王子と毒林檎
「ギールちゃん? 柄にもなく女の子、助けたんだって?」
「違うよ、モルちゃん。道を塞いでて邪魔だった、それだけ」
嘘じゃない。
本当に、ただそれだけの理由だった。
「本当に? その子、すっげぇ可愛いって噂じゃん。ギルちゃんてば、やるぅ!」
からかわれてるのは分かってる。
けど、僕のことを“ちゃん付け”で呼んでくれている。
モルちゃんは無意識かも知れないけどね。
「へえ。ああいう子、可愛いっていうんだ?」
僕の中で“可愛い”って言うのは、妹達とモルちゃんだけなんだけどね。
ああ、でもミモザもザクロもスフレも“可愛い”……か。
「聞いたよ、ギル! 彼女、出来たんだってねぇ!」
教室に入るなり、スーちゃんが言った。
「……は? 彼女?」
「……何で俺を見るんだよ」
「いや、モルちゃんしか心当たりが……」
「って、どんな心当たりだよ」
──これは、もしかして……
厄介な事になった、ってやつか。
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