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「ただいまぁ」
学校から帰宅した緋鞠は、何年背負っていてもやはり恥ずかしいランドセルを床に下ろして居間へ向かった。
「おかえりなさい緋鞠。どう、今日は何かあったの?」
「んーん、特に何も。お母さん、こんな時間に家にいるの珍しいね」
彼女の母は、海外にも名を轟かせる医者である。持ち前のその個性『復元』は、死んでいない限りは周りの者を元の状態まで文字通り『復元』ことができるもので、医者としての仕事にはピッタリだった。
「ちょうどお休みが貰えてね。燈矢くんは?」
「訓練だって。良ければ来いっておじさんに言われてる」
そう、と、母は少し暗い声で呟いた。やはり彼女も緋鞠と同じく、轟家の教育方針には少なからず不満を持っているようだ。
「…やっぱり心配よね、でもきっと大丈夫よ、だから今日くらい」
「ううん、今日も行くよ」
ここ最近は訓練が激しめで若干やつれているからだろう、緋鞠の母は優しく彼女を引き止めようとする。
しかし、休む気など毛頭無い。
緋鞠は母の言葉を遮ると、素早く準備を整えて轟家を目指し出発した。
ところで、緋鞠がこんな状態でも常に燈矢を気にかけているのには理由がある。
突然だが、小鳥遊緋鞠は頭が良い。
伊達に人生一周してないし、何より先ほども言ったが彼女の母親は有名な医者だ。彼女はそのDNAを濃く受け継いでいて、頭脳は平均値よりずっと高かった。
そして小鳥遊緋鞠は顔が良い。
彼女の父親はプロヒーローであり、学生時代はモデルもしていたらしく、これでもかというほど顔立ちが整っていた。
そんな父親の遺伝子を深く継いだ彼女は、ひとたび笑えば警戒心を緩めてしまうような甘く可愛らしい顔立ちをしている。
さらに小鳥遊緋鞠は運動においてのセンスが抜群に、群を抜いてぶっ飛んでいた。
そりゃあプロヒーローの父親を持つ彼女だ。彼には嫌というほど稽古をつけてもらえたし、彼女の周りには自然とヒーローの知り合いも多かった。センスが飛び抜けて高かった彼女は、見様見真似で彼らの武術をこなしてみせたのだ。
…と、ここまで長々と語ってきたわけだが、本題に入ろう。
ここまで完璧な彼女を、あいつが放っておくわけがない。
あの、勝利に固執する男───────エンデヴァーが。
初めに燈矢を紹介された時は身の毛もよだつ思いだった。原作で彼のことは知っていたにも関わらず、その冷たい視線に戦慄した。
なんだかんだで燈矢の扱いを覚え、気に入られてしまった(なお、本人は気づいていない模様) 緋鞠は、彼の父親であるエンデヴァーとの縁を切るに切れなくなり、結局ズルズルと今まで関係を引っ張ってしまったわけだ。
そして、現在一歳の轟焦凍の世話を、エンデヴァーがするわけもない。今現在はまだ、彼の関心が燈矢に向いている期間だった。
そして、実は彼がそこそこ目をかけているのは緋鞠である。
女子の平均より明らかに小さな身長を補ってなお余りあるその身体能力と、強個性。こんな好条件の優良物件だ。もちろん、エンデヴァーも気に入っているわけで。
両親たちはその恐るべき可能性に気づいていないけれど、緋鞠は気づいている。
将来、轟燈矢との間に子を持つように、エンデヴァーに言われるのではないか、と。
原作の彼の所業を見れば、ありえないなんてことは微塵もなかった。燈矢を緋鞠に紹介したのも、最初っからそれ目的だった可能性だって捨てきれない。
さらに、もっとずっと危惧しているのは、エンデヴァーがその関心を焦凍に移してしまった後のことだ。
そのまま現在の燈矢の立ち位置を焦凍にすり替えてしまう、なんて残酷なことをやりかねない。
そうなったら、流石の燈矢も耐え切れないのではないか。
そんな、最悪な状態を、彼女は危惧していたのだった。
杞憂に終われば良いのだが…彼女はそれにいつだって、頭を悩ませているのだ。
彼女に今できることはただ一つ。それが、出来るだけ燈矢のそばにいて、味方してやることだった。
現在こそエンデヴァーの思う壺だろう。しかし、エンデヴァー以外にも自分を見てくれる人間がいると彼に認識させることによって、後の燈矢のダメージも軽減できるし、もし彼女の最悪な予想が当たっていても少しはうまく立ち回れるようになるだろう、と思ったのだ。
そのために、彼女は欠かさず毎日、午後には轟家に顔を出すことにしている。
「───来たか」
「はい、よろしくお願いします」
…今日もまた、地獄のような訓練が始まる。
学校から帰宅した緋鞠は、何年背負っていてもやはり恥ずかしいランドセルを床に下ろして居間へ向かった。
「おかえりなさい緋鞠。どう、今日は何かあったの?」
「んーん、特に何も。お母さん、こんな時間に家にいるの珍しいね」
彼女の母は、海外にも名を轟かせる医者である。持ち前のその個性『復元』は、死んでいない限りは周りの者を元の状態まで文字通り『復元』ことができるもので、医者としての仕事にはピッタリだった。
「ちょうどお休みが貰えてね。燈矢くんは?」
「訓練だって。良ければ来いっておじさんに言われてる」
そう、と、母は少し暗い声で呟いた。やはり彼女も緋鞠と同じく、轟家の教育方針には少なからず不満を持っているようだ。
「…やっぱり心配よね、でもきっと大丈夫よ、だから今日くらい」
「ううん、今日も行くよ」
ここ最近は訓練が激しめで若干やつれているからだろう、緋鞠の母は優しく彼女を引き止めようとする。
しかし、休む気など毛頭無い。
緋鞠は母の言葉を遮ると、素早く準備を整えて轟家を目指し出発した。
ところで、緋鞠がこんな状態でも常に燈矢を気にかけているのには理由がある。
突然だが、小鳥遊緋鞠は頭が良い。
伊達に人生一周してないし、何より先ほども言ったが彼女の母親は有名な医者だ。彼女はそのDNAを濃く受け継いでいて、頭脳は平均値よりずっと高かった。
そして小鳥遊緋鞠は顔が良い。
彼女の父親はプロヒーローであり、学生時代はモデルもしていたらしく、これでもかというほど顔立ちが整っていた。
そんな父親の遺伝子を深く継いだ彼女は、ひとたび笑えば警戒心を緩めてしまうような甘く可愛らしい顔立ちをしている。
さらに小鳥遊緋鞠は運動においてのセンスが抜群に、群を抜いてぶっ飛んでいた。
そりゃあプロヒーローの父親を持つ彼女だ。彼には嫌というほど稽古をつけてもらえたし、彼女の周りには自然とヒーローの知り合いも多かった。センスが飛び抜けて高かった彼女は、見様見真似で彼らの武術をこなしてみせたのだ。
…と、ここまで長々と語ってきたわけだが、本題に入ろう。
ここまで完璧な彼女を、あいつが放っておくわけがない。
あの、勝利に固執する男───────エンデヴァーが。
初めに燈矢を紹介された時は身の毛もよだつ思いだった。原作で彼のことは知っていたにも関わらず、その冷たい視線に戦慄した。
なんだかんだで燈矢の扱いを覚え、気に入られてしまった(なお、本人は気づいていない模様) 緋鞠は、彼の父親であるエンデヴァーとの縁を切るに切れなくなり、結局ズルズルと今まで関係を引っ張ってしまったわけだ。
そして、現在一歳の轟焦凍の世話を、エンデヴァーがするわけもない。今現在はまだ、彼の関心が燈矢に向いている期間だった。
そして、実は彼がそこそこ目をかけているのは緋鞠である。
女子の平均より明らかに小さな身長を補ってなお余りあるその身体能力と、強個性。こんな好条件の優良物件だ。もちろん、エンデヴァーも気に入っているわけで。
両親たちはその恐るべき可能性に気づいていないけれど、緋鞠は気づいている。
将来、轟燈矢との間に子を持つように、エンデヴァーに言われるのではないか、と。
原作の彼の所業を見れば、ありえないなんてことは微塵もなかった。燈矢を緋鞠に紹介したのも、最初っからそれ目的だった可能性だって捨てきれない。
さらに、もっとずっと危惧しているのは、エンデヴァーがその関心を焦凍に移してしまった後のことだ。
そのまま現在の燈矢の立ち位置を焦凍にすり替えてしまう、なんて残酷なことをやりかねない。
そうなったら、流石の燈矢も耐え切れないのではないか。
そんな、最悪な状態を、彼女は危惧していたのだった。
杞憂に終われば良いのだが…彼女はそれにいつだって、頭を悩ませているのだ。
彼女に今できることはただ一つ。それが、出来るだけ燈矢のそばにいて、味方してやることだった。
現在こそエンデヴァーの思う壺だろう。しかし、エンデヴァー以外にも自分を見てくれる人間がいると彼に認識させることによって、後の燈矢のダメージも軽減できるし、もし彼女の最悪な予想が当たっていても少しはうまく立ち回れるようになるだろう、と思ったのだ。
そのために、彼女は欠かさず毎日、午後には轟家に顔を出すことにしている。
「───来たか」
「はい、よろしくお願いします」
…今日もまた、地獄のような訓練が始まる。
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