命(名)演技
「やあ、マロンちゃん。“飼い犬”は元気?」
「ええ、とても」
マロンは満面の笑みを見せる。
「プレゼント、気に入ってくれてるみたいで嬉しいよ」
「スバルさんって、本当に何でもくれるのね」
「マロンちゃんにだけ、ね」
スバルもまた、ご機嫌に笑った。
「でも、ごめんなさい」
「ああ、“猫”のことかな?」
「躾られなくて、驚かせたら勝手に死んじゃった」
「話題沸騰、彼女も本望だろうさ」
その言葉にマロンは、上機嫌で“ねこ踏んじゃった”を歌い出す。
スバルもまたハモるように歌う。
「ね、スバルさん。入っていく?」
「今日は立て込んでいてね」
「じゃあ、また今度」
マロンはスバルに手を振り、家へ入った。
「さあ、てと──」
マロンが暗がりの部屋へと足を進める。
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