祝福の花嫁
「ずっと好きだった女には、別の男がいた。捨てられた男の愛は──」
「無効だろ」
「無効ね」
「無効だな」
「有効に決まってるじゃない」
その言葉に皆、顔を見合わせる。
「……スフレ、聞き間違いよね?」
ミモザがスフレにだけ聞こえるように聞いた。
「一途な愛、完璧な王子様だよぉ? 彼女を幸せにする為にお金も貯めてたって話」
スフレは目をキラキラと輝かせる。
「ミモザ。スフレは今、大好きなマンガの二人がくっついておかしくなってるの」
「……そのようね」
溜め息をつき、冷静さを取り戻すミモザ。
「重っ! スフレ、お前重いって!」
「僕はそんな風に感じさせないから、大丈夫だよ……モルちゃん」
そう言って、ギルは微笑む。
「…………軽石男……」
「何、モルちゃん?」
「……何でもねぇって」
二人のやり取りを横目で見ていたザクロが口を開く。
「それ、アズサとカスガの話でしょ?」
「そうなんだ?」
モルテの言葉に頷き、ザクロは続ける。
「アズサは好きな人が別にいるんだって」
「それ、カスガは知ってんの?」
いち早くモルテが反応した。
「知るわけないでしょ。知ったら大変なことになるわよ」
「……大変なこと……ね」
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