王子と毒林檎
──数日後。
「ニュース見た?」
「見た、見た! 信じられない……」
「エリスが薬中だったなんて……」
「しかもサカキと……ね」
クラスメイト達が話しながら僕を見る。
「……何か?」
「エリスのこと、残念だったね」
「そうだね。せめて豪華ディナーに招待されてから振って欲しかったな」
最後に花くらいは持たせてあげるよ。
──動揺が笑いに包まれる。
「けど、冗談抜きにエリスんちヤバいな」
「ま、今まで好き勝手やってた報いじゃない?」
──国のトップクラスの財閥が1つ消えた。
今まで散々に働いた悪事も露呈した。
「ギル。彼女、真っ黒じゃん」
「何言ってるの、モルちゃん。僕は恋のキューピッドになっただけ、だよ?」
「誰のだよ」
「あの二人」
何らかの理由で薬物を絶ち、禁断症状に犯されていたエリス。
そんな彼女に惹かれた、サカキ。
不運にもその状況下に僕は混入してしまった。
「それで、白無垢は役立ったかしら」
「助かったよ、ミモザ」
禁断症状下、黒から始まり白を投下した。
するとエリスは白い薬物を連想。
そして禁欲は一気に解放される。
幻想に囚われた彼女は、僕と勘違いしたままサカキを薬の道連れにした。
エリスを手に入れたかったサカキは、薬ごと彼女を受け入れた。
「医者の話だと、暫くは幻覚世界から戻ってこられないそうよ」
「でも二人とも、すっごく幸せそうな顔してたよぉ!」
だから、僕はサカキに伝えたんだ。
“君とエリスはお似合いだ”って。
「──夢見幸せ、現実地獄ってね」
僕の言葉にザクロとスフレは笑った。
「王子様は猛毒持ちね」
と、ミモザが言い──
「ギルの女は苦労しそうだな」
と、モルちゃんが笑う。
「僕にはモルちゃんがいればいいんだよ」
こんなに堂々とアピールしてるのに、誰も噂にしない。
……そのうち、誰かが噂を流してくれるかな。
<王子と毒林檎>
END.
(2024.06.25)
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