祝福の花嫁
「お姫様は王子様にゾッコンで、王子様もお姫様にゾッコンなのっ!」
目を輝かせながら熱演する、スフレ。
ザクロとアズサは呆れながら拍手する。
「ザクロ……スフレってば、どうしたの?」
「好きなマンガの二人がついに結ばれたらしいの」
「“ガラスの棘に魅せられて”だっけ?」
「“ガラスの棘にキスをして”よ」
「ちっがーう!!」
と、スフレが勢いよく机に手を着く。
「二人とも違う! “カラスに棘刺しキスをする”! 二人の結末はきゅんきゅんなんだから!」
「もう完結したの?」
「まだ続いてるよぉ。けど、私の中ではこれで完結」
えっへん、と言わんばかりにスフレが言った。
「アズサ。スフレは途中退場の脇役が好きみたい」
「そ、そうなんだ」
「スフレらしいわね」
アズサが興奮気味に言う。
「私はやっぱり、ヒロイン! 様々な障害を越えて真の愛を手に入れるの!」
「障害?」
「そう! 例えば恋人への思いは偽物で──」
「ふーん……確かに面白そうね」
そう呟き、ザクロは冷ややかに微笑んだ。
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