女体化稀咲の仕合わせな一生 【完】
エマちゃんは地面に倒れた時、頭を打ったらしく未だ意識が戻らない。このままいくと目を覚ますことなくずっと寝たままだろうと言った医者に待合室で座り込むマイキー君とドラケン君は何も返さなかった。しかし俺はそんな2人を置いてさらに奥へと向かう。先程から止まらない涙をそのままに手術室の前で立ち尽くす半間を見た。その肩を稀咲の父親だと名乗った男の人が抱く。
「オレ…、オレ、また……!」
「半間君のせいじゃないさ。...信じよう。君が愛した私の子だ。きっと舌打ちしながら帰ってくる。」
とうとう崩れ落ちた半間の背を稀咲の親父さんはずっと撫でていた。途中会ったヒナも泣いていた。皆、泣いている。絶望している。
そんな皆の姿に背を向けて乱暴に袖で涙を拭う。いつも逃げてばかりだった俺は歯を食いしばって一歩踏み出した。
今度は俺がヒナを、皆を守る番だ。
何度痛めつけても立ち上がる花垣は突如、拳を天に突き上げた。怪訝そうなイザナはしかし、直ぐにその意味を理解し口元をつり上げる。マイキーだ。奴が来た。
身体の高揚が止まらないイザナとは反対に九井が声を荒らげる。そんな周りにマイキーの代わりに共に来たドラケンが口を開いた。
エマが一命を取り留めた。今は容態も安定している。
その言葉に安堵する東卍のメンバーに花垣もホッと息をつく。そして着いてきたヒナが稀咲の手術も成功した事を花垣に教えた。ただ、意識は戻ってないらしく半間はここには来ないだろうとも。それでも花垣は構わなかった。半間の気持ちが痛いほど理解出来たから。
苛烈を極めるイザナとマイキーの戦いに、けれど先に限界を迎えたイザナが銃を取り出す。しかしそれすら読んでいた稀咲が銃を使い物に出来なくしていたのを知り、イザナは盛大に悪態をついた。どこまでも邪魔をする奴だと舌を打った瞬間、マイキーのとどめの蹴りが炸裂する。崩れ落ちるイザナの姿に天竺の敗北が確定した。
マイキーに痛めつけられた身体がストレッチャーに寝かされイザナは救急車に乗せられた。
イザナは最初、稀咲を相当ウザイ女だと思っていた。
見るからに嫌そうな顔で、怯えた態度で何故か話しかけてきた稀咲はその後も離れることなくイザナの傍にいた。何もしない、でも心底後悔してますと顔に出ている稀咲に久方ぶりに殺意が湧いたが、身体に力は入らなかった。こんな雑魚一匹のせねぇのかと情けなく思っていると、ふとカバンから白と赤の紙が見えた。テストだった。
たまたま見えただけだったが、その点の高さに頭が良い奴ならどんな答えを出すのか気になったイザナは自分の事を話した。独りだったこと、兄が出来たこと、その兄が死んだこと、家族と思った奴ら誰とも血の繋がりがないこと。
きっと何を言われても納得出来ないだろうし、認めない。けれど正解が分かる奴に導いて欲しいと思ったのも確かだった。
『救えねぇだろ?』
自嘲すらこもったその言葉に稀咲は思いっきり眉を寄せた。
『そもそも何を持って家族なのか。』
イザナは澱んだ目を稀咲に向ける。それを真っ向から見返す稀咲の瞳は鋭く刃のように輝いていた。
『家族の定義など曖昧だ。君の言う血の繋がりも数ある中のひとつに過ぎない。君がその寂しさ故に家族にこだわるのならば、もっと周りを見ろ。案外血の繋がりより強い絆というものが見つかるかもしれないさ。』
いつぞやの稀咲の言葉を思い出す。あの時は綺麗事ばかりで意味がわからなかったが…、なるほどなと泣きながらイザナの手を握る鶴蝶に目を向けた。その眼差しに場を収めると残ったアイツらの姿が重なる。
は、と息を吐き微かに笑ったイザナはゆっくりと瞼を閉じた。頬に伝う一筋の涙を感じながら、俺の描いた未来には鶴蝶とアイツらと、それと稀咲。お前もいれたかったな、なんて想った。
「オレ…、オレ、また……!」
「半間君のせいじゃないさ。...信じよう。君が愛した私の子だ。きっと舌打ちしながら帰ってくる。」
とうとう崩れ落ちた半間の背を稀咲の親父さんはずっと撫でていた。途中会ったヒナも泣いていた。皆、泣いている。絶望している。
そんな皆の姿に背を向けて乱暴に袖で涙を拭う。いつも逃げてばかりだった俺は歯を食いしばって一歩踏み出した。
今度は俺がヒナを、皆を守る番だ。
何度痛めつけても立ち上がる花垣は突如、拳を天に突き上げた。怪訝そうなイザナはしかし、直ぐにその意味を理解し口元をつり上げる。マイキーだ。奴が来た。
身体の高揚が止まらないイザナとは反対に九井が声を荒らげる。そんな周りにマイキーの代わりに共に来たドラケンが口を開いた。
エマが一命を取り留めた。今は容態も安定している。
その言葉に安堵する東卍のメンバーに花垣もホッと息をつく。そして着いてきたヒナが稀咲の手術も成功した事を花垣に教えた。ただ、意識は戻ってないらしく半間はここには来ないだろうとも。それでも花垣は構わなかった。半間の気持ちが痛いほど理解出来たから。
苛烈を極めるイザナとマイキーの戦いに、けれど先に限界を迎えたイザナが銃を取り出す。しかしそれすら読んでいた稀咲が銃を使い物に出来なくしていたのを知り、イザナは盛大に悪態をついた。どこまでも邪魔をする奴だと舌を打った瞬間、マイキーのとどめの蹴りが炸裂する。崩れ落ちるイザナの姿に天竺の敗北が確定した。
マイキーに痛めつけられた身体がストレッチャーに寝かされイザナは救急車に乗せられた。
イザナは最初、稀咲を相当ウザイ女だと思っていた。
見るからに嫌そうな顔で、怯えた態度で何故か話しかけてきた稀咲はその後も離れることなくイザナの傍にいた。何もしない、でも心底後悔してますと顔に出ている稀咲に久方ぶりに殺意が湧いたが、身体に力は入らなかった。こんな雑魚一匹のせねぇのかと情けなく思っていると、ふとカバンから白と赤の紙が見えた。テストだった。
たまたま見えただけだったが、その点の高さに頭が良い奴ならどんな答えを出すのか気になったイザナは自分の事を話した。独りだったこと、兄が出来たこと、その兄が死んだこと、家族と思った奴ら誰とも血の繋がりがないこと。
きっと何を言われても納得出来ないだろうし、認めない。けれど正解が分かる奴に導いて欲しいと思ったのも確かだった。
『救えねぇだろ?』
自嘲すらこもったその言葉に稀咲は思いっきり眉を寄せた。
『そもそも何を持って家族なのか。』
イザナは澱んだ目を稀咲に向ける。それを真っ向から見返す稀咲の瞳は鋭く刃のように輝いていた。
『家族の定義など曖昧だ。君の言う血の繋がりも数ある中のひとつに過ぎない。君がその寂しさ故に家族にこだわるのならば、もっと周りを見ろ。案外血の繋がりより強い絆というものが見つかるかもしれないさ。』
いつぞやの稀咲の言葉を思い出す。あの時は綺麗事ばかりで意味がわからなかったが…、なるほどなと泣きながらイザナの手を握る鶴蝶に目を向けた。その眼差しに場を収めると残ったアイツらの姿が重なる。
は、と息を吐き微かに笑ったイザナはゆっくりと瞼を閉じた。頬に伝う一筋の涙を感じながら、俺の描いた未来には鶴蝶とアイツらと、それと稀咲。お前もいれたかったな、なんて想った。