仮面の正義




「恋人出来たんだって」
「ラブラブらしいじゃん」


──どこからか響く声。


「紹介したの、私よ」
「俺も紹介した」
「話を盛り上げたのは、あたし」
「背中押したのは、僕」
「わたしも背中押し、したわ」


暗がりに五人の影。


「応援するって言ったよ、あたし」
「私も」
「俺も」
「僕も」
「もちろん、わたしも」


その影は異様なものだった。
理由は、距離感。
内緒話でもしているような──


「友達のこと応援するの」
「当たり前だろ?」
「当たり前ね」
「もちろん、相談にも乗ってやるさ」
「とーぜん!」


くすくす、くすくす……次第に声は大きくなっていく。


「ねえ、聞いた?」
「聞いた、聞いた」
「喧嘩したんだって」
「仲直りしたいって?」
「…………すごくムカつくって」


2トーンくらい低くなる声──


「そんで?」
「別れるって?」
「ムカつくけど、別れないって」
「なんだよ、それ」
「わかんなーい」



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