小話

◎ディーン


かぷかぷ。かぷかぷ。
俺は、きっと今
最高に暇なのだ。





沈澱煙草






部屋にひとつだけあるソファへ寝転び、空中にいくつも吐き出したけむりの輪。1時間で昨日買ってきたタバコ2箱をからにした俺の肺は、タールとかなんとかそんな有害物質でたっぷりコーティングされて臭気を放っている。と、おもう。

いっぱいになった灰皿の上、吸い殻のタワーは最早かたちを成す気もなく机や床に散乱している。
飲みかけの甘ったるいカルバドス。グラスの中で3つにわかれた氷が溶け、からんと小さく音をたてた。
ちからなくだらんとソファから落ちた右腕、その先、けむりを細くあげるタバコをゆっくり口元へもって、深呼吸。窓からカーテンの隙間をぬって月明かりが4本。
吸い過ぎてほとんどないタバコを5回机に押しつけ俺は目をつむる。

ごろり、部屋のほうへ寝返りをうち、ただひたすら自分の呼吸を聞いた。

(どこもかしこもタバコだ)

左手に握ったままの小さな箱から、新しいタバコを取り出そうと指をつっこんでみる。が、中身はからっぽでおもわず舌打ち。ちらりと見たデジタル時計の数値は、壊れたまま6から表示を変えない。仕方なく腕時計を見て、俺は近くにある自動販売機へタバコを買いに行くことにした。
ポケットには銀に光る硬貨が7つと、くしゃくしゃになった紙幣が数枚。部屋を出て街灯を8回くぐった先。いつもと同じ、左から9つ目のボタンを押して、見慣れた箱を取り出し口から取る。

部屋に戻った俺は早速買ったばかりの箱をあけ、中身に火をつけけむりを思い切り吸い込んだ。































(沈澱煙草)
10分後に眠りにおちて
煙草くさい夢の中で俺は今日も
1日をふりかえる。



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