小ネタ集③
アイリス様から荷物が届いた。
しかし、中身を見て僕は絶句する。
「こ、鯉のぼり……」
宛先を確認する……
“カルロ”何度見ても、そう書いてある。
中身は“鯉のぼり”のみ。
「見間違いでは、ないようですね……」
……僕はアイリス様に子供と思われていた、のですね……
荷物を持ったまま、ふらふらと部屋を出ていく。
「なぁ、何アレ……」
「ライも気付いたのか」
柱の陰でハルクとライが何か話をしている。
……どうでもいいですけどね。
「気付くだろ、アレは…………全裸で日光浴してたのにスルーだぜ?」
「おい、それは怒られたくてやってたのか? それとも──」
「目が合ったやつとヤる為に決まってんだろ」
「くたばれ!」
「いッ……いってぇな!」
はぁ……騒がしい。
やはり部屋に戻って──
「おい、カルロ。アイリス様から電話──」
「貸してください!」
セツナから電話を受けとる。
「アイリス様、あの──」
『カルロか。何度も君のところに電話を掛けたのだが繋がらなくて……忙しい中、すまないね』
「いえ……あの鯉のぼりは──」
『あぁ、届いたか。見た通りだよ』
「そう……なのですね……」
『気に入ってくれたかな?』
「え、あ、はい! それはもう、とても」
言っていて虚しさが込み上げてくる。
やっぱり、アイリス様は──
『それなら良かった。それじゃあ……後は頼んだぞ、カルロ』
そう言って、電話は切れた。
「……セツナ、後は任せ──」
言い掛けた時、ヒラリと何かが落ちた。
ハルクがそれを拾う。
「……手紙?」
「!……貸してください」
ハルクからそれを奪うと、中身を確認する。
「……ふぅ。そういう事でしたか」
僕は胸を撫で下ろす。
手紙には、
“我が愛する家族の皆へ
ひとつ屋根の下で暮らす皆は大切な私の家族であり、私にとっては子供でもある。
先日、出先で鯉のぼり師と知り合い仲良くなった。
その時に頂いたものを送ろうと思う。
明日にはケーキや取り寄せたご馳走が届く事と思う。
私が不在で申し訳ないが、皆でこどもの日を満喫してほしい。
アイリス”
と書かれていた。
「使用人の皆さん。良く聞いて下さい!」
「お、何だかいつものカルロに戻ったんじゃね?」
「本当に分かりやすい……」
ハルクとライは顔を見合わせて笑った。
「ハルク、棒立ちしてる暇はありませんよ? ライも手伝う気がないのなら、部屋に戻っていて下さいね」
──僕は半日分を取り戻す為に皆に指示を出す。
明日は、こどもの日。
アイリス様の心遣いに感謝し、盛大に皆で楽しもうじゃないか。
<カルロとアイリス>
END.