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女体化稀咲の仕合わせな一生 【完】

右も左も上も下もない真っ暗な場所にいる。立っているのか座っているか、そんな些細な問題は気にならない。ただ何となく向こうに行かなきゃ行けない気がして、でも向こうがどこか分からなくて私は首を傾げていた。

「稀咲。」

松野の声だ。軽くあしらう。

「稀咲。」

花垣の声だ。私に構うなと手を振る。

「こっちだよ。」

ヒナの声だ。あとでねと笑う。

「稀咲。」

半間だ。

「稀咲。」

なんだよ。そんな呼ばなくても分かってるよ。

「稀咲。
早く戻って来いよ。」

戻る?
…そうか戻って来て欲しいのか。
………。
うん、あっちは別に今度でいいか。

ぱっと振り向き光へ向かう。



「分かった、今行く。」

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