命(名)演技




「やあ、マロンちゃん。“飼い犬”は元気?」
「ええ、とても」


マロンは満面の笑みを見せる。


「プレゼント、気に入ってくれてるみたいで嬉しいよ」
「スバルさんって、本当に何でもくれるのね」
「マロンちゃんにだけ、ね」


スバルもまた、ご機嫌に笑った。


「でも、ごめんなさい」
「ああ、“猫”のことかな?」
「躾られなくて、驚かせたら勝手に死んじゃった」
「話題沸騰、彼女も本望だろうさ」


その言葉にマロンは、上機嫌で“ねこ踏んじゃった”を歌い出す。
スバルもまたハモるように歌う。


「ね、スバルさん。入っていく?」
「今日は立て込んでいてね」
「じゃあ、また今度」


マロンはスバルに手を振り、家へ入った。


「さあ、てと──」


マロンが暗がりの部屋へと足を進める。



.
6/8ページ
スキ