世界観、その他設定

逃げない友達
(にげないともだち)

小学校も中学校も、入れ墨を見た友達はみんな甘三から離れていってしまった。
些細な喧嘩でも、相手を骨折させたり意識不明にまでさせてしまう甘三の『やりすぎ』な性格は、入れ墨を抜いても友達をなくす原因のひとつだった。

甘三は『ほどほど』が昔からよくわからなかった。どうして友達を助けるために相手を重体にしただけで、みんな自分から離れていくのか。

暴力的な面でもやりすぎな性格は顕著になっていたが、それ以外、勉強や私生活でも、甘三のやりすぎは目立っていった。
指の皮が剥け、血が流れても鉛筆を持つ手は止めない。テスト範囲は、一字一句間違えずに覚えるまで何日かかっても寝ない。組では、喧嘩両成敗の言葉通り、相手が指を折られればもう片方の指を折り、相手が目を潰されればもう片方の目を潰した。

『南高校』にはいってもそんな生活は変わらなかった。そしてまた『同じ学年の生徒を不良から助けただけ』なのに、暴行事件として退学処分を受けてしまった。

そして甘三は『東高校』へと転校することになり、芽守(めもり)達と同じクラスにはいった。芽守は委員長だった。

委員長の芽守にいろいろと教えてもらうついでに、友達になりたかったが、きっと無理なんだろうな。既に校内は暴力事件の噂でもちきり。何度も同じような状況の中に落とされ、逃げられ続けてきた甘三には慣れた光景だった。
でも芽守は甘三のあきらめを裏切り、甘三に声をかけた。

「甘三くんは前の学校ですごく勉強ができたんだよね。よかったら一緒に勉強しない?」

甘三は嬉しかった。自分を必要として、同じ時間を共有してくれる友達。自分と過ごすことに時間を使ってくれる友達。
その後、芽守を通じてテレサとエッカルトとも仲良くなり、今の異質なグループができあがったのだった。

しかしせっかくできた友達を失うのが怖くて、まだ入れ墨の存在は公言していない。

35/100ページ