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女体化稀咲の仕合わせな一生 【完】

稀咲が死んだ。

信号無視のトラックに撥ねられて、救急車が来た時にはもう息を引き取っていたらしい。その連絡が来た時はにわかには信じられず、棺桶の中で見てもただ眠っているだけだと思っていた。

喪服を着た見知った顔の人達が顔の色をなくして見送っている。俺は今にも泣き崩れそうなヒナの肩を抱きしめ唖然としていた。エマちゃんはとうとう泣き叫びながら地に膝をついてしまった。ドラケン君がそんなエマちゃんを抱きしめる。と、ふと最前列を見ると最初はどうなる事かと思っていた稀咲の会社の面々の髪が黒く染められていた。イザナは地毛だしカクちゃんは元から黒いが、あの三途君でさえトレードマークのピンクを黒く染めひとつに括っており、その常ならありえない光景が尚更稀咲が死んだことを現実にしていく。

そっか、お前本当に死んじゃったんだ。
気づいた瞬間ボロボロと涙が溢れ出した。拭っても拭っても止まらない涙にいつの日か稀咲がハンカチをくれた事を思い出しまた湧き上がってくる。柚葉ちゃんも、千咒も、千冬も泣いていた。でも、イザナ達は誰一人泣いていなかった。
目元は赤く瞳は充血していても下を向かず、顔を背けず、涙を流さず車を見送る皆の姿は確かに仲間を見送る力強い姿だった。

「だりぃけど、オレはここから離れらんねぇ。オレらの宝はオレが守るから、お前は気長に待ってろ。」

震えて掠れた声だった。でも半間はそう言って送り出した。


憎らしいくらいに澄み渡る空の下、けたたましい音を立て霊柩車が進み出す。
一回り小さくなった半間の背に背負われた無辜な子供の笑い声がきゃらきゃらと響いていた。
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