Shadow of the departed soul
「ハァ……ハァ……」
トイレに駆け込む。
流石の野嶋も追い掛けては来なかった。
「はぁ……」
個室に入り、便座の蓋を閉めて座る。
深呼吸一つ、気持ちを落ち着かせる。
と、女生徒二人の話し声が聞こえてきた。
「ハツリちゃん、遅いよ」
「せやかて中々、人を抜けられへんねん」
「分かってたけどね」
野嶋と川田だ。
あの後、野嶋は川田を待っていたのか……
オレを待っていたわけじゃない──?
「ほな、さっさと済ませて戻ろか」
「うん」
隣にある女子トイレのドアが開く音が聞こえた。
「はあ……」
肩の力が抜けた。
これで、ゆっくり考え事が出来──
「学園長から大事な話があります。御手洗いに出ている生徒達は、直ちに体育館に戻りなさい」
校内放送が入った。
学園長からの話。
クラス内の人数確認も行われるだろう……
話はきっと、“自宅待機”だ。
家に帰れる!
また一人で考えればいい、むしろ家に帰れるなら考える必要も無くなる。
こんな場所、一刻も早く出たい。
体育館へ向かう足は軽くなる。
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