小ネタ集④




「──執事の役目は如何なる時も主人の為に尽くす事、です」


熱弁するアガットを横目に新人執事達が小声で話している。


「もう聞き飽きたって……」
「主人も大事だけど、自分が一番だって」
「そこ! 無駄話をやめなさい!」


注意された新人執事達は肩をすくめて俯く。


「なんでこんなに張り切ってんだよ……」
「あー……昼間、屋敷の外を掃除してた時にエセ女子大生軍団に黄色い歓声浴びせられまくってたの見たけど……それじゃねーの?」
「黄色い歓声? いいなぁ……やっぱ、アガットさんも女の子には弱いってことか」
「ってか、エセ?」


アガットに睨まれ、新人執事達は小さくなり……
更に小声で話を続ける。


「……声は女、見た目オヤジ」
「オカマ?」
「いや、オヤジ女子」
「え? えぇ!?」
「ミラクルボイスにみんな落とされてんだよ」
「……俺等もその一人じゃんか」
「……イエス……男も女も魅了する男だよな、アガットさん……」


翌日、例のオヤジ女子が屋敷の扉を叩くのをまだ誰も知らない。





〈Miracle Voice-ミラクルボイス-〉



END.
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