祝福の花嫁
暗がりの部屋。
ベッドに横たわる女、見下すように立つ男が二人──
ベッドの回りには甘い香りを漂わせる花の数々……
「苦しむ姿、見たくないだろ」
そう言ったのは、ギル。
「……僕はどんな彼女も受け入れるよ」
そう答えたのは、カスガ。
「……彼女の気持ちはどうなるんだ? 綺麗な姿を最期に見てほしいもんじゃないのか、女ってのは」
ギルの言葉にカスガは渋々、アズサに目隠しをした。
「そう、それでいい……それじゃ、御幸せに」
拍手する、ギル。
「……アズサ、これでずっと……一緒にいられるね」
そう言って、カスガはアズサの胸にナイフを突き立てる。
小さな呻き声一つ、彼女はもう……動かない。
俯き、嗚咽を漏らすカスガ。
ギルは彼に背を向け、歩き出す──
「…………今、僕も……逝く──」
一瞬、ギルは足を止めるが踵を返すことはなかった。
「──結婚、おめでとう」
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翌日、カスガのことがニュースで報道された。
彼女を殺害し、自殺した……と。
「アイツ、幼馴染みだったんだろ? なんか複雑だな」
モルテが申し訳なさそうに言った。
「別に。スッキリしたとこ」
「アズサ、酷くなーい?」
スフレの言葉と共に笑いが沸き上がる。
「アズサ。これで、堂々としていられるね」
「そうだね、ユズキ」
「アズサの彼ってユズキだったのね」
「おっにぁーい!」
スフレの言葉に嬉しそうに笑う、アズサ。
「これからは堂々とデートとか──」
「式に誰を呼ぶとからそろそろ決めないとな」
そう言ったユズキの表情(かお)は、どこかカスガに似ていた。
「え? ちょ、ユズキ?」
「ほら、もう卒業まで一年を切ってるんだよ?」
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