小エビとウツボとウミヘビと、時々怪奇
「取り敢えず歩くか。誰もいないとは思うが何が起こるか分からないからな。どこかで武器を調達したい。」
ジャミルの言葉に監督生も頷く。意外にもフロイドも協力的で、いつもの気分屋は鳴りを潜めていた。やはりあのフロイド先輩でも怖いのか…。場違いだが監督生は少し嬉しかった。
と、その時
キーンコーンカーンコーン
ノイズ混じりのベルの音が辺り一体に響き渡る。あまりの音量の大きさに監督生達は咄嗟に耳を塞いだも、ガンガンと鼓膜は殴られ続けた。痛い。振動で身体が揺れる。
『縺翫?繧医≧縺斐*縺?∪縺吶?よ肢讌ュ縺悟ァ九∪繧翫∪縺吶???溘d縺九↓逋サ譬。縺励∪縺励g縺??』
同じくらいの音量で、地響きの中流れ出した放送を3人は覆った耳の隙間から聞き取った。
ガサガサとしているのに明るくハリのある声。
若い女の声だ。
繰り返し同じ音量で流れたそれは、そのまままた伸びたテープのようなベルの音で締めくくられた。
まだ耳は痛い。グワングワンと揺れる鼓膜が落ち着いたのを見計らってフロイドは両手を離した。
「う、っせぇなぁ。なにあれ。」
「人の声に聞こえたが…。内容は聞き取れなかった。何語だ?あれは。」
「え…。」
ジャミルの言葉に監督生が呟く。そしてサッと青ざめた顔のまま俯いてしまった。
フロイドとジャミルにはただ爆音で意味不明な声が聞こえたに過ぎなかったが、監督生にはしっかりと言葉として聞き取れていた。それが気味悪くて震える監督生を宥めながらフロイドは聞こえた内容を問う。
「朝の挨拶と、授業が始まるから速く登校しろ、って…。」
「普通の事言ってんのが余計キモイ。」
やはり行くしかないのか。フロイドはずっと目を逸らしていた建物をしっかりと見据える。
茶色いような黒いような、長年使用されて汚れた塀を挟んだ向こうにある、監督生が『ショウガッコウ』と呼んだそれ。
コンクリートの外壁でできた3階建てで1階の出っ張った部分にはガラスで出来た扉があり、そのまま真っ直ぐ上へと伸びた先には大きな時計があった。時計版は元はきっと白かったのだろうが、周りを囲う金具のせいで赤茶色に錆びており数字もところどころ霞んでいる。分針は壊れる寸前のように6のところで小刻み揺れていた。
2、3階には等間隔にガラス窓がはめ込まれていた。ヒビはなくどこからかの光を反射している物もある。しかし中は異様に暗く、人の影は見えず生き物がいるとは思えない。
全体的に陰鬱として禍々しい空気に包まれるそれに、フロイドは自身の兄弟がキノコを部屋に大量に持ってきた時以上に顔を顰める。
監督生もまさか母校がこんなことになっているとは思わずショックを隠せなかった。こんな形で見たくなかった。タイムカプセルを掘り起こすとかで来たかった。しかしあの耳が壊れそうな放送は学校から流れていたし、どう考えたってここ以外に帰るための鍵があるとは思えなかった。
「…行きます?」
やっぱりちょっと、いや大分行きたくない監督生は物凄く顔を顰めながら指を指す。ジャミルは顔を引き攣らせフロイドは肩に力を入れた。
嫌だ、本当に行きたくない。でも現状先程の放送以外に人がいた形跡がないので行くしかない。
「あぁ〜。こんなことならウミヘビくんだけに任せてサボれば良かったぁ!」
「俺も同じだ。」
まぁ気まぐれなフロイドにそこそこ優等生で通してるジャミルが出来るかどうかは別として。ジャミルはカリムが起こした面倒事を始末する時以上に大きなため息をこぼした。
だが、とジャミルはダレながら抱きつくフロイドとそれを踏ん張って耐えている監督生を見る。フロイドは気分屋で気難しい男だが力も頭の回転も申し分ない男だ。荒事にも慣れている。監督生もその実肝の座り方が半端ではない。咄嗟の判断も速く、魔法が使えない故の閃きはジャミル達では出せないものがある。それに差異はあってもここの事を多少知っているらしいのは有難い。言葉も唯一聞き取れるようだし、これからの探索に大いに役立つだろう。
これがもしもっと別の奴だったら…。
「今頃もう全滅かもな。」
「えっなんですかいきなり。怖い事言わないでくださいよ。」
「ウミヘビくん空気読めよ。」
悪い悪いと大して悪びれた様子もなくジャミルは嫌な顔をする2人に並び立つ。
見つめる先の『ショウガッコウ』。何が起こるか分からない恐怖は、先程より和らいでいた。
「準備はいいな?」
「おっけー。」
「大丈夫です。あ、円陣組みます?」
「嫌だよだせぇ。」
「だな。ここからは自己責任だ。」
でも絶対3人で生きて帰るぞ。
ジャミルの言葉にコクリと頷くフロイドと監督生と共に、3人は境界に足を踏み入れた。
ジャミルの言葉に監督生も頷く。意外にもフロイドも協力的で、いつもの気分屋は鳴りを潜めていた。やはりあのフロイド先輩でも怖いのか…。場違いだが監督生は少し嬉しかった。
と、その時
キーンコーンカーンコーン
ノイズ混じりのベルの音が辺り一体に響き渡る。あまりの音量の大きさに監督生達は咄嗟に耳を塞いだも、ガンガンと鼓膜は殴られ続けた。痛い。振動で身体が揺れる。
『縺翫?繧医≧縺斐*縺?∪縺吶?よ肢讌ュ縺悟ァ九∪繧翫∪縺吶???溘d縺九↓逋サ譬。縺励∪縺励g縺??』
同じくらいの音量で、地響きの中流れ出した放送を3人は覆った耳の隙間から聞き取った。
ガサガサとしているのに明るくハリのある声。
若い女の声だ。
繰り返し同じ音量で流れたそれは、そのまままた伸びたテープのようなベルの音で締めくくられた。
まだ耳は痛い。グワングワンと揺れる鼓膜が落ち着いたのを見計らってフロイドは両手を離した。
「う、っせぇなぁ。なにあれ。」
「人の声に聞こえたが…。内容は聞き取れなかった。何語だ?あれは。」
「え…。」
ジャミルの言葉に監督生が呟く。そしてサッと青ざめた顔のまま俯いてしまった。
フロイドとジャミルにはただ爆音で意味不明な声が聞こえたに過ぎなかったが、監督生にはしっかりと言葉として聞き取れていた。それが気味悪くて震える監督生を宥めながらフロイドは聞こえた内容を問う。
「朝の挨拶と、授業が始まるから速く登校しろ、って…。」
「普通の事言ってんのが余計キモイ。」
やはり行くしかないのか。フロイドはずっと目を逸らしていた建物をしっかりと見据える。
茶色いような黒いような、長年使用されて汚れた塀を挟んだ向こうにある、監督生が『ショウガッコウ』と呼んだそれ。
コンクリートの外壁でできた3階建てで1階の出っ張った部分にはガラスで出来た扉があり、そのまま真っ直ぐ上へと伸びた先には大きな時計があった。時計版は元はきっと白かったのだろうが、周りを囲う金具のせいで赤茶色に錆びており数字もところどころ霞んでいる。分針は壊れる寸前のように6のところで小刻み揺れていた。
2、3階には等間隔にガラス窓がはめ込まれていた。ヒビはなくどこからかの光を反射している物もある。しかし中は異様に暗く、人の影は見えず生き物がいるとは思えない。
全体的に陰鬱として禍々しい空気に包まれるそれに、フロイドは自身の兄弟がキノコを部屋に大量に持ってきた時以上に顔を顰める。
監督生もまさか母校がこんなことになっているとは思わずショックを隠せなかった。こんな形で見たくなかった。タイムカプセルを掘り起こすとかで来たかった。しかしあの耳が壊れそうな放送は学校から流れていたし、どう考えたってここ以外に帰るための鍵があるとは思えなかった。
「…行きます?」
やっぱりちょっと、いや大分行きたくない監督生は物凄く顔を顰めながら指を指す。ジャミルは顔を引き攣らせフロイドは肩に力を入れた。
嫌だ、本当に行きたくない。でも現状先程の放送以外に人がいた形跡がないので行くしかない。
「あぁ〜。こんなことならウミヘビくんだけに任せてサボれば良かったぁ!」
「俺も同じだ。」
まぁ気まぐれなフロイドにそこそこ優等生で通してるジャミルが出来るかどうかは別として。ジャミルはカリムが起こした面倒事を始末する時以上に大きなため息をこぼした。
だが、とジャミルはダレながら抱きつくフロイドとそれを踏ん張って耐えている監督生を見る。フロイドは気分屋で気難しい男だが力も頭の回転も申し分ない男だ。荒事にも慣れている。監督生もその実肝の座り方が半端ではない。咄嗟の判断も速く、魔法が使えない故の閃きはジャミル達では出せないものがある。それに差異はあってもここの事を多少知っているらしいのは有難い。言葉も唯一聞き取れるようだし、これからの探索に大いに役立つだろう。
これがもしもっと別の奴だったら…。
「今頃もう全滅かもな。」
「えっなんですかいきなり。怖い事言わないでくださいよ。」
「ウミヘビくん空気読めよ。」
悪い悪いと大して悪びれた様子もなくジャミルは嫌な顔をする2人に並び立つ。
見つめる先の『ショウガッコウ』。何が起こるか分からない恐怖は、先程より和らいでいた。
「準備はいいな?」
「おっけー。」
「大丈夫です。あ、円陣組みます?」
「嫌だよだせぇ。」
「だな。ここからは自己責任だ。」
でも絶対3人で生きて帰るぞ。
ジャミルの言葉にコクリと頷くフロイドと監督生と共に、3人は境界に足を踏み入れた。