血婚ビロード
「お兄ちゃん、待ってよ」
「ついてくんな、クソが!」
朝から賑やかだな。
そう思いながら、僕は足を速めた。
「はよ、ギル」
「ああ。モルちゃん、おはよう」
モルちゃんの歩幅に合わせ、談笑しながら学校へ向かう。
やっぱり、モルちゃんの隣は落ち着くな。
「……って、聞いてんのか?」
「ごめん、告白聞き逃した。もう一回、よろしく」
「してねぇから、告白」
「……残念」
僕が笑うと、モルちゃんは一瞬怒り……それから笑った。
「そういや、聞いたか?」
「何を?」
「隣のクラスのシギ」
「ああ、彼か。彼がどうした?」
シギ。
彼は去年、僕らと同じクラスでやたらと絡んできた奴だった。
絡んできたというよりは、誰とでも親しくなりたい……そんな感じか。
僕は、程よい距離で接してきたつもり。
「親が離婚するらしいよ」
「……へえ。それは大変だな」
「妹と仲良いしな、あいつ」
「……別々に引き取られるのか」
──同情はしないけど、気にはなるな。
「へえ……ギル、気になるんだ?」
「え?」
……モルちゃんは、やっぱり僕のこと理解しているんだね。
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