仮面の正義




薄暗い部屋、もたれ掛かって座っているサフラン。
彼女の近くにはミモザを中心に五人がいる。


「アンジュ。ほら、よく見て? 薄~い血管がいくつも繋がって出来てるの」


そう言って、ザクロはアンジュの掌にソレを乗せる。


「え…………?」
「どくんどくん、ほらアンジュの手の上で生きてる」


瞳を輝かせ、モルテがソレを見つめる。


「気をつけてね? 落としたら……確実に彼女は死ぬから」


忠告したのはミモザ。


「嘘……だ……ろ……?」
「アンジュー? よく見てー? ドキドキしてる。アンジュに触れられて喜んでる証拠だよぉ♪」


そう言って、スフレは満面の笑顔を見せる。


「良かったじゃん、アンジュ」
「……え?」
「これで女心、分かったんじゃねぇの?」


アンジュはガタガタと震えるのを耐えながら、ゆっくりと頷く。


「えー! 早いってば。もう、これだから男は……」
「そうね……あ、試しに傷付けてみる?」


アンジュは思い切り首を横に振る。
その反動でサフランの心臓がアンジュの手から落ち──


「ひぃ──」
「おっと、危な。大事な彼女のだろ? 手、離すなよ」
「あ、ああ……」
「さっきよりドキドキしてるよー? もっとアンジュの事が好きになったんじゃない?」


スフレは動かないサフランを見て微笑む。


「良かったな、絆が深まって。僕とモルちゃんみたいに」
「だから、そんな風に言うなって──」
「さてと、もういいかしら。流石に戻さないと、死んじゃうから」


そう言って、ミモザは手を差し出す。


「お、おう! は、早くも、戻して……」
「アンジュ?」
「は、はい!」
「サフランの事……好き?」


そう聞くミモザの顔は無表情──


「あ、当たり前だろ!」
「良かった。躊躇ったりしたら、落としちゃうところだったわ」


ニコッと笑う、ミモザ。
アンジュの顔が真っ青になる──


「おい、アンジュ?」
「うわぁ、立ったまま気絶してる……」
「サフランの隣に並べとくか」


ギルがアンジュをサフランの横に座らせる。


「わぁ! お似合いー!」
「肌の色も二人して青白い……付き合うと色々と似るのね」
「羨ましいのか、ミモザ?」


からかうようにいう、モルテ。


「……そうね」
「そんじゃ、俺と──」
「へぇ、モルちゃんてばミモザみたいなんが好みなわけ?」
「……そうだけど?」


頬を赤らめて答える、モルテ。


「浮気されてるよぉ、ギル」
「許容範囲。僕もミモザに好意を持っているからね」
「ミモザ、モテモテでいいなー」
「わたしはスフレのこと可愛くて好きよ?」
「俺も」
「あたしも」
「僕も」

──みんな、大好き──



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