ポックリさん




「ザクロ」
「……モルテ、何か用?」


ザクロはどこか変わっている。
今も、誰もいなくなった教室で制服を脱ぎ黄昏ていた。


「またやってたのか。俺じゃねぇ誰かに見られたら、どうすんだよ」
「下着は着けてるから」


そう、俺が指摘するまでは何も身に纏っていなかった。
本当にたまたま、居合わせて気まずかったのは俺だけだったんだよな。


「見た目とのギャップすげぇよな、お前」
「モルテもそうでしょ」
「俺、裏表ないけど」
「……なんだ。気付いてないんだ」


ザクロは床に散らばる制服を手に取り、身支度を整える。


「一番、“ポックリ”さんのお願いきいてもらったのモルテだもんね」 
「え?」


言われて気付いた。
そういや、俺……何を願ったんだっけ?
まぁ、周りから見て叶ってんなら別にいっか。


「あたしも叶った。だから毎日がぞくぞくで楽しいの」
「冗談なのか本気なのか……」
「これとは一切関係ないことよ、残念ながら」


そう言って、ザクロは俺を抱き締める。


「……相変わらず良い匂いしてやがる…………中(あ)てられそ」


俺がそう言うと、ザクロは満足げな顔で離れた。


「モルテ。また、明日ね」
「ああ、また明日」


間もなくして、最終下校の音楽が流れ始めた。

外を見ると、サッカー部の連中が練習していた。
そこで怪我人が出たらしく、ざわつき始める。

俺の胸も……ざわざわ、ざわざわと波打ち始める──





<ポックリさん>



END.
(2024.06.27)

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