小エビとウツボとウミヘビと、時々怪奇
ゆったりと静かで優しい、けれどどこか寂しい曲が流れ続ける。
あれからどれ程時間が経ったか分からないが、結局『あれ』が来ることも何かが襲ってくることもなく3人は休憩も兼ねて室内の椅子に腰掛けた。
濡れた身体は音楽準備室にあった雑巾で拭いたが水気の多い物はどうすることも出来ずフロイドはブレザーと靴下を脱ぎ捨てた。監督生とジャミルはフロイド程寒さに強くないので楽器にかけてあった毛布を身体に巻き暖を取る。寒さが多少マシになったせいか、緊張が解けて身体に疲労が回り始めた。
「これも監督生のところの音楽か?」
ジャミルの言葉にボーッとしていた監督生はゆっくりと瞬きをした。
「はい。確か題名は、『月の光』だったっけな。」
「いい曲だねぇ。」
フロイドの口からほ、っとため息が出る。
ここに来て初めて心から落ち着けた気がした。ジャミルも耳を傾け曲に集中する。決して大きな音の波はないが、それが尚更月光のような淡い雰囲気を醸し出していた。
「でも作曲者のドビュッシーって人、結構な問題児だったらしいんですよ。女性関係のだらしなさとか。」
「どこの世界も一緒だな。こっちにもレンデラと言う音楽家がいるが、浮気に次ぐ浮気で恋人に刺されてる。」
「あぁアイツか。この前もなんかニュースになってなかったっけ。」
監督生はそうなんですねと返しながら、まるでいつものように教室で雑談している気分になった。学園長からの雑用をこなしエースとデュースと遊んで、グリムとオンボロ寮のゴースト達に今日あったことを話す。そんないつもの代わり映えのない日々が今では物凄く恋しい。それはジャミルとフロイドも同じで、穏やかな今思い出すのは学校での何ともない日常だった。
全部ドッキリか何かだったらいいのに。けれど手についた黒くて乾いたそれが、現実だと突きつけてくる。
「1階の血痕から思ってたんですけど、やっぱり私達以外もここに来た人いるんですね。」
監督生は自分の汚れた手を見ながらポツリと零した。本当に帰ることが出来るだろうか。学園にも、元の世界にも。
そこまで思って監督生は頭を振った。ダメだな、疲労のせいか余計な事まで考えてしまう。
「まぁ気の毒ではあるが俺達には関係ない事だ。そんな余裕もないしな。」
ジャミルの言葉に監督生も頷く。可哀想だとは思うが一番は自分達の事だ。両掌を打ち合わせて鉄臭い汚れを払い落とした。
『邨ヲ鬟溘?譎る俣縺ォ縺ェ繧翫∪縺励◆縲る」溘∋縺ヲ縺上□縺輔>縲』
いきなりのノイズ音にももう驚くことはない。いつの間にかピアノの演奏も止み、短時間のうちに随分と慣れた放送を2人に伝えた。
「給食の時間だそうです。食事を摂るようにって。」
「食事…。そう言えばここは空腹を感じないな。」
「そう言えばそうですね?寒さは感じるのにトイレは行きたいと思わないし。」
「小エビちゃん達は食事はどこで摂ってたの?」
「各教室でした。」
「各教室って、折角苦労して別館来たのに。しかも何階かも分かんねぇじゃん。」
むくれるフロイドに監督生も難しい顔をする。
ここに来てまさかこんなアバウトな内容になるとは思わなかった。しかも異界の食事。正直嫌な予感しかしない。
「その前に、確かここには家庭科室があったな?」
「え?あ、はい。あります。」
「あはっ。ならそこで武器調達しよーよ。」
フロイドの言葉に監督生ははっとした。確かに。家庭科室には料理器具が閉まってある棚がある。確か包丁もあったはずだ。何事もなければそこから武器として頂戴出来るだろう。成程と納得しながら準備を始めるジャミルとフロイドに慌てて監督生も立ち上がった。
どうかあんな化け物が二度と現れませんように。そう祈りながら2人に続いて音楽室を後にした。
あれからどれ程時間が経ったか分からないが、結局『あれ』が来ることも何かが襲ってくることもなく3人は休憩も兼ねて室内の椅子に腰掛けた。
濡れた身体は音楽準備室にあった雑巾で拭いたが水気の多い物はどうすることも出来ずフロイドはブレザーと靴下を脱ぎ捨てた。監督生とジャミルはフロイド程寒さに強くないので楽器にかけてあった毛布を身体に巻き暖を取る。寒さが多少マシになったせいか、緊張が解けて身体に疲労が回り始めた。
「これも監督生のところの音楽か?」
ジャミルの言葉にボーッとしていた監督生はゆっくりと瞬きをした。
「はい。確か題名は、『月の光』だったっけな。」
「いい曲だねぇ。」
フロイドの口からほ、っとため息が出る。
ここに来て初めて心から落ち着けた気がした。ジャミルも耳を傾け曲に集中する。決して大きな音の波はないが、それが尚更月光のような淡い雰囲気を醸し出していた。
「でも作曲者のドビュッシーって人、結構な問題児だったらしいんですよ。女性関係のだらしなさとか。」
「どこの世界も一緒だな。こっちにもレンデラと言う音楽家がいるが、浮気に次ぐ浮気で恋人に刺されてる。」
「あぁアイツか。この前もなんかニュースになってなかったっけ。」
監督生はそうなんですねと返しながら、まるでいつものように教室で雑談している気分になった。学園長からの雑用をこなしエースとデュースと遊んで、グリムとオンボロ寮のゴースト達に今日あったことを話す。そんないつもの代わり映えのない日々が今では物凄く恋しい。それはジャミルとフロイドも同じで、穏やかな今思い出すのは学校での何ともない日常だった。
全部ドッキリか何かだったらいいのに。けれど手についた黒くて乾いたそれが、現実だと突きつけてくる。
「1階の血痕から思ってたんですけど、やっぱり私達以外もここに来た人いるんですね。」
監督生は自分の汚れた手を見ながらポツリと零した。本当に帰ることが出来るだろうか。学園にも、元の世界にも。
そこまで思って監督生は頭を振った。ダメだな、疲労のせいか余計な事まで考えてしまう。
「まぁ気の毒ではあるが俺達には関係ない事だ。そんな余裕もないしな。」
ジャミルの言葉に監督生も頷く。可哀想だとは思うが一番は自分達の事だ。両掌を打ち合わせて鉄臭い汚れを払い落とした。
『邨ヲ鬟溘?譎る俣縺ォ縺ェ繧翫∪縺励◆縲る」溘∋縺ヲ縺上□縺輔>縲』
いきなりのノイズ音にももう驚くことはない。いつの間にかピアノの演奏も止み、短時間のうちに随分と慣れた放送を2人に伝えた。
「給食の時間だそうです。食事を摂るようにって。」
「食事…。そう言えばここは空腹を感じないな。」
「そう言えばそうですね?寒さは感じるのにトイレは行きたいと思わないし。」
「小エビちゃん達は食事はどこで摂ってたの?」
「各教室でした。」
「各教室って、折角苦労して別館来たのに。しかも何階かも分かんねぇじゃん。」
むくれるフロイドに監督生も難しい顔をする。
ここに来てまさかこんなアバウトな内容になるとは思わなかった。しかも異界の食事。正直嫌な予感しかしない。
「その前に、確かここには家庭科室があったな?」
「え?あ、はい。あります。」
「あはっ。ならそこで武器調達しよーよ。」
フロイドの言葉に監督生ははっとした。確かに。家庭科室には料理器具が閉まってある棚がある。確か包丁もあったはずだ。何事もなければそこから武器として頂戴出来るだろう。成程と納得しながら準備を始めるジャミルとフロイドに慌てて監督生も立ち上がった。
どうかあんな化け物が二度と現れませんように。そう祈りながら2人に続いて音楽室を後にした。