血婚ビロード




「なあな! ギル、気付いてたか?」
「何を?」
「女子、どこか色っぽいんだよ」


言われてみれば、女子の肌の露出が増えたような気がするな。


「……俺も色っぽくするか」
「誰を誘惑すんだよ」
「モルちゃんしかいないだろ」


僕はシャツのボタンを上から三つ、外す。


「野郎の色気に惹かれるやつなんかいねぇから」
「結構、いい身体してると思うんだけどな」
「……それは知ってる」


その言葉に一瞬、ドキッとした。


「やっぱ、やめだ。プライベートの時までお預けな」
「いらねぇってば」


はぁ、モルちゃんはつれないね。


「あれ? シギ、どうしたの?」


モルちゃんの声に振り向くと、そこにはボロボロのシギがいた。


「ったく、何を考えてんだよ……」


苛々してるな。
そういうところは嫌いじゃないんだ、僕。


「シギ、何かあったのか?」
「女子の露出が増えただろ?」
「そうそう。今、その話をしてたところなんだよ」


聞くところによると、女子の露出が増えたことで頭のおかしい連中がやたらと女子に絡んでるんだとか。
その一人がシギの妹のモナ。
裏路地で無理矢理襲われそうになったのを返り討ちにされたとか。


「保健室は?」
「センコー不在」
「仕方ねぇな。俺が消毒してやるよ、保健委員として」
「僕も行こう」


モルちゃんが僕以外の人間と二人きりになるなんて、認めない。


「結構、派手にやられたんだな」
「オレはまだマシ。向こうは病院送り」
「顔覚えられてんじゃねぇの?」
「こっちも覚えてる」
「どんだけ傷、あんだよ?」


手当てしながら、モルちゃんが次第に興奮しているのを僕は知っていた。
ストッパーでもあるからね、僕は。
無意味とは分かっているけど、心の中でシギを見下していた。



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