Shadow of the departed soul
体育館に戻ると、異常な程に空気が重く感じた。
理由は直ぐに知る事となる。
「姫路くん……」
野嶋と川田も戻ってきた。
俺と同じように二人共、不安と戸惑いを隠せないみたいだ。
そんな中、学園長がステージに立つ。
同時に全校生徒が注目する──
「犯人を野放しにする訳にはいかない。そして、君達の安全を踏まえた上での判断だ。」
学園長の言葉。
“学園外禁止令”──
逃げ出す者が犯人。
……古臭い考えは捨てろって。
背中に荷物が乗る。
見えない疑惑・恐怖……
「クソ……」
オレは──
俺達は檻の中に捕らわれた生き物になった。
そして、こんな状況で起こり得る事態もある。
「ミドリ!その図体、お前が犯人だろ」
「ぼ、ぼくじゃないよ……」
「やめろよ、玉子。ミドリはそんな事するヤツじゃねェ……」
ミドリには出来ない。
分かっているハズなのに、オレ自身も疑ってる。
「お前とミドリでグルか?」
「やめろ!」
「ああ、そうか。お前一人で?」
「お、玉子くん、姫路くんがやるわけ──」
「何で、そうなんだよ!」
思わず、玉子に掴み掛かっていた。
「離せよ!俺サマも殺す気か?」
全生徒がオレに注目する。
ざわざわと噂話・不安・疑い・確信を囁き始める。
耳が痛くなって、声が震える──
「見掛けか?見掛けで犯人扱いなんだろ?」
「さっき、女子達が話してただろ?第一発見者というのも怪しいってな」
「……っ」
玉子に突き飛ばされて壁に背中をぶつけた。
痛みは無かった。
外側の痛みは、無かった……
外側は……
壁を思い切り殴る。
「ま、モノに当たるような奴には無理だろうけどな」
玉子は、オレを見下すように笑いながら離れて行った。
ミドリもまた、離れていく。
“ぼくも姫路くんじゃないって信じるから……”
そう言って玉子について行った。
「玉子……!」
叫んだ声は生徒達の声に掻き消された。
玉子……
オレは、間違った勇気なんかいらねェんだよ──
涙がポタポタと頬を伝い落ちた。
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