小話
◎黒姫、柩
◎黒姫視点
「あらまあ、困りましたこと。」
そう、ぽつりと呟いて
私は目の前のゴミ山を見つめる。
【それは燃えるごみ】
今日は火曜日。
世間でいう『燃えるごみの日』。
幽霊はごみを出さないから、関係の無い日と思われがちですが、私だってたまには口寂しくなって食べ物を食べたりします。一般家庭よりは遥かに出すごみは少ないですが、それでも、溜めれば増えるのは幽霊も人間も同じ。
私の屋敷のごみもそろそろ地域のゴミ置き場に出しに行かなければ、今にも溢れかえってしまいそうです。
けれど
「困りましたわ」
私はまたぽつりと、独り言を呟いた。
よく考えたら、ゴミをゴミ置き場に出しに行くのは半世紀ぶりではないですか。その間にゴミ収集車がゴミを取りに来る時間や、ゴミの分別の仕方、はたまたゴミ袋の種類まで、全て私が知らない間に変わってしまっていたらどうしましょう。
生憎私のお屋敷は地域のゴミ置き場からかなり離れていて、しかも普段からお客様と言えば決まって幽霊しかやって来ないので、地区長さんや住民の皆さんが怖がり回覧板を家に回しに来てくださらない。
「どうしましょ…」
このままこの大量のゴミをゴミ置き場まで持って行っても、「今日は終わったよ。次は金曜日」なんて言われて追い払われるのも嫌ですし。今ゴミ置き場まで確認しに行ったら住民の皆さんが私に怖がってしまいそう…。なるべく人と会わないギリギリの時間に出しに行きたいんですが。
「柩が見に行ってあげよっかー?」
「あら、柩さん。おはようございます」
屋敷の裏で延々悩んでいた所を、柩さんに見つけられてしまいました。流石私と同じ幽霊だけあって、私の思考は簡単に透視されてしまったようです。
こんな些細な事で朝からずっと悩んでいるのがバレて少し恥ずかしかったけれど、私は優しくにこりと柩さんに笑いかけました。
「柩さんが見に行っても、皆さんに怖がられてしまいますわ」
「別にゴーストタイプなんて怖がられてナンボだろ?今日の黒姫変だ」
「あら?いつもと別に何も変わりませんわよ?ただ、同じ地域の皆さんとは少しでも仲良くしたいから怖がらせたくないだけですわ」
「そっかそっかー。」
私の頭と丁度同じ高さの空間に、ふわりと浮かび寝そべったまま、その場で柩さんは一回転。
うーん、と唸って、何か考え事をしているみたい。なんだか柩さんが考え事をする姿がすごく珍しくて、私は思わず笑ってしまいました。
「なあ黒姫」
「はい?何かしら」
「一ついいか」
「ええ」
柩さんは真剣な目で私の目を見つめてきました。私何か悪い事でも言ったかしら?
少し不安になりつつも、目の前に浮かぶ柩さんの顔を私もなるべく真剣な顔で見つめ返して…
「もうお昼だ」
「……え?」
ゴーン……
ゴーン……
屋敷の古い置き時計が、12時を知らせる為に、重い鐘の音を響かせる。
「柩さん。家で一緒にご飯でも食べましょう」
「わーい」
(幽霊って時間の感覚がおかしくて困っちゃうわ)
「あっ柩さん」
「ん?」
「それは燃えるごみ」
◎黒姫視点
「あらまあ、困りましたこと。」
そう、ぽつりと呟いて
私は目の前のゴミ山を見つめる。
【それは燃えるごみ】
今日は火曜日。
世間でいう『燃えるごみの日』。
幽霊はごみを出さないから、関係の無い日と思われがちですが、私だってたまには口寂しくなって食べ物を食べたりします。一般家庭よりは遥かに出すごみは少ないですが、それでも、溜めれば増えるのは幽霊も人間も同じ。
私の屋敷のごみもそろそろ地域のゴミ置き場に出しに行かなければ、今にも溢れかえってしまいそうです。
けれど
「困りましたわ」
私はまたぽつりと、独り言を呟いた。
よく考えたら、ゴミをゴミ置き場に出しに行くのは半世紀ぶりではないですか。その間にゴミ収集車がゴミを取りに来る時間や、ゴミの分別の仕方、はたまたゴミ袋の種類まで、全て私が知らない間に変わってしまっていたらどうしましょう。
生憎私のお屋敷は地域のゴミ置き場からかなり離れていて、しかも普段からお客様と言えば決まって幽霊しかやって来ないので、地区長さんや住民の皆さんが怖がり回覧板を家に回しに来てくださらない。
「どうしましょ…」
このままこの大量のゴミをゴミ置き場まで持って行っても、「今日は終わったよ。次は金曜日」なんて言われて追い払われるのも嫌ですし。今ゴミ置き場まで確認しに行ったら住民の皆さんが私に怖がってしまいそう…。なるべく人と会わないギリギリの時間に出しに行きたいんですが。
「柩が見に行ってあげよっかー?」
「あら、柩さん。おはようございます」
屋敷の裏で延々悩んでいた所を、柩さんに見つけられてしまいました。流石私と同じ幽霊だけあって、私の思考は簡単に透視されてしまったようです。
こんな些細な事で朝からずっと悩んでいるのがバレて少し恥ずかしかったけれど、私は優しくにこりと柩さんに笑いかけました。
「柩さんが見に行っても、皆さんに怖がられてしまいますわ」
「別にゴーストタイプなんて怖がられてナンボだろ?今日の黒姫変だ」
「あら?いつもと別に何も変わりませんわよ?ただ、同じ地域の皆さんとは少しでも仲良くしたいから怖がらせたくないだけですわ」
「そっかそっかー。」
私の頭と丁度同じ高さの空間に、ふわりと浮かび寝そべったまま、その場で柩さんは一回転。
うーん、と唸って、何か考え事をしているみたい。なんだか柩さんが考え事をする姿がすごく珍しくて、私は思わず笑ってしまいました。
「なあ黒姫」
「はい?何かしら」
「一ついいか」
「ええ」
柩さんは真剣な目で私の目を見つめてきました。私何か悪い事でも言ったかしら?
少し不安になりつつも、目の前に浮かぶ柩さんの顔を私もなるべく真剣な顔で見つめ返して…
「もうお昼だ」
「……え?」
ゴーン……
ゴーン……
屋敷の古い置き時計が、12時を知らせる為に、重い鐘の音を響かせる。
「柩さん。家で一緒にご飯でも食べましょう」
「わーい」
(幽霊って時間の感覚がおかしくて困っちゃうわ)
「あっ柩さん」
「ん?」
「それは燃えるごみ」