天国と地獄
──数週間後。
「リオル先輩、最近どうしたのかな」
「女遊び一つしないし、真面目そのものだよ?」
「ストレス溜まってたのかもね。志望校、変えて落ち着いたみたいだし」
「私、今のリオル先輩は好き……かも」
人の印象って中々、変わらない?
そんなことねぇよな。
一人の見方が変わりゃ、伝染していく。
「リオル先輩、結婚するんだって?」
「責任はちゃんと取らねぇと」
親に反対された子、産んだけど育てる自信のない子……
そいつらの子供は全部、リオル先輩達が引き取った。
「子沢山、少子化貢献してるのにね……この国にいればの話だけど」
「彼には地獄のようね」
「あれは自業自得だな。相方は喜んでたし、いいんじゃないか」
「だろだろ?」
……リオル先輩が最後に選んだやつ、子供産めねぇんだよな。
だからこそ、喜んでたって話。
「最後に選んだのが男っていうので、アケビも完全に吹っ切れたみたいだしね」
「学校辞めるらしいじゃん」
「彼女、自分で子供を育てるんだって」
たった一人、アケビだけがそう言った。
親の反対も押し退けて産むんだもんな。
ま、あんな父親ならいらねぇけど。
「“あいつ”も上手く溶け込んでるし、問題ないな」
ギルが“リオル”先輩を見て言った。
「違和感あんの俺らだけじゃん」
「そう? モルテだけかもしれないわよ」
「そうだよぉ。“今”のリオル先輩、すっごくいい人なんだよぉー」
天国から地獄に堕ちる者。
地獄から天国へとやってくる者……
「……天国と地獄」
ギルが呟いた。
……たまに思ってること、被るんだよな。
本人には絶対に言わねぇけど。
<天国と地獄>
END.
(2024.06.14)
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