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女体化稀咲の仕合わせな一生 【完】

子供の成長とは早いもので、真央は寝返りハイハイをクリアし今は猫のクッションをリュックのように背負った状態で机の角に掴まっている。立ち上がろうとしているのだ。

「やべぇ、真央が立つぞ。カメラどこだよ!」
「頑張れぇ〜。でも頑張りすぎんなぁ〜。ぜってぇ怪我すんなぁ〜。」
「おい、万一のために医者に連絡しとけ!頭打つかもしんねぇ!!」

大の大人達が右往左往している姿はなんともおかしなものだなと半間は真央の傍に胡座をかいた。小さな手で机を掴み足を震わせぐっと膝を伸ばす。身体は揺れて不安定だが真央は今日、掴まり立ちを成功させた。

「いよっしゃぁぁぁぁぁ!!」
「カメラは?!」
「バッチリだぜ、ボス。」
「おい、モッチー動くな!振動で倒れんだろーが!!」
「生命ってすげぇ…。」
「お前ら落ち着けー?」

ギャーギャーと騒がしいのに誰一人動かないのだから笑えてくる。稀咲が見たら何と言うのだろうか。半間は考えて、やめた。
プルプルと震えていた真央はバランスを保つことが出来ず膝がガクリと折れ、尻もちをついた。何が起きたか分かっていない顔でキョトンと半間を見る真央。マットの上とは言え驚いたのだろう。次第にじわじわと涙が溢れ泣き出した。

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
「おーおー驚いたなぁ。でも頑張ったじゃん。」

脇の下に手を入れ抱えあげる。抱き締めながら背中を摩るも一向に泣き止む気配がない。いつもならどんな事があっても半間に抱き抱えられたら泣き止むのに何故か今日はずっと泣いている。何かあったのか、やはりどこか痛いのかと周りも心配し始めたが結局その日、真央が泣き止むことはなかった。




「い〜や!」

楽しそうな半間の隣にちょこんと座り頬を思いっきり膨らませそっぽを向く真央に、ぬいぐるみを持つイザナははたと動きを止める。その後ろでは鶴蝶達がやれやれと肩を竦めていた。
今までの大人しさが嘘のようにお転婆を発揮する真央は、悪戦苦闘する大人達を置き去りにしてすくすくと育ち先日ついにイヤイヤ期を迎えた。あれ嫌これ嫌と言い、なんでも自分でする姿に最初こそ真面目に取り合っていたが、父親である半間があまり構わなくていいと言ったのもあり今では気が済むまで好きにさせていた。
しかしイザナは今日初めてそのイヤイヤ期に接したため勝手を知らない。さてどうなるだろうかと悪戯心で半間が傍観していると、イザナはふむと顎に手を当てると後ろを振り向き鶴蝶達に声をかけた。

「とりあえず真央が気に入りそうなぬいぐるみをあるだけ買って来い。」
「マジかよ。」

まさかの金に物言わせるパターンで来た。爆笑する面々の中で真央は半間と同じ琥珀色の瞳を白黒させてイザナを見上げた。

「安心しろ真央。直ぐに気に入るやつ持ってきてやっからな。おい、お前ら速くしろ!」
「分かった。とりあえず俺は駅前のショーウィンドウにあったテディベアを持ってくる。」
「バカか鶴蝶。真央は女の子だぞ?ティファニーならぬいぐるみより指輪だろ。ココお兄ちゃんは真っ白なくまちゃん持ってきてやっからなー。GIVENCHYのいくらだっけか。」
「いーねいーね。なら俺はオーダーメイドにするわ。」
「だったら本物の動物の毛と皮使おうぜ、兄貴。」
「マオ、やっぱりこれでいい!」

イザナの手からぬいぐるみをひったくり抱き締める真央に半間は今度こそ声を上げて笑った。多分言葉の意味は理解してないだろうが、本能で何かやばい事が起きそうだと分かったのだろう。半泣きになりながら押し潰す勢いでぬいぐるみを抱く真央の頭を撫でながら半間はでもな、と心の中で真央に語りかける。お前のおもちゃや服の殆どがオーダーメイドやらブランドものやらなんだぜ、と。だりぃから言わねぇけど。
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