軍刀女士の大戦記
空欄の場合は夕凪になります
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刀剣には個体差というものがある。
ある一種の、好みの味や苦手なものなどが異なることを指すこの言葉は審神者界では少し違う使い方をする。
刀剣達は本霊から降ろされた分霊であるので元来の性格をそのままに依代に入る。しかし、偶に偶然が重なり通常の個体とは異なるものが鍛刀される。静かな鶴丸国永バーサーカーな江雪左文字よく喋る鳴狐などなど、上げればキリがないがそれは全てを総称して審神者達は『個体差』と呼んでいた。
本日第一部隊を引っさげてここ美濃国の演練場に来た歌仙は仲間達を先に行かせ、珍しく着いてきた主であるイズモが隣で馬鹿みたいに口をポカンと開けているのに眉を寄せた。
「主、そんな顔をするんじゃない。みっともないよ。」
「いや、でも、歌仙あれ…。」
歌仙に叱られてやっと筆を持つその細い指が前を指す。その先を目で追うと今度は歌仙も同じように目を丸めた。
あの徘徊老人とかボケ老人とか言われるほどすぐ何処かへ行ったり最初からいなかったりする他者に世話をさせることに愉しみを見出している三日月宗近が、厳格さと冷静さを持ち最年少ながらも近頃隊長や近侍を任されることが多いしっかり者の夕凪を、肩を怒らせ、眉を寄せ、それでもしっかりと手を握り、まるで迷子を導くかのように先導している。
イズモの本丸にこの二振りはいない。しかし決して広いとは言えない審神者界隈では情報はすぐに出回るもので、だからこそ目の前の光景が信じられず自身の働きすぎを疑い頭を振った。
周りを見ても近侍の歌仙のように目を瞬かせたり驚いたりと中々にざわついている。しかし、当の本人達はどこ吹く風でずんずんと歩いている。
これが個体差か…。
しみじみと知識を噛み締めていると、ふと、三日月の浮かぶその独特の瞳とイズモの目がかち合う。すると三日月宗近は引いた手はそのままにこちらへと進行方向を変え向かってきた。
「歌仙、やばい。なんかこっち来てるんだけど。」
「君が不躾に見ていたからじゃないか。」
「それは歌仙もじゃん!やばいよ、三日月怒らせたら俺、「もし、そこの審神者よ。」
凛とした涼やかな声にビクリと肩を跳ねさせたイズモは恐る恐る歌仙へと向けていた顔を動かす。うわっめっちゃ顔がいい。
高い位置にあるご尊顔に少々目を細めたイズモに軽くため息を吐いて、ほんの少しだけ歌仙は警戒した。
「す、す、すみません、見すぎました。いや、でもちょっと珍しくって、それでですね。」
「虎の門はどこにある?」
どもりながら謝ろうとするイズモなど関係ないかのように三日月宗近は要件を伝える。それに拍子抜けしたイズモは、虎の門、と復唱しながら西の方にある白い鳥居を思い出す。東西南北の守護神をモチーフにした門の中で虎の門は政府と繋がる唯一の場所だ。
確か、この出店通りを少し行った右の細い路地が近道だったはずだとイズモはすぐに三日月宗近にそのことを伝えようとして、ふと、視線を感じ目を移した。
じっと見つめてくるのは穢れを知らない無垢な灰色。その赤子のような瞳にやはり随分前に見た夕凪とは全く違うものを感じた。それが畏怖の念に類似したものだと気づくより先に、薄く色付く形の良い唇に音が乗る。
「貴方なら、大丈夫そうですね。」
鈴というほど柔らかくない、筋の通る凪いだ声だった。淡く微笑んだその優しげな目元に言葉の意味を聞くより先にぽぅっと見惚れる。女士とは言えど恐ろしく顔が良い。
しかし、慌てふためく三日月宗近はそんなイズモをお構い無しに夕凪の肩を掴み揺さぶりながら声を荒らげた。
「待て夕凪、いきなりどうしたのだ。しかもこの様な素性の知れぬ者を。」
「三日月殿この方なら心配いりません。」
「しかし…!」
こちらには理解できない事で言い争う二振りに歌仙は何となく不穏を感じ惚けている自分の主の脇腹を小突く。はっと我に返ったイズモよりも少し前に出て後ろ手にしながら未だ小競り合いーと言っても三日月宗近が言い募っているだけだがーを続ける二振りに咳払いをした。
「申し訳ないんだが、僕達はこれから用事がある。仲間も待たせているんだ。もう行ってもいいかな?」
「あぁ、それは大変失礼を。大丈夫です直ぐに済みます。」
済む?
歌仙の疑問もつゆ知らず肩を掴んでいた三日月宗近の手を無理矢理離しイズモに向き合った夕凪は襟を正すとごく自然な動作で右手を差し出してきた。
「軍刀 夕凪。無銘なサーベル型ですが立派な日本刀ですよ。」
それは紛れもない軍刀 夕凪を手に入れた時の口上で。
歌仙が驚愕し三日月宗近の殺気が膨れ上がって、それでもニコニコと笑う夕凪達神の前で唖然とするイズモはその日、ほぼ強制的に初の刀剣女士である軍刀の『主』となったのだった。
後日、イズモの本丸に元ブラック本丸産として三日月宗近とセットで来た二振りにイズモの黄色い悲鳴と歌仙の雅をが殴り捨てた怒号が響く事になるとはこの時まだ誰も知らない。
入手ボイスー『軍刀 夕凪。無銘なサーベル型ですが立派な日本刀ですよ。』
補足・ポケ〇ンのモンスターボールみたいに鍛刀でない限り気に入らなければ刀剣達は口上(入手ボイス)を言わない設定。
口上=貴方が主
ある一種の、好みの味や苦手なものなどが異なることを指すこの言葉は審神者界では少し違う使い方をする。
刀剣達は本霊から降ろされた分霊であるので元来の性格をそのままに依代に入る。しかし、偶に偶然が重なり通常の個体とは異なるものが鍛刀される。静かな鶴丸国永バーサーカーな江雪左文字よく喋る鳴狐などなど、上げればキリがないがそれは全てを総称して審神者達は『個体差』と呼んでいた。
本日第一部隊を引っさげてここ美濃国の演練場に来た歌仙は仲間達を先に行かせ、珍しく着いてきた主であるイズモが隣で馬鹿みたいに口をポカンと開けているのに眉を寄せた。
「主、そんな顔をするんじゃない。みっともないよ。」
「いや、でも、歌仙あれ…。」
歌仙に叱られてやっと筆を持つその細い指が前を指す。その先を目で追うと今度は歌仙も同じように目を丸めた。
あの徘徊老人とかボケ老人とか言われるほどすぐ何処かへ行ったり最初からいなかったりする他者に世話をさせることに愉しみを見出している三日月宗近が、厳格さと冷静さを持ち最年少ながらも近頃隊長や近侍を任されることが多いしっかり者の夕凪を、肩を怒らせ、眉を寄せ、それでもしっかりと手を握り、まるで迷子を導くかのように先導している。
イズモの本丸にこの二振りはいない。しかし決して広いとは言えない審神者界隈では情報はすぐに出回るもので、だからこそ目の前の光景が信じられず自身の働きすぎを疑い頭を振った。
周りを見ても近侍の歌仙のように目を瞬かせたり驚いたりと中々にざわついている。しかし、当の本人達はどこ吹く風でずんずんと歩いている。
これが個体差か…。
しみじみと知識を噛み締めていると、ふと、三日月の浮かぶその独特の瞳とイズモの目がかち合う。すると三日月宗近は引いた手はそのままにこちらへと進行方向を変え向かってきた。
「歌仙、やばい。なんかこっち来てるんだけど。」
「君が不躾に見ていたからじゃないか。」
「それは歌仙もじゃん!やばいよ、三日月怒らせたら俺、「もし、そこの審神者よ。」
凛とした涼やかな声にビクリと肩を跳ねさせたイズモは恐る恐る歌仙へと向けていた顔を動かす。うわっめっちゃ顔がいい。
高い位置にあるご尊顔に少々目を細めたイズモに軽くため息を吐いて、ほんの少しだけ歌仙は警戒した。
「す、す、すみません、見すぎました。いや、でもちょっと珍しくって、それでですね。」
「虎の門はどこにある?」
どもりながら謝ろうとするイズモなど関係ないかのように三日月宗近は要件を伝える。それに拍子抜けしたイズモは、虎の門、と復唱しながら西の方にある白い鳥居を思い出す。東西南北の守護神をモチーフにした門の中で虎の門は政府と繋がる唯一の場所だ。
確か、この出店通りを少し行った右の細い路地が近道だったはずだとイズモはすぐに三日月宗近にそのことを伝えようとして、ふと、視線を感じ目を移した。
じっと見つめてくるのは穢れを知らない無垢な灰色。その赤子のような瞳にやはり随分前に見た夕凪とは全く違うものを感じた。それが畏怖の念に類似したものだと気づくより先に、薄く色付く形の良い唇に音が乗る。
「貴方なら、大丈夫そうですね。」
鈴というほど柔らかくない、筋の通る凪いだ声だった。淡く微笑んだその優しげな目元に言葉の意味を聞くより先にぽぅっと見惚れる。女士とは言えど恐ろしく顔が良い。
しかし、慌てふためく三日月宗近はそんなイズモをお構い無しに夕凪の肩を掴み揺さぶりながら声を荒らげた。
「待て夕凪、いきなりどうしたのだ。しかもこの様な素性の知れぬ者を。」
「三日月殿この方なら心配いりません。」
「しかし…!」
こちらには理解できない事で言い争う二振りに歌仙は何となく不穏を感じ惚けている自分の主の脇腹を小突く。はっと我に返ったイズモよりも少し前に出て後ろ手にしながら未だ小競り合いーと言っても三日月宗近が言い募っているだけだがーを続ける二振りに咳払いをした。
「申し訳ないんだが、僕達はこれから用事がある。仲間も待たせているんだ。もう行ってもいいかな?」
「あぁ、それは大変失礼を。大丈夫です直ぐに済みます。」
済む?
歌仙の疑問もつゆ知らず肩を掴んでいた三日月宗近の手を無理矢理離しイズモに向き合った夕凪は襟を正すとごく自然な動作で右手を差し出してきた。
「軍刀 夕凪。無銘なサーベル型ですが立派な日本刀ですよ。」
それは紛れもない軍刀 夕凪を手に入れた時の口上で。
歌仙が驚愕し三日月宗近の殺気が膨れ上がって、それでもニコニコと笑う夕凪達神の前で唖然とするイズモはその日、ほぼ強制的に初の刀剣女士である軍刀の『主』となったのだった。
後日、イズモの本丸に元ブラック本丸産として三日月宗近とセットで来た二振りにイズモの黄色い悲鳴と歌仙の雅をが殴り捨てた怒号が響く事になるとはこの時まだ誰も知らない。
入手ボイスー『軍刀 夕凪。無銘なサーベル型ですが立派な日本刀ですよ。』
補足・ポケ〇ンのモンスターボールみたいに鍛刀でない限り気に入らなければ刀剣達は口上(入手ボイス)を言わない設定。
口上=貴方が主