小話

◎コンフォーコ


泣いたよ。死んだんだってサ、パパもママも。

絶望だったよ。足をおろした地面が、どろどろに溶けてしまった感覚に陥るくらい。
悲愴だったよ。囲われ守られた檻が錆びて、あびた陽のひかりで吐き気がするくらい。

わからなかったんだ。それがどれだけ重要な意味を含んでいたのか。
知らなかったんだ。指導者として、ふたりがどれだけ憎まれていたのか。

だからボクは逃げたんだ。権力がなに?責任がなに?だからミンナがボクに死ねと石を投げる。でも反撃もしない、罰も与えない。だって他人のイノチに責任をもちたくないし。

ずるいじゃないか。おうさまになんてなりたくないのに。かわってほしいよ。この仕事はボクには向いてない。

カビたにおいに埋もれているのが、ずいぶん落ち着くカラダになったネ。暗闇はいいよ、悪口からボクを隠してくれるから。食事は最低限でいい、もう誰もボクに構わないで。

トーチで炙られて脂汗を流すような、口から無理やりつららを食わされたような、斧で勢いよく後ろ頭をなぐられたような、足をひっかけてこかされたり、ふらつくちからで肩を押されたり。

嫌にストレスが溜まるネ。誰にも会いたくない。暖かい部屋で優しい夢をみる権利だってもうボクにはないみたいな、そんな言い方しなくてもいいじゃないか。みんなと同じようにゆるやかに歳をとって、誰からも愛されたまま死んでゆくなんて不可能だろうみたいな、そんな断言しなくてもいいじゃないか。

窓から見える流れ星が妙に疎ましい。誰かボクと変わって。そしたら昔馴染みみたいに愛してほしいよ。

ぼさぼさの頭をベッドへ沈め、今日も昨日のリプレイみたいに、ボクは意識を冷たい黒へと突き飛ばした。


























ふかくふかく、夢も来れない暗闇へ、沈んでいく
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