。どうしよう。絶対殴られる。逃げようとしたオレに、でもそいつの方が早くて胸ぐらを捕まれ足が宙に浮いた。
「ごめんなさいぃ!」
「謝って済むなら警察はいらねぇんだよ!」
怒り狂う不良の拳が迫ってくる。なんでこんな事に!!!咄嗟に両手を前に出すも意味無いことなんて分かってるわけで。この際リボーンでもいいから誰か助けてと内心叫びながら、次にくるであろう痛みにギュッと両目を閉じた。
「ねぇ。」
突然聞こえてきた声にピタ、とオレと不良の動きが止まった。聞いたことない女の人の声。まさか誰か助けに来てくれた…?恐る恐る目を開けて見た少し後ろにオレは息を飲んだ。
「私、通りたいの。邪魔なのだけど。」
柔らかい、なのに全く優しくない。こっちに話しかけているのにこっちを見ていない。そんな喋り方をする女の人。でも驚いたのはその喋り方じゃなくてその人の姿だった。
すっげー美人…。
思わず見惚れてしまったオレよりはやくハッと意識を取り戻した不良は、オレの胸ぐらを掴んだまま女の人の方へ顔を向けると声を荒らげた。
「誰だてめぇは!」
「だから通りたいの。2回も言わせないで。」
微妙に噛み合わない会話に目に見えて不良の顔が赤くなる。やばい、と思った時にはオレは地面に落とされ尻を打っていた。痛い。うめき声を上げるオレを置いて不良はどんどん女の人の方へ歩いていく。
「女の分際でナマ言うなよ。」
「私は避けてって言ってるの。貴方と話したいなんて言ってないわよ。早く退いてしてくれない?」
「ってめぇ!」
遂に爆発した不良の怒りはそのまま拳となって女の人の方へ向かっていく。
「っ、やめろ!」
オレは咄嗟に身体を動かした。誰か助けてとは思ったがこんな事望んでない。死ぬ気モードでもないオレに勝ち目なんてないけど、目の前で誰かが傷つくのを止められないなんて、ましてや女の子が傷つくなんて死んでも死にきれない。
勢いよく不良と女の人の間に入ると目一杯両手を広げた。あぁ、痛いんだろうな。やっぱり今日厄日か何かだろうか。迫り来る拳の威力を想像しながらオレは固く目を閉じるしかなかった。
と、
ヒュンッ
「ぅ、がっっ!!」
風を切る音が聞こえたかと思うと、次いでバキッと言う鈍い音と低いうめき声が響いて驚いて目を開いてしまった。
「え?!」
不良がいない。いや、いないんじゃない。地面に倒れている。何が起きたんだ??頭の中に疑問符が浮かんでいるオレは少し視線を横に向けると更に声を上げてしまった。
「んなー!!」
オレの真横を通って後ろから足が伸びていた。
「この靴おろしたてなの。硬かったでしょ?」
そう言って何事もなく足を下ろす女の人。喧嘩なんてしたことなさそうな、それこそハルが前なりたいって言っていた"お淑やかなレディ"まんまな見た目の人なのに、その蹴りは自分より倍近くある男を一瞬で倒してしまうものだった。あまりの急展開に固まったまま動けないでいると女の人は服を整え颯爽と歩き出す。
女の人がおろしたてと言った踵の高い革靴がコツコツと鳴るのを唖然としていると、その人はしゃがみこみ何か白く丸い物を拾い上げた。
「何これ。」
「あ、それはっ!」
ガサガサと乾いた音をたてながら開かれていくのはこの状況のきっかけとなったあまりにも酷いオレのテストだった。慌てて取り返そうとするも女の人の方がオレより身長が高いせいで手は届かず無惨にも紙は本来の形に戻ってしまった。
「『沢田綱吉 0点』って、君の?これ。」
「あ、あはは…。」
笑うしかねー…。他人に、しかも女の人に見られたショックで顔が引き攣る。しかし女の人は気にした様子もなくはい、とテストをこちらに手渡してきた。
「オレ、勉強苦手で…。」
「そうなの。」
せめてもの言い訳、にもならないような言葉を吐きながら受け取るも目が合うこともなく一刀両断された。テストも見られて不良から助けて貰ってオレ、情けなさすぎる…。
「ところで、なんで間に入ったの?」
「え?」
「勝てなかったのでしょう。なんで向かって来たの?」
質問と言うにはあまりにも感情のない声音にうっ、と言葉が詰まる。興味ないなら聞いてくるなよと内心口を尖らせながらオレはごにょごにょと言った。
「身体が動いたから…。」
「身体が動く?それは無意識ってこと?なんで?」
「なんでって…。」
なんでこんなグイグイ来るんだ?さっきまでまるでオレのことなんて見えてないみたいだったのに、今の女の人の目はずっとオレを見据えている。…まつ毛長いなぁ。瞳もカラコン?みたいなのじゃないのにキラキラしてる。なんて思っていると女の人が『見とれなくていいから』と言ってきた。確かに見とれてたけど自分で言うか?何となく違和感を感じたけど女の人は特におかしいと思ってないらしく、その綺麗な顔に少し眉を寄せ急かしてくる。
なんで、って言われても…。ただ目の前で誰かが傷つくのが見たくなくて、咄嗟に身体が動いただけだ。だからオレはそれをそのまま女の人に伝えた。
「傷ついて欲しくなかった…、から。」
その言葉に女の人の目が見開く。そしてそのまま手を顎に当て何やら考え始めてしまった。オレなんか変なこと言ったか…?無言の時間が続く中、どうにも居心地悪くなってきたオレはソワソワと目線をさ迷わせた。
「あー、兎に角ありがとうございました!じゃ、オレはこれで!」
そう言い女の人の反応も見ずにオレはその場に背を向けた。ビアンキと同じくらい綺麗な人だけど、ビアンキ以上に変わった人だ。何だか面倒事の気配がしてもう二度と関わりたくないなぁと思いながらオレは家へとまた歩き出した。
そんなオレの背中を女の人の星のように煌めく瞳がいつまでも見詰め続けていた。
学校の帰り道、さっき先生から渡された紙を握り締めて歩くオレの口から大きさため息が出た。
オレ、沢田綱吉は何をやってもダメダメだ。運動も出来ない、勉強も無理、根性もないし何をやってもミスばっか。しかも最近は突然来た赤ん坊のリボーンって奴のせいで日常はしっちゃかめっちゃかになるしで毎日騒がしくて仕方ない。…まぁ、あいつのおかげで京子ちゃんと話せるようになったけど。
「でもこれはなぁ〜…。」
そう言って持っていた紙、テストを目の前に広げる。ペケペケペケの全問不正解。見事な0点だ。こんなのリボーンに見せたらタダじゃ済まない。きっとまた修行とかなんとか言って理不尽な事されるんだ。ただでさえマフィアとか意味分かんないことさせられてんのに…、とまたため息が出た。
「くっそ〜…、こんなものっ!」
勢いよく手の中の紙をぐしゃぐしゃに丸め遠くに投げる。捨てたところで何にもならないけど現実から目を背けたくて思いっきり力を入れた。山本みたいに真っ直ぐに飛ぶことなくヘロヘロと弱々しく飛んだそれは、少し先を歩いていた学生の肩に当たった。あ、
「あ?誰だよ今俺のとこにゴミ投げたのは…。お前かぁ!」
ぎゃー!不良に当たった!!こんなことある?!内心滝のように汗をかくオレにそいつは真っ直ぐ向かってくる。どうしよう。絶対殴られる。逃げようとしたオレに、でもそいつの方が早くて胸ぐらを捕まれ足が宙に浮いた。
「ごめんなさいぃ!」
「謝って済むなら警察はいらねぇんだよ!」
怒り狂う不良の拳が迫ってくる。なんでこんな事に!!!咄嗟に両手を前に出すも意味無いことなんて分かってるわけで。この際リボーンでもいいから誰か助けてと内心叫びながら、次にくるであろう痛みにギュッと両目を閉じた。
「ねぇ。」
突然聞こえてきた声にピタ、とオレと不良の動きが止まった。聞いたことない女の人の声。まさか誰か助けに来てくれた…?恐る恐る目を開けて見た少し後ろにオレは息を飲んだ。
「私、通りたいの。邪魔なのだけど。」
柔らかい、なのに全く優しくない。こっちに話しかけているのにこっちを見ていない。そんな喋り方をする女の人。でも驚いたのはその喋り方じゃなくてその人の姿だった。
すっげー美人…。
思わず見惚れてしまったオレよりはやくハッと意識を取り戻した不良は、オレの胸ぐらを掴んだまま女の人の方へ顔を向けると声を荒らげた。
「誰だてめぇは!」
「だから通りたいの。2回も言わせないで。」
微妙に噛み合わない会話に目に見えて不良の顔が赤くなる。やばい、と思った時にはオレは地面に落とされ尻を打っていた。痛い。うめき声を上げるオレを置いて不良はどんどん女の人の方へ歩いていく。
「女の分際でナマ言うなよ。」
「私は避けてって言ってるの。貴方と話したいなんて言ってないわよ。早く退いてしてくれない?」
「ってめぇ!」
遂に爆発した不良の怒りはそのまま拳となって女の人の方へ向かっていく。
「っ、やめろ!」
オレは咄嗟に身体を動かした。誰か助けてとは思ったがこんな事望んでない。死ぬ気モードでもないオレに勝ち目なんてないけど、目の前で誰かが傷つくのを止められないなんて、ましてや女の子が傷つくなんて死んでも死にきれない。
勢いよく不良と女の人の間に入ると目一杯両手を広げた。あぁ、痛いんだろうな。やっぱり今日厄日か何かだろうか。迫り来る拳の威力を想像しながらオレは固く目を閉じるしかなかった。
と、
ヒュンッ
「ぅ、がっっ!!」
風を切る音が聞こえたかと思うと、次いでバキッと言う鈍い音と低いうめき声が響いて驚いて目を開いてしまった。
「え?!」
不良がいない。いや、いないんじゃない。地面に倒れている。何が起きたんだ??頭の中に疑問符が浮かんでいるオレは少し視線を横に向けると更に声を上げてしまった。
「んなー!!」
オレの真横を通って後ろから足が伸びていた。
「この靴おろしたてなの。硬かったでしょ?」
そう言って何事もなく足を下ろす女の人。喧嘩なんてしたことなさそうな、それこそハルが前なりたいって言っていた"お淑やかなレディ"まんまな見た目の人なのに、その蹴りは自分より倍近くある男を一瞬で倒してしまうものだった。あまりの急展開に固まったまま動けないでいると女の人は服を整え颯爽と歩き出す。
女の人がおろしたてと言った踵の高い革靴がコツコツと鳴るのを唖然としていると、その人はしゃがみこみ何か白く丸い物を拾い上げた。
「何これ。」
「あ、それはっ!」
ガサガサと乾いた音をたてながら開かれていくのはこの状況のきっかけとなったあまりにも酷いオレのテストだった。慌てて取り返そうとするも女の人の方がオレより身長が高いせいで手は届かず無惨にも紙は本来の形に戻ってしまった。
「『沢田綱吉 0点』って、君の?これ。」
「あ、あはは…。」
笑うしかねー…。他人に、しかも女の人に見られたショックで顔が引き攣る。しかし女の人は気にした様子もなくはい、とテストをこちらに手渡してきた。
「オレ、勉強苦手で…。」
「そうなの。」
せめてもの言い訳、にもならないような言葉を吐きながら受け取るも目が合うこともなく一刀両断された。テストも見られて不良から助けて貰ってオレ、情けなさすぎる…。
「ところで、なんで間に入ったの?」
「え?」
「勝てなかったのでしょう。なんで向かって来たの?」
質問と言うにはあまりにも感情のない声音にうっ、と言葉が詰まる。興味ないなら聞いてくるなよと内心口を尖らせながらオレはごにょごにょと言った。
「身体が動いたから…。」
「身体が動く?それは無意識ってこと?なんで?」
「なんでって…。」
なんでこんなグイグイ来るんだ?さっきまでまるでオレのことなんて見えてないみたいだったのに、今の女の人の目はずっとオレを見据えている。…まつ毛長いなぁ。瞳もカラコン?みたいなのじゃないのにキラキラしてる。なんて思っていると女の人が『見とれなくていいから』と言ってきた。確かに見とれてたけど自分で言うか?何となく違和感を感じたけど女の人は特におかしいと思ってないらしく、その綺麗な顔に少し眉を寄せ急かしてくる。
なんで、って言われても…。ただ目の前で誰かが傷つくのが見たくなくて、咄嗟に身体が動いただけだ。だからオレはそれをそのまま女の人に伝えた。
「傷ついて欲しくなかった…、から。」
その言葉に女の人の目が見開く。そしてそのまま手を顎に当て何やら考え始めてしまった。オレなんか変なこと言ったか…?無言の時間が続く中、どうにも居心地悪くなってきたオレはソワソワと目線をさ迷わせた。
「あー、兎に角ありがとうございました!じゃ、オレはこれで!」
そう言い女の人の反応も見ずにオレはその場に背を向けた。ビアンキと同じくらい綺麗な人だけど、ビアンキ以上に変わった人だ。何だか面倒事の気配がしてもう二度と関わりたくないなぁと思いながらオレは家へとまた歩き出した。
そんなオレの背中を女の人の星のように煌めく瞳がいつまでも見詰め続けていた。
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