番外編

吐く息が白くマフラーから少し出た鼻先が痛い。思わず眉に皺を寄せると隣にいた半間が私の眉間を小突いてきた。

「あと残っぞ〜。」

そのまま人差し指の腹で皺を伸ばすように円を描き始めた半間の手を掴む。やっと温まってきたところだったのに。
すると半間はそのまま私の手を手首から剥がし両手で包むとほんの少し力を入れた。

「つっっめたっ!!」
「ばはっ♡稀咲あったけぇ〜。」

氷かと思うほどの冷たさに悲鳴をあげる。なんだこれ、死体か?!全身の毛穴が開く感覚に手を抜こうとするもビクともしない。やめろ、体温を奪うな。
うぎぎと歯を食いしばっている私を半間は愉快そうに見下ろしてくる。その顔を睨みつけると、ふと半間の格好が目に入った。薄着、と言うわけではないが中々寒そうだ。着ている上着もコートと呼ぶには少し薄い。全くそんなのだから身体が冷えるのだとため息をついてどうにか離した手で自分のマフラーに手をかけた。

「見てるこっちが寒い。」
「んー…。」

そう言って少し背伸びして半間の首にマフラーをかけた。色や小さな装飾は完全に女性向きのデザインだが無いよりはマシだろう。くるりと首にゆるく巻き付け手を離すと、半間はマフラーの先を指で遊び始めた。

「ばはっ♡稀咲やっさしぃ〜。寒くねぇの?」
「コート着てるしな。」
「ならこれもーらい。」
「女物だぞ?まぁお前がいいならいいけど…。」

何故か機嫌のいい半間に首を傾げるもこいつが分からないのは何時もの事なので特に気にすることなくカバンを漁る。ガサガサとなるパステルカラーの袋に手を入れ、真新しいそれを取り出した。

「今日ヒナから貰ったんだ。丁度良かった。」

自分の声を弾ませてその可愛らしいマフラーを首に巻いた。なんでもセットで売っていた物を買ったらしくこれは絶対私に似合うと渡してくれた。嬉しい。プレゼントも嬉しいしヒナと色違いのお揃いも嬉しい。
鼻歌混じりに首の後ろで結び目を作り、どうだと少しドヤ顔で半間を見る。が、奴は何故かムスッとしていた。いきなりなんだ。さっきの機嫌の良さはどこいったんだ。

「あーあ。やっぱさみぃ〜!!」
「なら暖かい格好すればいいだろ。」

声を張り上げた半間にやはり首を傾げながら、私は緩む頬を隠すようにマフラーに顔を埋めた。雪が降ってもたまには外に出かけるのもいいかもしれない。冬もなかなかいいものだなと笑みがこぼれた。


因みにその後マフラーは返ってこなかったが何故か誕生日でもないのに半間から手袋を貰った。
いや、手袋はまだ使ってるのがあるからな?
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