I knew you all the time
眠れない日が何日も続いた。
体育館の二階から見る空、今夜も雨だ。
「はあ……」
大切な人が消えてゆく──
何故、人は人を殺すのだろう……
そもそも本当に人なのかさえ見失う。
同じように生まれたじゃねェか!
“何か”が人を変えていく。
分かってる。
全く変わらない人なんかいねェし。
だからってよォ……
「くそっ……」
涙が止まらない。
悔しさじゃない。
怒りでもない……“虚無感”
「幸せそうだったね、山村先輩」
野嶋が言った。
コイツは、こんな時に何を言ってるんだよ……
「お前──」
「わたしがこの前、話した事……覚えてる?」
「この前?」
「……お父さんの話」
“わたしね、お父さんがいないの”
“わたしが殺したの……薄暗い部屋、血の匂い……”
この話だよな?
むしろ、これしか心当たりが無い。
「それが何?」
「思い出したんだ、姫路くんの怯えた顔を見て」
「何を──」
「姫路マサト、知ってる?」
オヤジの名前だ。
オレは小さく頷く。
「やっぱり、そうなんだ」
野嶋がニヤリと笑った直後、唇が重なった。
キス……?
「何すん──」
「心配しないで。パパが犯した罪は、わたしが償うから」
「償うって……罪ってなんだよ!」
「知らなくて良いよ」
野嶋は寂しそうに笑った。
「野嶋……」
「姫路くんはわたしが守るから」
「守るってなんだよ」
「もうすぐ終わる。そしたら──」
電気が点滅する。
「!」
野嶋の後ろに見えるアレは何だ?
人間の手?
違う、アレは──
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